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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『ハロウィン』新三部作の完結編
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.732

凶悪事件のトラウマが伝播する社会派ホラー! シリーズ最終作『ハロウィン THE END』

ジョン・カーペンターから受けた影響

凶悪事件のトラウマが伝播する社会派ホラー! シリーズ最終作『ハロウィン THE END』の画像3
真面目な青年・コーリー(ローハン・キャンベル)も犠牲者のひとりだった

 リモート取材に応えてくれたデヴィッド・ゴードン・グリーン監督が、人気ホラーシリーズに社会的要素を盛り込んだ理由について語ってくれた。

デヴィッド「僕自身にとってのパーソナルな物語を描くことが何よりも大事なわけだけど、観客の心にきちんと響く作品にすることも重要なんだ。僕がやりたいことは、そういうことなんだよ。キャラクターたちによるドラマに、社会的なテーマを加え、それをホラー映画というジャンルの型として描く。そのことでより多くの観客に届けることができると僕は考えている。僕が撮った『ハロウィン』新三部作は、社会派ホラーと呼んでもらってかまわないよ」

 45年前にマイケル・マイヤーズが起こした惨劇をあたかも実在の事件のようにデヴィッド監督は扱い、そこから派生する人間模様をリアリティーたっぷりに新三部作では描いている。

 もちろん、ホラー映画ファンが楽しめるよう、ジョン・カーペンター作品へのリスペクトも込めてある。気弱なコーリーが変身していく姿は『クリスティーン』(83)、街全体が恐怖に包まれる様子は『ザ・フォッグ』(80)を連想させる。デヴィッド監督にとって、「ジョン・カーペンター」はどんな存在なのだろうか?

デヴィッド「子どもの頃の僕にとって、ジョン・カーペンター監督は多くのインスピレーションを与えてくれる憧れの人だったんだ。それが、僕自身が映画監督になったことでメンター(指導者、相談者)と呼べる存在になったんだ。『クリスティーン』『ザ・フォッグ』はもちろん、『ゴースト・ハンターズ』(86)や『遊星からの物体X』(82)からも大いに影響を受けているよ。父親と一緒に『スターマン/愛・宇宙はるかに』(84)を観に行ったこともあるしね。新三部作では単に原案者としてだけではなく、作曲家としてもジョン・カーペンターには参加してもらったし、彼の息子のコーディ・カーペンターも音楽で加わってもらったんだ。カーペンター家と仕事を一緒にできるなんて、すごく光栄なことだよ」

惨劇が起きた街から離れられない人たち

凶悪事件のトラウマが伝播する社会派ホラー! シリーズ最終作『ハロウィン THE END』の画像4
ローリーの孫娘・アリソン(アンディ・マティチャック)は街を出ていくかで悩む

 イリノイ州にある小さな街・ハドンフォールドが『ハロウィン』シリーズの舞台だ。恐ろしい目にさんざん遭いながらも、ローリーはこの街から離れることができずにいる。マイケル・マイヤーズもまた、生まれ故郷であるハドンフォールドにこだわり続けている。悲しい事件が起きた土地から離れることができずにいる人たちが描かれている点も興味深い。

デヴィッド「やはり、生まれ育った場所は落ち着くし、毎日のルーティーンが決まっているから、簡単には離れられないもの。生活の拠点になっているわけで、そこでの暮らしが自分にとってのアイデンティティーにもなっている。若いアリソンは、祖母であるローリーをひとりぼっちにすることはできないという責任感もあって、街から離れることに抵抗を感じているんだ。でも、これ以上ハドンフィールドという街に暮らし続けることも問題だと考えるようになる。ひとりの人間は、いつか責任や周囲の期待から解き放たれて、自由を得る必要があると僕は考えているんだ。ハドンフィールドで暮らす人たちにとっては、街自体が一種の“錨(いかり)”のようになっている。でも、今回はマイケル・マイヤーズの物語に決着がつくことで、“錨”が上げられることになるんだ。登場キャラクターたちは新しいアイデンティティーを求めて、過去の記憶から旅立つんじゃないかな」

 新三部作でローリーたちを見守ってきた保安官補のフランク(ウィル・パットン)が、いい味を出している。彼もまたマイケル・マイヤーズによって同僚を死なせてしまったという悲しい過去を持っているが、ローリーに対し「日本に桜を見にいくんだ」「一緒に行かないか」と優しい言葉を投げ掛ける。ホラー映画にあって、心なごむシーンだ。

デヴィッド「桜の花は美しく、そして散り、また翌年には花を咲かせる。心の傷を抱える人たちを描く『ハロウィン THE END』の脚本を書く上で、桜の花はとてもシンボリックなものになるなと思って、あの台詞を考えたんだ。子どもの頃の僕はテキサス州の田舎町で過ごしていたので、アジア文化に触れる機会はほとんどなかったけど、大学に進学してから多くのアジア映画を観るようになり、いろんな日本映画も観たよ。僕の双子の息子たちは日本のアニメーションが大好き。今年の桜の季節には、親子で日本を旅行することにしているんだ(笑)」

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