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世界は映画を見ていれば大体わかる #44

『シン・仮面ライダー』は元ネタ知ってると倍おもしろい! 14個ネタバレ解説

『シン・仮面ライダー』は元ネタ知ってると倍おもしろい! 14個ネタバレ解説の画像1
庵野秀明監督作品『シン・仮面ライダー』公式サイトより

 ついに公開となった庵野秀明監督による最新作『シン・仮面ライダー』は仮面ライダー生誕50周年を記念した作品だ。

『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』に次ぐシン・シリーズの一本としてつくられ、庵野監督はこれでゴジラ・ウルトラ・ライダーと日本三大特撮を制覇した!

 そういうこともあってファンの期待値が最も高まった一本だ。筆者も最速の舞台挨拶つきライブビューイングで鑑賞し大変満足したのだが現在、本作に関する観客の意見は賛否真っ二つといったところで、筆者の知人界隈でも絶賛の意見があればイマイチという意見も聞かれる。

 その理由は『シン・仮面ライダー』が前二作と比較してもかなり“狭い”ところに突き刺さるように作られているからだと思う。

 庵野監督は今回のリブートに初代ライダーのオマージュを数えきれないほど詰め込んだ。濃すぎるやつを。それらの「元ネタ」を理解しなくてもこの作品は楽しめるのだが、知っているとさらに『シン・仮面ライダー』を楽しむことが可能だ。あと、家で奥さんや子供に自慢できる。聞いてる方は呆れるかもしれないけど……。

 ではその元ネタの数々をご紹介しよう!

※以降は作品のネタバレに関する部分がありますので、映画を未見の方は理解した上でご覧ください

①三栄土木

 冒頭、いきなり始まるダンプカーと本郷猛、緑川ルリ子を乗せたサイクロン号のチェイスシーン、その時に本郷らを追ってくるダンプカーに書かれた会社名で、これはテレビの『仮面ライダー』を撮影していた、東映生田スタジオ近くの土地を開発していた業者名。何度も撮影で使っていたため、ファンの間ではロケ地を称して「三栄土木」と呼ばれている(ウルトラシリーズのロケにも使われた)。車のナンバーは多摩ナンバーで、テレビのライダーが奥多摩辺りでよく撮影されていたことのオマージュをナンバーでも示す!

 SHOCKER戦闘員が見上げると、崖上にライダーが立っているという構図はテレビ版第一話のカットとほぼ同じだ。

②小河内ダム

 そのあとに始まるSHOCKERの人外合成型オーグメント、クモオーグとバッタオーグ(仮面ライダー1号)との戦いが行われる小河内ダムは、テレビ版第一話でライダーと蜘蛛男が戦った奥多摩湖の小河内ダムだ。

 このシーンもカメラのアングルを第一話のシーンの再現で、さらにライダーキックで止めを刺す場面は事情があって小河内ダムでは撮影できず、川崎の堤防で撮られた……というテレビ版をなぞらえて、本作でもクモオーグにとどめを刺す場面は別の場所で撮影された。

③サイクロン号のナンバー

 本郷が乗るバイク、サイクロン号のナンバーは「品川 ま2499」で、テレビで本郷が乗っていたサイクロンのナンバーを再現した。

④人工知能アイ

 SHOCKERが生み出した世界最高の人工知能。劇中に登場するサーバーには、「710403」のナンバーが書かれている。テレビ『仮面ライダー』の初回放送、1971年4月3日のことである。

⑤人工知能ケイ

 SHOCKERの創設者が作り出した人工知能アイによって生み出された、外世界を観測するための人型人工知能ケイ(CV:松坂桃李)の外見は、ライダーの原作者・石ノ森章太郎の他作品『ロボット刑事』に登場する主人公・ロボット・Kに似ている、というのは特撮ファンならすぐに気づくところだが、庵野監督はさらに濃いネタを用意する。

 人工知能アイはケイの前にジェイという人工知能をつくり、それがバージョンアップしたのがケイだ。これは『ロボット刑事』が企画時の段階で『ロボット刑事J(ジョー)』というタイトル案で、最終的にK(ケー)に決定。庵野監督はここから人工知能ジェイがバージョンアップされてケイになるという含みネタを展開する。

⑥コウモリオーグ

 第二の敵はSHOCKERの生化学主幹研究者コウモリオーグ。これはテレビ版第二話の敵がコ蝙蝠男であることからの引用だが、緑川ルリ子(浜辺美波)がビールスに感染して人質にされそうになる展開もそのまま。

 最後は空を飛んで逃げようとしたところを、サイクロンで空高く舞い上がった本郷に、上空からライダーキックを決められて死亡。この展開はテレビ版第11話に登場するゲバコンドルをサイクロンで体当たりして倒した場面っぽくもある。

⑦サソリオーグ

 第三の怪人、サソリオーグを演じるのはなんと長澤まさみ! 彼女は当初、発表されていたキャストに名前がなかったので劇場で驚いたが、顔の半分を覆ったマスクに鋏状の左腕を持つという外見(テレビ版の「さそり男」と同じ)も弾けている。登場シーンのトラックに「0417」というナンバーがあるのは、さそり男登場回「怪人さそり男」の放送日。

 マスクのデザインモチーフは、石ノ森作品の『快傑ズバット』に登場する敵、地獄竜。

⑧ハチオーグ

 西野七瀬が演じているハチオーグは、テレビ版の蜂女を想起させるキャラクターだ。人間態名はヒロミで、石ノ森のマンガ版やテレビ版にもルリ子の親友として登場する野原ひろみからの引用。
 このハチオーグ・ヒロミは庵野監督の趣味が炸裂しているキャラで、やたらと尊大な態度に「あらら」といった口癖、ルリ子にサディスティックな愛情を抱いており、「絶望して泣き崩れる様が見たい!」と言いながらも彼女を、SHOCKERに連れ戻そうとする。愛しながらも憎んでいるという複雑な人物だ。ほかの怪人たちは原作・テレビ版からの要素が多めなのに、ハチオーグだけは庵野監督のオリジナル成分が多すぎでしょ!

 ハチオーグがルリ子に「SHOCKERに産まれし者はSHOCKERに還れ」というが、これも同じ石ノ森作品の『人造人間キカイダー』に登場する悪役、プロフェッサー・ギルの「ダークに産まれし者はダークに還れ」からのインスパイア。

⑨一文字隼人

 柄本佑演じる第2バッタオーグ・一文字隼人は、SHOCKERに改造された第1バッタオーグのバージョンアップで、本郷と違い風の力を受けなくても変身できる。これはテレビ版で本郷に変わって登場した一文字がのちに仮面ライダーの代名詞ともなる変身ポーズをとってライダーに変わるようになったことから。

 本郷と対峙した一文字が「お見せしよう!」とコートの下からベルトを見せて変身するが、これもテレビ版で一文字が初めて変身ポーズを見せた時の引用。これはライダーファンには有名なネタで、テレビ版で一文字を演じた佐々木剛が撮影の際、緊張からか、変身ポーズが恥ずかしかったのか、「上着の前を開けてベルトを見せる→変身ポーズをとる」という段取りをミスって最初に変身ポーズをとってしまい、途中で気が付いて上着の前を開けてベルトを見せる、という不自然な動きに。明らかなNGテイクながら、本編にそのまま使われてしまったが『シン・仮面ライダー』では本来の変身ポーズが再現された。

⑨左足を負傷する本郷

 第2バッタオーグとの戦いで1号は左足を負傷する。テレビ版で藤岡弘がバイクスタントの事故で左足を怪我したことからの引用。テレビ版ではこの怪我のため本郷は「海外のショッカー支部との戦いに行った」ということになり、一文字隼人、2号ライダーの登場となる。『シン・仮面ライダー』では、一文字の登場にこの交代劇がなぞらえており、芸が細かい!

⑩にせライダー

 イチローは対1号のために大量発生型相変異バッタオーグ11体を差し向ける。テレビ版、マンガ版ともに登場する「にせライダー」だ。11体(漫画版は12体)の変異バッタオーグの前に1号は苦戦するが、助けに入った2号の協力によって相手を6体にまで減らす。6体になるのはテレビ版のにせライダーが6体だったことをなぞらえている。

⑪チョウオーグ・イチロー

 イチローはバッタオーグを生み出した緑川博士の息子で、ルリ子の兄。劇中序盤では本体を表さず、ルリ子の「孵化した」というセリフや名称からもわかる通り、蝶とのオーグメンテーション手術で誕生した「仮面ライダー0号」。0号という名称はテレビ版『仮面ライダー』のプロデューサー、平山亨の短編「二人ライダー・秘話」で本郷以前にライダーとして改造手術を受けたが、実験に耐えられず死亡した被験者が0号だ。

 蛹から蝶になるというモチーフは、石ノ森作品の『イナズマン』からの流用。ベルトは二つの回転部分があり、イチロー自身がベルトの開発者であり、チョウオーグのベルトは1号と2号のベルトを経て完成したもので『仮面ライダーV3』のベルト、ダブルタイフーンにも見える。なぜV3なのかというと、イナズマンの初期デザイン案のひとつが、のちのV3に似ているものがあるからだ。

⑫「いつもふたりだ。ふたりでSHOCKERと戦おう!」

 本郷の魂を受け継いだ一文字は、サイクロンに乗ってひとり走り去る。この際の本郷と一文字のやり取り、そしてシーンは漫画版『仮面ライダー』の完全な再現。

⑬竹野内豊と斎藤工

 劇中「政府の男」「情報機関の男」として登場する竹野内豊と斎藤工は、庵野作品の『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』に出演した役者だがそれぞれ「立花」「滝」という名前で、テレビ版のおやっさんこと立花藤兵衛とFBI捜査官・滝和也を想起させる。同じ俳優や役名の人物が登場するのは石ノ森作品にたびたび見られるスター・システムを彷彿とさせる。

⑭エンディング曲

 エンドロールではテレビ版の楽曲「レッツゴー!!ライダーキック」「ロンリー仮面ライダー」「かえってくるライダー」の3曲が続けて流れる。これは当時発売されたレコード『仮面ライダー ヒット・ソング集』の一曲目から三曲目までの順を入れ替えて流している。

『仮面ライダー ヒット・ソング集』は日本の特撮ヒーロー番組ではじめて、歌だけで構成されたレコードで、これが大ヒットしたことでヒット・ソング集は後続の番組にも受け継がれた。当時の楽曲をそのまま使ったのは、『シン・仮面ライダー』という作品を通して徹底されている「当時を再現する」狙いがあるのだろう。ラストが「かえってくる~」なのはその名の通り「かえってくる」という意味なのか?

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