ぼる塾の月曜ロケを「独自の考察」で振り返る
#テレビ日記 #飲用てれび
ぼる塾・あんり「2人でスベろう、もう」
放送がはじまってから2年を超えた『ラヴィット!』(TBS系)。昨年末にはゴールデンタイムに特番が放送され、この春からは1週間のオープニングのふりかえり+放送終了後の出演者のトークを収めた『夜明けのラヴィット!』(同前)の放送がはじまるなど、朝のバラエティ番組としての評価を固める動きが次々と打ち出されている。
番組の顔であるMCの評価が、番組の評価とともに高まっているように見えるのも印象的だ。昨年のテレビ番組出演数のランキングで上位になるなど川島明(麒麟)の活躍はいわずもがなだが、田村真子アナウンサーもアナウンサーの好感度ランキングなどで名前が上位に挙がるようになっている。人と場の評価が相互に高まる好循環をなしているように見える。
番組で印象的なのは、レギュラー出演者の顔ぶれがほとんど変わっていないことだ。2年ほど前にはじまったときにレギュラーだった面々は、その後もほぼ継続的に出演している。もちろん、アイドルが期間限定レギュラーとしてシーズンごとに出演したり、男性ブランコやモグライダー、コットンなどこの2年間で注目されはじめた芸人が頻繁に出演したりといった変化はある。そのあたりが、平日に毎日放送しつつ番組の新鮮さを保つための“調整弁”になっているのかもしれないけれど、同じ帯のバラエティ番組としてよく引き合いに出される『笑っていいとも!』(フジテレビ系)と比べても、レギュラー陣の入れ替わりの少なさは明らかだ。
で、レギュラー陣がほぼ固定されているのも相まって、オープニングが終わったあとのコーナーも、ゆるやかな変化は見られるものの大きな変動はあまりない。番組開始からしばらくは専門家が冷凍食品とかコンビニスイーツなどをランキングするVTRを見ることが中心だったように思うけれど、いつの間にか芸人たちによるロケのVTRの割合が多くなった(それ以上にオープニングの割合が増えたわけだが)。各曜日のロケ企画は複数あってそれらが週ごとに入れ変わっており(たとえば水曜であれば「見取り図の安くてウマくて○○な店」と「すゑひろがりずの最新東京見聞録」など)、そのあたりで週による変化はあったりもするのだけれど、いずれにせよ、現在その内容は各曜日でほぼ安定しているように見える。
そんなオープニング後のコーナーも、マンネリ化に至らずにちゃんと面白かったりする。個人的には、月曜のぼる塾(あんり、きりやはるか、田辺智加)のロケが好きだ。彼女たちがお送りしているのは、スイーツを食べたり買い物をしたりといったロケ。17日には、ぼる塾の3人がスイーツ店をめぐる「ぼる塾の芸能界スイーツ部」、略してBGSが放送されていた。3人が今回訪れたのは、伊勢丹新宿店のデパ地下だ。
ぼる塾の3人はいつものようにデパ地下を練り歩く。で、“スイーツ女王”として知られる田辺さんがお店の情報を紹介したりするのだけれど、このとき、はるかが田辺さんにじゃれるように絡み、田辺さんにうっとおしがられるという流れが恒例だ。無邪気なめんどくささを発揮するはるかと、それを絶妙に退ける田辺さん、そんな2人のしばしばどっちらけになりがちなやり取りを巧みにさばくあんり。そのトライアングルが面白い。はるかと田辺さんについていえば、尻尾を振って甘噛みし続ける子犬と、それをゆったりとした動きで退ける異種の大型動物の映像を見ているかのようだ(なお、さっきから田辺さんだけ「さん」づけしているが、基本的に芸能人の名前を記事で出すときは敬称略にするものの、田辺さんについては「さん」付けじゃないとむしろ違和感があるのでそう書かせてもらっている。「さかなクン」とか「デヴィ夫人」と同様に「田辺さん」までが芸名と考えたい)。
たとえば、3人がスコーンの専門店を訪れたときのこと。田辺さんがクロテッドクリームというイギリス発祥のクリームの購入をおすすめした。この店のスコーンは生地にクロテッドクリームを使っているが、さらに追加して(“追いクロテッドクリーム”して)食べるとおいしいらしい。そんな田辺さんのおすすめからはじまる3人の会話。
はるか「“追い”していいんですね?」
田辺「“追い”していいですよ」
あんり「“追いクロテッドクリーム”いい言葉」
はるか「私、田辺さんのこと、“追い田辺智加”しちゃうかもしれない。好きすぎて」
もう、無邪気なめんどくささ炸裂である。「追い田辺智加しちゃう」ってなんだ。こんなはるかに、あんりはしばしば強めにツッコんだり適当に流したりもするのだけれど、今回は――
あんり「いや、それは量が多いんじゃないですか?」
はるか「あ! クロテッドクリームだけにね!」
あんりは、はるかの発言に「いや、それは量が多いんじゃないですか?」と一度乗る。それに対し、はるかは「あ、クロテッドクリームだけにね!」と輪をかけてよくわからないことを言う。改めて文字に書き起こしても、「だけに」がどこにかかっているのか意味不明だ。「あ!」はなんの発見なのだ。
しかし、コンパクトなやり取りをお送りしなければならないテレビ。言葉の意味の通ってなさを訂正するのは冗長だ。いくら発言の意味がわからなくても、すぐに何かリアクションを返さなければいけない。しかし、どの方向に進んでも笑いという出口にたどり着かない気もする。なぜか身内により追い込まれた窮地。ここであんりは次のように切り返した。
「2人でスベろう、もう」
乗りツッコミならぬ、乗り心中とでも言えようか。強くツッコんだりあしらうように流したりといった、そんな予想の範囲内のリアクションを裏切りつつ、おさななじみの2人の関係性をにじませるようなひと言。そのひと言であんりは、VTRをワイプで見ていたスタジオの川島らを大きな笑いに巻き込んだのだった。
番宣でゲスト出演する俳優などのゲストが絡んだり、予想外のハプニングが起きたりするオープニングに比べ、話題にのぼることが少ない曜日別のロケコーナー。そんな当たり前に流れるコーナーも、もちろんすべてがいつも面白いとは言わないけれど、だいたい安定して面白かったりする。ぼる塾のコーナーにしても、紹介するスイーツは流行に乗ったものだが、3人の関係はほぼ不易。人やコーナーがころころ変わるとせわしなかったりもするかもしれない朝の番組で、このような変わらない面白さは番組の安定感につながっているのかもしれない。
――と、番組開始から2年を超えた『ラヴィット!』について、その一部を改めて振り返ってみた。もちろん、全て独自の考察である。
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