『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』世情を反映し大ヒットへ
#金曜ロードショー #しばりやトーマス #金ロー
新年度の4月がスタート。4月になると、もうそろそろ例の時期だな…そう、名探偵コナン劇場版のシーズンだ! 毎年4月に公開されるアニメ『名探偵コナン』の劇場版最新作『黒鉄の魚影』公開(4月14日)を記念して、日本テレビ系『金曜ロードショー』では2週連続名探偵コナン祭りだ! 今週は2022年公開の劇場版第25作目『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』を放送します。
本作はモブキャラから声優のアドリブでレギュラーに昇格した高木刑事と佐藤刑事の結婚式から開幕する。なぜこの二人の結婚式からはじまるのかについては、以前書いた記事を参照していただきたい。
ついに二人が結ばれるのか! と思いきや、複数の暴漢が乱入。式に参列した警官たちを搔い潜って暴漢が放った銃弾が高木刑事に命中……すわ大惨事と思いきや、実は訓練だったというオチ。同じ式場で元刑事の村中が結婚式を挙げる予定だが、その式に襲撃の予告状が届いており、当日の警護を目的としたものだった!
なかなかに緊迫感のある(笑)オープニングだが、その裏では本当に大惨事が起きていた。本作きっての人気キャラ、公安警察の降谷零はある男を立体駐車場に追い詰めていた。その男は3年前に降谷の警察学校の同期である松田陣平が殉職した連続爆破事件の犯人で、佐藤たちが逮捕したのだが、ある人物の手引きで脱獄していた。
犯人は降谷の目の前で首輪に仕掛けた爆弾が炸裂し、死亡。降谷はスロープ下に落ちそうになった同僚を救おうとしている隙を狙われ謎の仮面の人物によって同じ首輪爆弾を仕掛けられてしまう。
翌日、コナンたちは警視庁の前で身元不明の男が突然爆死するという騒動に巻き込まれる。男の遺留品からは「¥」の字が入ったメモの燃え滓、そして「捜査一課 松田陣平」と書かれた名刺一枚が出てきた。今回の騒動の背後に3年前の松田の殉職事件が関係しているのか? その後、コナンは尾行していた公安刑事にある場所に案内される。そこには強化ガラスで周囲を囲まれ、首輪爆弾をつけられた降谷がいた。
コナンは、「万が一のために被害がほかに及ばないようにしている」という降谷から3年前の11月6日に降谷、松田、伊達、諸伏ら警察学校の同期が遭遇した爆破未遂事件の顛末を聞き出す。首輪爆弾のために身動きが取れない降谷の代わりにコナンは、一連の事件の捜査に乗り出す。
さらにその翌日、コナンと少年探偵団のメンバーは村中の結婚相手、クリスティーヌの友人からにプレゼントを受け取りにハロウィンの装飾であふれかえる渋谷の廃ビルに向かうが、部屋の中にコナンだけが閉じ込められる。部屋にあったのは水色とピンクの液体を使った時限爆弾。それは3年前に松田らが解体した爆弾と同じものだった。
劇場版コナンシリーズは20数年に渡り展開されている作品なので、登場人物同士の複雑な関係や、以前の事件がのちの物語に繋がっていたり……とにかく複雑なのだが、大体過去の騒動や事件は丁寧に(しかも説明調ではないように)説明されるので、初見の観客でも置いてけぼりにならずについていけます。この辺が20数年にわたって国民的アニメ作品として人気のある所以だろう。
コナンは劇場版で毎回、日本の都市がテロ騒ぎに巻き込まれている。時事ネタに絡めた騒動も起きる。今回はハロウィンを舞台に渋谷の街で未曾有のテロが行われようとする。ここ数年、日本ではハロウィンの乱痴気騒ぎが問題化しており、『ハロウィンの花嫁』ではテロリストがハロウィンの装飾に爆薬を紛れ込ませ、すり鉢状になった渋谷の地形を利用して大量殺人を目論む。よく考えると結構、恐ろしい話ではある。
スタッフが「渋谷ハロウィンの浮かれた連中を痛い目に遭わせてやる!」と思ったのかどうかは知らないが、なんらかの怒りのようなものが見えなくもない、という見方は穿ちすぎかな?
ちなみに爆弾テロリストはロシア人のプラーミャ(ロシア語で「炎」を意味する)というのだが、ロシア人の爆弾テロという設定も微妙に世情を反映していると言えなくもない! まあ、ロシアは国家自体がテロというか……おっとこれ以上はやめておこう。
プラーミャの凶行を止めようとするロシア人の民間組織が出てくるという展開も、プーチン政権に民間人がデモで抗っているようではないか。ファミリー層向けのアニメ映画にしてはポリティカル・メッセージが含まれている……ようにも見える!
というのは、筆者のひねくれた見方かも知れない。
20年以上も続く人気アニメの傑作として楽しむのが一番だ。しかし本作がシリーズ最大の興行収入97.8億円を達成した背景には、こういった世情を反映させたかのようなシナリオが評価されたからではないか? いや絶対そうに違いない!(断言)
本作で全シリーズの興行収入が1.000億円(っていうのもすごいけど)を突破したが、コナンファンが念願としている記録はまだ達成されていない。それは単独の興行収入100億円越えだ。
最近のアニメ映画は『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『ONE PIECE FILM RED』『THE FIRST SLAM DUNK』といった100億円越えを達成している作品が次々現れている。なのに25作品も作られている劇場版コナンだけが100億円に届かない。
2016年公開の『純黒の悪夢(ナイトメア)』でシリーズ初の観客動員400万人越えを達成して以降、劇場版コナンの観客動員数は右肩上がりを続けてきた(同作では黒の組織とFBIが初めて対決する劇場版になっており、ファンの期待値も高かった)。
2018年の『ゼロの執行人』で動員687万人、興行収入91億円を達成。もうファンの期待は膨らむばかり。シリーズ初の100億越えもあるかもしれない……!
しかしコロナ禍によって公開延期などのダメージを被った2021年の『緋色の弾丸』は動員538万人、興行収入76.5億円に止まった。そのショックを乗り越えたファンの熱心な活動によって『ハロウィンの花嫁』はシリーズ最大の興行記録を達成したのだ。
「こうなったら100億、いくしかねえよなぁ!?」「コナンの100億越えを観ずして死ねない!」
と2023年のコナンファンは史上最高に盛り上がっているという!
さあ100億円越えを目指すべく、史上最大504館上映でスタートする最新作『黒鉄の魚影』を観に行くんだ! その前に金ローで予習復習を忘れるなよ!
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