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「毛嫌いされる」はもう古い?イノシカチョウ、cacao…大阪のトリオ芸人がアツい

「毛嫌いされる」はもう古い?イノシカチョウ、cacao…大阪のトリオ芸人がアツいの画像1
イノシカチョウ(「吉本興業公式サイト」より)

 「毛嫌いされがちなトリオ」。ミキがMCを務める4月24日深夜放送の『ミキBASE』(MBS)はそんな過激な見出しでスタートした。同番組は「神」になりたい人や人気者になりたい人などを紹介し、応援する内容だ。

 この日の放送ではトリオで活動する芸人にスポットライトをあて、なにわスワンキーズ(芸歴10年目)、戦士(芸歴9年目)、イノシカチョウ(芸歴4年目)、cacao(芸歴3年目)が登場。テレビ番組などに出演したくても、「人数が多い」「予算が増える」などピン芸人やコンビ芸人に比べてネックになることが多く、なかなか声がかからず突破口をつかめないでいるという4組が、ネタやトリオのメリットなどを披露した。

 東京のお笑いシーンでは以前からトリオ芸人も目立った活躍を見せている。近年の若手でも、3時のヒロイン、ネルソンズ、ジェラードン、ぱーてぃーちゃん、四千頭身、リンダカラー、ゼンモンキー、怪奇!YesどんぐりRPGなどが次々と脚光を浴びている。

 また、トリオは人数を生かしてコントで活躍するパターンが多い。過去の『キングオブコント』のファイナリストを振り返ってみても、東京のトリオ勢は、ロバート(2008年、2011年優勝)、鬼ヶ島(2011年、2013年準優勝)、リンゴスター(2014年)、ジャングルポケット(2015年、2016年準優勝、2017年、2020年)、GAG(2017年、2018年、2019年、2020年)、ハナコ(2018年優勝)、ネルソンズ(2019年、2022年)、ジェラードン(2021年)、や団(2022年3位)が結果を残している。一方、大阪のトリオ勢の決勝進出者はゼロ(GAGは大阪出身だが、入賞当時は東京所属/2012年の夜ふかしの会は3人以上のユニットなので省いた)。

 いくら「漫才は西、コントは東」と言われているとしてもこれは意外である。全国区になっている大阪のピン、コンビは非常に多いがトリオはブレークが難しいのが現状だ。

cacaoは『キングオブコント』にもっとも近い存在

 では「大阪のトリオ勢はおもしろくないのか?」と言われたら、まったくそうではない。

 たとえば『ミキBASE』に出演したcacaoは、番組内でもミキが「今、名前をよく聞く」と話しているように成長株である。大阪のトリオのなかでも、『キングオブコント』ファイナリストにもっとも近い存在ではないだろうか。

【参照】https://youtu.be/eoAObxTXZkE

 cacaoのネタの素晴らしさは、3人という人数をうまく生かしているところだ。特に筆者がお気に入りのネタ「カツアゲ」は、ひとりの学生にふたりの不良が絡んで金を奪うが、1名の不良がその場を去ると、残された不良が「ごめん。本当はこんなことをしたくないけど、あいつがいるから」と金を返して帰っていく。そうすると入れ替わるように、一度去ったはずの不良が戻ってきて「さっきはごめん」と金を返す。それを繰り返して、カツアゲされた学生の手元に金が増えていく。

 『ミキBASE』でも披露されたネタ「聞きっぺ」は、3人の学生が先生の指導方針に不満を持ち、改善を求めるというもの。不満を言い始めた「言い出しっぺ」の学生ではなく、話を聞いてばかりだった「聞きっぺ」の学生が先生に相談しに行くが、何度も殴られて帰ってくる。しかし後半にかけて思わぬ展開が繰り広げられる。

 cacaoのネタの見どころが、3人がステージとステージ外を出入りする部分。そうすることで人数に変化が生まれ続け、「物語」だけではなく「舞台」そのものが動いているように見える。ピンやコンビではなかなか成立させづらい、トリオならではの「人数の使い方」だ。「出入り」の演出が絶妙に光っている。

イノシカチョウは見たことがない変化球を投げ込んでくる

 イノシカチョウも大阪では劇場人気が上昇中のトリオだ。

 「ラーメン屋」のネタでは、ラーメン屋店主が長年かけて最高の味を完成させたにもかかわらず、「とある軍団」がやってきて我が物顔でそのラーメンを「味変」してしまう。「この人たちを登場させるのか」とキャラクターのチョイスで笑わせる。また「殺し屋」のネタでは、暴力団事務所へ配達にやって来たラーメン屋の行動と、それに惑わされる組員たちの反応が最高。BGMの使い方も見事である。

 あと筆者は、イノシカチョウのYouTubeチャンネル『イノシカチョウ公式ch』も毎回、楽しみにチェックしている。番組制作にヨーロッパ企画のメンバーである鍋島雅郎が携わっていることもあってか、いつも一筋縄ではいかない仕掛けが施されている。どの企画も、当初のテーマからどんどん逸れていって思わぬ着地を見せる。フェイクをはさみこむことで企画内容が奇妙な角度を描いていくのだ。前情報なく「芸人に会わなきゃ帰れません」(2023年2月11日配信)を観たらきっと騙されるだろうし、イノシカチョウのことをいろいろ分かった上で「ディレクターさんと4人でご飯に行こう」(2023年2月18日更新)、「女性芸人と対談しよう」(2023年3月22日更新)を鑑賞すると3人のイヤらしさに笑わされるはず。

【参照】https://youtu.be/uLicSgDb3Ok

 イノシカチョウは、コントのネタ、YouTubeの企画で見たことがないような変化球ばかり投げ込んでくる。ストライクゾーンに来たと見せかけて、ホームベース手前で急にボールが大きく外へ逸れて暴投になる感覚だ。

 東京に比べて大阪にはまだ知られていないトリオ芸人が多い。しかし、これからどんどん発掘されていくだろう。

田辺ユウキ(関西在住ライター)

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。映画、アイドル、テレビ、お笑いなど地上から地下まで幅広く考察。

Twitter:@tanabe_yuuki

田辺ユウキのプロフィール

たなべゆうき

最終更新:2023/04/28 06:00
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