『エスター ファースト・キル』元子役の20代後半女優がまたエスターを演じる…前日譚は本当に成り立つのか?
#映画 #バフィー吉川
バフィー吉川の「For More Movie Please!」
第11回目は『エスター ファースト・キル』をget ready for movie!
『エスター』(2009)はあの衝撃のラストから、ずっと続編が望まれてきた作品であったが、実際に続編が制作されると発表されたことには驚かされた。続編は前作の前日譚で、しかも主演は同じくイザベル・ファーマンだからだ。
前作は本当に子役だったイザベラが、20代後半になった今、どうエスターを演じるのだろうか……。実はそんな違和感も現在公開中の今作、『エスター ファースト・キル』のギミックとして大きく機能している。
また前作の脚本家デヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリックは、プロデューサーとしては参加しているものの、脚本は『スクリーム』のテレビシリーズなどの脚本家デヴィッド・コッゲスホール、監督は『ザ・ボーイ』シリーズや『デビル・インサイド』のウィリアム・ブレント・ベルと制作者が大きく変わっている。今作では、デヴィッドとウィリアムがそれぞれの作品において得意としてきた“違和感”の演出がうまく活かされている。
4年間行方不明になっていた少女・エスターが突然戻ってきた家族側の違和感と、エスターに扮するリーナ側の違和感の正体がわかったとき、とてつもない心理戦が展開される。
制作者が大きく変わった不安もあったが、前作とはまた違ったテイストの作品に仕上がっており、前日譚として納得のいく作品に仕上がっている!!
【ストーリー】
2007年、アメリカで暮らすオルブライト家は、4年前に6歳で行方不明となった愛娘エスターの失踪事件に今なお心を痛めていた。そんなある日、エスターが保護されたという思いがけない知らせが夫妻のもとに届く。この奇跡のような出来事を手放しで喜ぶ一家。驚くほど成長したエスターは聡明で才能も豊か。画家の父親に昔以上にべったりだった。また、あの幸せな時が帰ってくる……。
元子役の“違和感”が映画の内容にリンクする
前作『エスター』公開当時はまだ子役だったイザベル・ファーマンだが、現在は26歳。そんなイザベルが引き続きエスターを演じて、さらに前日譚を描くことに違和感があるのも当然だ。
体はCG処理で小さくされている。セリーヌ・ディオンらしき人物の伝記映画『ヴォイス・オブ・ラブ』で主演のヴァレリー・メルシエが幼少期から現代までを演じた違和感に比べればたいしたことはないまでも、前作より前の物語なのに、顔が大人っぽくなっているのはいかがなものだろうかと思った人は多いのではないだろうか。
しかし、計算なのか偶然なのか不明だが、実はそれこそが、大きなギミックとして機能している部分といえるのだ。というのも、今作で描かれているのは、パラサイトした家族の存在が、リーナ・クラマー(エスターの本名)がエスターになった分岐点といえるからだ。
それまでは、子どものふりをして犯罪を繰り返していたリーナだが、あくまで“ふり”で通っていた。しかし、今回は本当に存在していた子どもに扮することで、より子どもらしくみせる努力を覚えたのだ。
それはしぐさだったり、会話だったり、メイクだったり……。そして何よりパラサイトした家族側がただならない者たちだったことからも、本気で子どものふりをしなければ、自分自身に危険が及ぶと思い、完全に油断していたリーナは、より注意することを覚えたはずだ。
そこで前作より老けてみえることころが活きてきて、より子どもに見せかけようと努力した結果が1作目につながるとなると、妙に納得がいってしまう。
また前作の場合は、あくまでパラサイトされた家族から見た視点の違和感がメインに描かれていたが、今作はリーナから見た家族への違和感も加わっていることで、視点が分散されており、より心理サスペンス色が増している。それと同時に、気持ちは大人なのに、外見から大人として扱ってもらえないことの哀しさやもどかしさ、怒りも描かれていて、リーナの心情に寄り添ったシーンも多く存在している。
そう思えるのには、演出のうまさもあるが、何よりイザベルの演技力が前作より断然に上がっているからだろう。
ただ、リーナが犯罪に走った本当の「エピソード0」は、冒頭の説明でざっくりとしか語られないだけに、本当に子どもだった頃から成長が止まっていることに気付いた10代の物語をもう1本制作してもらいたいところだが、そうなるとイザベル・ファーマンが演じることは、さすがに不可能だろう……。
『エスター ファースト・キル』
3月31日(金)全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
アメリカ/99 分/R-15/カラー/5.1ch
公式サイト https://happinet-phantom.com/esther/
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