『ダンジョンズ&ドラゴンズ』新作はRPGゲームらしさ全開、エドガンとホルガの“距離感”の描き方
#映画 #バフィー吉川
バフィー吉川の「For More Movie Please!」
第10回目は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』新作映画をget ready for movie!
世界で一番有名なテーブルトーク・RPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」通称D&Dが『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』として再映画化! 3月31日から公開中だ。
米国のテレビドラマ『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』でもたびたびD&Dをプレイしたり、引用したセリフもあったように、アメリカの映画やドラマにも定番ゲームとして登場することが多く、プレイはしたことがなくても名前だけは知っているという人も多いはず。
D&Dは2001年にも『ダンジョン&ドラゴン』というタイトルで映画が公開されており、ビデオストレート(劇場公開ではなくソフトのみ)でフランチャイズ化もされている。ほかにもアニメやコミックなど、さまざまな媒体で長きに渡り安定した人気を維持している中で、再映画化が期待されていた。
そんなD&Dが最新の映像技術によって蘇ったというのだから、注目を集めるのは当然といったところだろう。
シリーズが数多く存在し、そもそも決まったストーリーやキャラクターがいるわけではないため、映像化に関しては比較的自由なストーリー構築が可能となっているものの、今作は仲間を集めて、アイテムを集めて、巨悪に挑むというRPG要素を活かしたというか、ダイレクトに映画化したものとなっていて、なかなか平坦なものとなっている。
VFXの進化とは恐ろしいもので、ストーリーが平坦であっても映像表現がアクセントになることで、それなりに面白く観れてしまう。マイケル・ベイの作品なんかがいい例だし、今作もまさに「ザ・娯楽作」といったところだ。逆にそれでもつまらないと感じてしまう作品は、ストーリーが平坦どころの騒ぎではないのだろう。
【ストーリー】
様々な種族、モンスターが生息する世界、フォーゴトン・レルム。盗賊のエドガン(クリス・パイン)と彼の相棒である戦士のホルガ(ミシェル・ロドリゲス)は、闇の組織に仕える超ヴィランたちに殺されたエドガンの妻を生き返らせるため、さらわれた娘を助けるために旅にでる。そんな二つの目的を遂げるためには、特殊能力を持った仲間と、運命を握るアイテムが必要とわかる。そこで、二人は名家出身の魔法使いサイモン(ジャスティス・スミス)と自然の化身のドリック(ソフィア・リリス)、そしてある秘密を知る聖騎士のゼンク(レゲ=ジャン・ペイジ)とパーティを組むことに。決してヒーローではないアウトローたちが全世界を脅かす超ヴィランの陰謀に対峙することになる……。
妻を亡くした主人公・エドガンとホルガの独特な距離感
魔法を使ったエフェクトバトルやさまざまな動物に変身できるドリックの逃亡シーンなど、ビジュアル面で魅力的なシーンが多く、モンスターのデザインも独特で観ていて飽きない。
『モータルコンバット』(2021)も、無駄なストーリー性を排除し、徹底して格闘ゲーム感を演出していたように、ゲームを映画的に変換するのではなく、ゲームをゲームらしく映像化するのもひとつのアプローチとして定着しつつある。
そんなこんなで全体的に娯楽作らしいざっくりしたキャラクター構造ではあるものの、その中で際立っているというか、今作の一番魅力的な部分は、主人公エドガンとホルガの独特の距離感の先にある関係だ。
エドガンの妻が敵の襲撃によって殺され、幼子キーラを抱え途方に暮れていたエドガンを救ったのがホルガなのだが、このふたりはすぐに疑似家族のようになり、キーラもホルガを母親のように慕っている。だが、エドガンとホルガは決して男女の関係ではない。
家族ではあっても、それぞれが独立し尊重し合っている関係性からは、種族、人種、性別を超えた友情のようなものが透けて見えてくる。
戦争が絶えず、日常的にデーモンやモンスターが存在しているということもあり、人の死というものが常に生活の近くにある世界なわけだが、そんな世界だからこそ、一方で人が人を守ろうとする本能が働くのかもしれない。つまり人間の根本的な母性というか、愛情というものが描かれているようにも感じられるし、そんなホルガをミシェル・ロドリゲスが演じていることで、妙な説得力をもたらしている。
ラストの展開も案の定といった感じではあるが、それで良かったと思わせる流れに導いているのも、エドガンとホルガの独特の距離感、関係性があってこそだといえるだろう。
『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』
監督・脚本:ジョン・フランシス・デイリー&ジョナサン・ゴールドスタイン
出演:クリス・パイン、ミシェル・ロドリゲス、ジャスティス・スミス、ソフィア・リリス、レゲ=ジャン・ペイジ、ヒュー・グラントほか
配給:東和ピクチャーズ
全米公開:2023年3月31日より上映中
公式サイト:http://dd-movie.jp
© 2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, DUNGEONS & DRAGONS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. © 2023 HASBRO.
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事