ABEMA、アマプラ、U-NEXTの三つ巴で格闘技が人気コンテンツに返り咲きへ
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打撃系格闘技イベント「K-1」で史上初の3階級制覇を成し遂げた武尊が3月29日、都内で会見を行い、インターネットTVプラットフォームのABEMAと、専属PPV(ペイ・パー・ビュー)ファイター契約を締結したことを発表した。
ABEMAによると、PPVファイターは日本初の試みで、1試合につき最低保証として1億円の報酬が支払われるほか、視聴チケットの売り上げに応じた追加報酬も発生する。契約期間は未公開。6月24日にフランス・パリで行われるタイトルマッチ『Impact in Paris』が第一弾となる。
破格の契約を結んだ武尊は、「現役を続けるうえでモチベーションになります。(PPVファイター制度は)格闘家やいろんなスポーツでプロを目指してゆく選手にとって、未来につながるもの。アスリートがもっと認められ、評価され、そこに対しての対価が支払われる。夢のある業界にしていければ」などと意気込んだ。
格闘技業界の関係者はこの契約についてこう説明する。
「ABEMAのPPVでのみ配信を独占できる契約だが、当然PPVでかなりの売上をあげないと、大幅な赤字になってしまう。昨年のサッカーW杯の放映権を買って全試合無料中継するほど投資に積極的なABEMAだけに、中長期的に回収する戦略があるのだろう。とはいえ、昨年、那須川天心との大一番で負けてしまった武尊だけに、1億円は高過ぎる気もするが……」
ABEMAではすでに、武尊の古巣である「K-1」、天心の古巣であるキックボクシングイベント「RISE」を無料で配信しているほか、総合格闘技イベント「RIZIN」の生中継をPPVで販売するなど格闘技にも力を入れている。
昨年、天心と武尊の世紀の一戦をメインに据えた格闘技イベント「THE MATCH 2022」もABEMAのPPV独占となり、「K-1」の創始者でもある正道会館の石井和義氏は「チケット売り上げ20億、ペイパービュー50万件25億、スポンサー5億、計50億。すべての興行記録塗り替えたね」と、PPVだけで25億円を売り上げたとツイートし、大きな反響を呼んだのも記憶に新しい。
一方、4月8日の天心のプロボクシングデビュー戦を独占生中継するのがAmazonプライム・ビデオ。Amazonは、プライム会員は追加料金無しで観られるボクシング中継番組「Prime Video Presents Live Boxing」を昨年4月のゲンナジー・ゴロフキンvs村田諒太のミドル級王座統一戦からスタートさせており、天心のデビュー戦が第4弾になる。
「アマプラは、野球の世界大会『ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』で侍ジャパンの強化試合2試合と本戦の全試合をライブ配信するなど、スポーツ分野にも力を入れている。こちらはPPVではなくプライム会員向けで、日本はもともとオンデマンド配信市場はアマプラの一人勝ちといわれるが、より市場優位性を確保するべくスポーツにも手を広げているのだろう。実際、WBC決勝戦は日本での配信初日のプライム・ビデオ視聴者数が歴代1位となるなど反響があったようだ」(IT関係者)
そして、格闘技ファンの間で“救世主”と言われているのが、国内最大級の動画配信サービスである「U-NEXT」だ。
「すでに、RIZINの生中継を有料配信し、RIZINと業務提携中の米総合格闘技団体『ベラトール』の試合を無料配信。さらに3月でWOWOWが契約を終えた世界最大の総合格闘技団体『UFC』のレギュラー配信も決定したほか、国内の老舗格闘技イベント『DEEP』の配信も発表。ABEMAと競うように格闘技コンテンツを充実させている」(前出・格闘技業界関係者)
ほかにもYouTubeで展開し、人気を博している格闘技イベント「BreakingDown」もある。ネット配信によって日本の格闘技業界が盛り上がりつつあるようだ。
「20年前の2003年のおおみそかには、フジテレビ、TBS、日本テレビの3局がそれぞれ格闘技イベントを放送し“格闘技戦争”とも言われた。ところが現在は、プロ野球ですら地上波で放送される機会が激減しており、コンプライアンス時代の今、格闘技の地上波テレビとの相性は最悪。だが、そもそもネット配信とスポーツ生中継は相性が良く、熱量の高いファンが多ければ地上波よりもスポンサーが付きやすいし、地上波と違って中途半端なタイミングでCMが挟まれるようなこともないので、有料でも配信で視聴したいという需要はあった。スポーツ生中継において地上波は役目を終えつつあるかもしれない」(格闘技担当記者)
武尊の活躍次第では、専属PPVファイターはますます増えるだろう。ABEMA、アマプラ、U-NEXTの新たな“三つ巴”で、格闘技人気は20年前の勢いを取り戻すことになりそうだ。
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