相席スタート山添、ヒコロヒー…クズ芸人たちの巧みな言語能力
#テレビ日記 #飲用てれび
ヒコロヒー「今でこそ、ええベベ着させてもろて」
もうひとりの売れっ子はヒコロヒーである。すでにレギュラー番組を複数抱え、ゴールデンタイムの番組やCMでその姿を見ることも多い。ドラマへの出演もよく見る。
そんなヒコロヒーが、14日の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演していた。「独特な一人コントで一気にブレイク、いま大人気の女性芸人、ヒコロヒーさんです。飾らない人柄で女性ファンも非常に多い方でございます」と黒柳徹子に紹介されて登場した彼女。同番組に芸人が出演する際は、番組冒頭で黒柳に「何か見せてくださる?」などと振られてネタを見せることが多いが、この日も例に違わずコントの披露からはじまった。
ただ、ほかの芸人の出演時とは異なり、ヒコロヒーはコントの衣装に着替えるためにその場をしばし退出。コントがはじまるとスタジオの照明も少し暗くなった。披露したコントは「村の生贄(いけにえ)」。雨乞いの儀式で生贄になる女性をヒコロヒーが演じるネタだ。で、コントをオチまできっちり終えると、ふたたび着替えるためにヒコロヒーは退出。いつものオーバーサイズのセットアップで再登場したのだった。
トークとコントを切り分け、仕切り直すようにネタに入る構成。こういうネタの見せ方が、これまで『徹子の部屋』でまったくなかったわけではない。コントでは比較的見ることもあるかもしれない(歌手が歌うときはこういう仕切り直しをもっとよく見る)。けれど、特に若手と呼ばれる芸人が出るときはあまり見たことがないように思う。『アメトーーク!』で「徹子の部屋芸人」といった企画が組まれ、黒柳のいわゆる”芸人殺し”の振る舞いが注目されてきてからは、こういうネタの見せ方が以前より減ったかもしれない。ネタそれ自体というよりも、ネタを見た黒柳の微妙な反応や、黒柳の反応に戸惑う芸人の反応のほうが面白がられてきた。
だが今回、ヒコロヒーは制限がある部屋のセットのなかでもそれなりの状況をつくって、ネタをちゃんと見せた。黒柳は次のように感想を語った。
「面白かったです。どうなんのかなと思って一生懸命みてました」
今回のやり方が、ヒコロヒーサイドの要望からスタートしたものなのか、番組側のセッティングなのか、どういう調整の末にそうなったのかはわからない。が、「芸人がゲストだと黒柳と噛み合わなくて面白い」みたいなのを芸人が出るたびに繰り返さなくてもいいだろうと個人的には感じているので、そういう面白がり方を土俵ごと入れ替えたようなパターンが見られてとてもよかった。
さて、芸能人が「目標のひとつ」に挙げることも少なくない『徹子の部屋』への出演も果たしたヒコロヒー。もはや、かつてクズ芸人といったカテゴリーでテレビに出ていたことが不思議にも思えてくる。伊藤俊介(オズワルド)やせいや(霜降り明星)とともに出演した9日の『ボクらの時代』(フジテレビ系)のなかでは、伊藤に「マジでうまいことやりましたね、ヒコさん」とそのあたりが指摘されていたりもした。
伊藤「マジでうまいことやりましたね、ヒコさん」
ヒコロヒー「なにがやねん(笑)」
伊藤「きれいにシフトチェンジしていきましたね」
ヒコロヒー「そう?」
せいや「汚かったもんな」
ヒコロヒー「全然今もそんなんやん。今でこそ、ええベベ着させてもろて」
伊藤&せいや「ええべべ」
伊藤「いいんですよ、無理して『ええべべ』とかいう言い方しなくて」
改めて振り返るまでもないけれど、ヒコロヒーの言葉づかいは独特だ。『ボクらの時代』では「ええべべ」のほかにも、R-1出場のラストイヤーがコロナ禍でビデオ審査になり、準決勝敗退で終わったことを「めっちゃ、ざんない終わり方」と表現したりとか。「シャバい」なんて表現もテレビのなかで彼女以外からはほぼ聞かないし、そもそも一人称で「ワシ」を使う女性芸能人は、少なくともいま第一線で活躍している人たちのなかでは彼女のほかに見当たらない。
考えてみれば、そういった独特な言葉づかいもまた、彼女がテレビに映る際に土俵を入れ替えるような効果を生んできたのかもしれない。ヒコロヒーが「ワシは……」と語りはじめると、そこはヒコロヒーの世界が展開されるフィールドになる。“上品さ”から距離があるひと言が、どんなに詳しく言葉を尽くした説明よりも彼女のキャラクターを語り示す。
そして、ヒコロヒーに限らずクズ芸人と呼ばれてきた芸人たちは、山添が借金を「絆」と言い換えるなど言語運用が独特である。もちろん、見慣れた風景を異化するような言葉づかいは芸人に幅広く見られるもので、クズ芸人の専売特許ではないのだけれど、彼ら・彼女らは特にその手練たちなのかもしれない。
やはりクズ芸人は言葉巧みである。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事