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警察庁が「110番映像通報システム」を本格導入の理由 

警察庁が「110番映像通報システム」を本格導入の理由 の画像1

 4月1日から映像による110番通報ができるようになったのをご存じだろうか。警察庁は、スマートフォンなどを通じて事件や事故の現場の映像を送ってもらうシステムを全国で本格的に導入した。

 これまでの電話による110番通報では、事件や事故の状況について“言葉では正確に伝わらない”ことも多く、状況を把握するのが難しいケースも多かった。

 そこで警察庁では、110番通報その他の緊急通報を行った者に対し、モバイルデバイス等を使って、事件・事故などの映像や画像の送信を求めることが可能となる「110番映像通報システム」の開発を進めていた。

 2022年10月から同システムの試行運用を開始した。その結果、警察庁によると、今年2月末までに2293件の映像や画像を受け取った。その内訳は、

・110番通報時のリアルタイムな映像262件
・110番通報時のリアルタイムな画像383件
・通報前に撮影した映像139件
・通報前に撮影した画像が1509件

 その具体的な内容としては、

・認知症や迷子などの保護・救護が1107件
・不審者や不審車両などの情報が414件
・事故などの交通関係の情報が374件

となっている。

 このシステムは、スマートフォンまたはタブレット端末等により、110番通報時に映像や画像を送信できるものだが、通報者が一方的に映像や画像を送りつけることができるものではない。

 まず、従来通りの電話による110番通報時に、通報を受けた警察官が“映像を取得する必要性がある”と判断した場合に、通報者の同意を得て映像や画像の送信が実施される。手順としては、映像や画像が必要と判断された通報に対してはまず、通報者のスマートフォン等にSMS(ショート・メッセージ・サービス)を利用して専用URLを送信され、通報者は専用URLにアクセスして映像や画像を送信することになる。さらに、映像や画像の送信の際には、スマートフォン等のGPS機能を利用して通報場所の位置情報が取得されることになる。

 このため、実際の通報時の映像や画像の送信では、通報者は、

・撮影した映像等に係る著作権の放棄(原則、映像や画像は取得した日の翌日から7日間経過後に自動消去される)
・GPSにより位置情報が取得される

ことについて同意することが必要となる。さらに、悪質な虚偽通報を行なえば、偽計業務妨害、軽犯罪法違反等の罪に問われる可能性もある。

 警察庁によると、試験運用中の事例では、駐車中の車からガソリンを盗もうとしている状況を目撃した被害者から容疑者の画像が送られ、早期に容疑者が逮捕されたケースや、行方不明となった小学生の画像が母親から送られ、早期に発見されたケースもあった。

 このように、事件や事故に対して映像や画像を提供してもらうことは、早期解決や迅速な初動捜査に非常に効果がありまた、事件や事故の状況が把握可能なことで、通報者の負担が減少することにもなるため、警察庁では適宜適切に同システムを活用していく方針だ。

 

 

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

鷲尾香一の ”WHAT‘S WHAT”

わしおこういち

最終更新:2023/04/10 07:00
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