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クレベリンに意外な擁護「すげぇ優秀なんですけど」「消えては困る」

クレベリンに意外な擁護「すげぇ優秀なんですけど」「消えては困る」の画像1
大幸薬品「クレベリン」公式サイトより

 消費者庁は4月11日、ラッパのマークの「正露丸」で知られる大幸薬品(本社・大阪市、東証プライム上場)に対して6億円あまりの課徴金を支払うよう命じた。景品表示法の課徴金としては、過去最高額となる。

 理由は、同社が製造販売する除菌用品の「クレベリン」の表示が「優良誤認」にあたると判断されたため。具体的には「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」という表現について、一般的な環境での効果を裏付ける合理的な根拠が示されなかったことが問題となった。

「こんなの効くわけがない」大バッシングの中で

 まず、優良誤認とは、一般消費者に対して実際よりも著しく優れたものであると誤解されるような表示などをすること。つまりクレベリンが「うそや大げさな表現をして、消費者を騙している」と認められたということだ。

 この報道を受けて、SNSでは激しいバッシングが起こっている。

「クレベリンなんて、インチキ商品だからね」
「こんなの効くわけがない」
「売れてるのは騙されてる方が多いだけで、効果はないんですよ」
「クレベリンは効果がないから雑貨なんだけど」

 コロナ禍での人の不安につけ込んだ商品として「クレベリンは詐欺だし、それを普通にオフィスに置いている会社は情弱」と批判する投稿もあった。製造販売した大幸薬品に対しても「徹底的にぶっ叩いて吊し上げて二度と商売できないようにしてくれ」と批判する人もいる。

 一方で意外なことに、クレベリンには一定の効果があると擁護する声もあった。

「クレベリン、押入れとかの防カビ剤としてはすげぇ優秀なんですけどねぇ」
「カビ臭タバコ臭いのする古本ぱらっと開いてジップロックに一緒に入れて置くと臭い消せるんで完全に消えてもらってもこまる」
「私は中古で買った超可愛い着物帯がカビ臭くて困ってた時に調べ、クレベリンを使ってカビ臭さ無くしたのでこれからもよろしくな気持ち」

 父親の紋付袴がカビ臭かったので、タンスにクレベリンを置いたところ3日でにおいが取れたという人は「ほんとうに感動した」「要は使い方なんだと思う」とコメント。カーテンでほぼ密閉状態になっている出窓に置いたところ、結露でのカビに悩まされなくなったという人もいた。

「密閉したステンレス製空間」では除菌機能を確認済

 そもそもクレベリンとは、どういう商品なのか。大幸薬品のウェブサイトを見ると、「クレベリン 置き型」の商品紹介として以下のような説明がある。

「クレベリン 置き型は、ボトル内の液体に顆粒剤を混ぜ合わせたのち発生する二酸化塩素ガスを固化して封じ込め、ゲル化した表面より、使用期間にわたり徐放的に二酸化塩素ガスが揮散する製品です」

 二酸化塩素分子には、本当に除菌機能があるのだろうか。同サイトの「二酸化塩素の安全性と有用性について」には、以下のような解説がある。

「二酸化塩素はラジカルの1種であり、強い酸化力 をもつことから、ウイルス除去、除菌、消臭、抗カビ等のはたらきを有することが知られています」

 ラジカルとは、不対電子をもつ不安定な原子や分子のことで、他の原子や分子と反応を起こし安定な分子やイオンとなる性質がウイルスや菌の抑制効果に利用されている。

 また二酸化塩素は、日本や米国での「水道水の消毒」や、小麦粉漂白処理として「食品添加物での使用」が認められている。

 大幸薬品では、二酸化塩素分子の除菌機能試験を実施しており「25立法メートル(約6畳)の密閉したステンレス製空間(サーキュレータ作動、温度約24℃、相対湿度約58%)にて特定の菌に対して除菌機能があることを当社製品にて確認」しているという。

 したがって、除菌機能については一定の効果があり「インチキ商品」とは言えないと、会社は主張している。「完全に消えてもらってもこまる」と訴える人が認める効果も、単なる思い込みや勘違いではなく、科学的な裏付けがあるといえる可能性が高い。

問題は「実生活空間での効果を保証するものではない」点だった

 それでは何が問題になったのだろうか。

 大幸薬品サイトの「クレベリン広告表示に関するQ&A」には「『クレベリン 置き型』の商品では、何が問題とされて指摘されたのでしょうか?」という問いに対し、次のような説明がある。

「弊社は、『クレベリン置き型』を用いたウイルス・菌の除去に関する実験を行った資料を複数提出いたしましたが、これらはいずれも試験空間での実験であり、実生活空間での効果を保証するものではないとして、上記表示に対する合理的な根拠とは認められませんでした」

 要するに、一定条件の密閉空間では効果が認められた実験結果はあったものの、それが「実生活空間での効果を保証するものではない」点が問題とされたというわけだ。実際の家はステンレス製空間ではないし、実生活では人の出入りもあり6畳間を長時間閉め切ることは確かにまれだ。

『クレベリン スプレー』についても、「1畳当り1回を目安にスプレーする」という表現が同様に問題視されている。

 その一方で、クレベリンの主成分である「二酸化塩素そのもののウイルスや菌の除去機能」については、指摘を受けていないという。指摘の対象となっていないことが、すなわち効果を保証することにはならないものの、「インチキ商品」として課徴金命令が出たわけではない点は確認しておいてもいいだろう。

日本初の商品で「説明」に苦心した?

 そうなると、なぜこのような「優良誤認表示」をしてしまったのか、という点に疑問が移る。製造販売元の大幸薬品の広報担当者に取材すると、「このたびはお騒がせして申し訳ありません」という謝罪とともに、こんな回答が返ってきた。

「二酸化塩素の除菌機能については、以前から広く認められてきたものなのですが、それを一般の家庭で使う除菌用品として販売したのは弊社が日本で初めてでしたし、世界的にも類を見ないものでした。このため、どのような表現を使って商品のメリットを説明すればお客様に伝わるのか、手探りで行ってきたのは事実です」

 そもそも日本では、二酸化塩素は医薬品・医薬部外品の消毒薬としては承認されていない。そのためクレベリンも「雑貨」として扱わざるを得ず、明確な効能効果をうたうことができない。したがって「効果がないから雑貨扱いにしかならない」という批判も正確ではない。

「ということは、もっぱらマーケティング上の問題ですね?」と問いかけると、広報担当者は「マーケティングだけの問題ではないので、今後はより全社で広告の審査体制を強化してまいります」という回答だった。新しい機能をもつ商品を日常生活で使ってもらうための工夫は、意外と難しいのかもしれない。

 最近の論文では、H7N9型鳥インフルエンザウイルス不活化が確認されたという二酸化塩素。大幸薬品には商品への適切な「表示」を徹底したうえで、一般消費者に役立つ可能性の追求を続けてもらいたいところだ。

 なお、課徴金の支払命令に先立つ措置命令は2022年4月に出されており、これを受けた業績不振で大幸薬品は同年6月に社員の1割にあたる30人程度のリストラを行っている。しかし会社は今後もクレベリンの製造販売を継続し、販売中止などの意向はないという。

鴨川ひばり(ライター、編集者)

1967年生まれ。出版社、ネットメディアなどで編集者を歴任。現在はフリーランスで活動中。

Twitter:@hujiie

かもがわひばり

最終更新:2023/04/19 14:17
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