『スッキリ』炎上騒動、加藤浩次&オードリー春日への批判に元芸人が言いたいこと
#オードリー #スッキリ #加藤浩次 #檜山豊
ここのところひとつの話題を除いて比較的穏やかなお笑い界だが、その穏やかではないひとつのニュースがいろいろと波紋を呼んでいる。そのニュースとは3月24日に日本テレビ系で放送された「スッキリ」の生放送中に発生した、MCの加藤浩次さんとオードリーの春日俊彰さんによる那須どうぶつ王国でのペンギン巻き込み騒動だ。
多くの方がご存知だと思うので、大まかに説明すると那須どうぶつ王国でペンギンのお世話をするというロケ中に、加藤さんによる「池に落ちるなよ」というフリがあり、それを受けて春日さんが池に落ちるというベタな展開を見せたのだが、その際に池にはペンギンがおり、とても危険で、さらには那須どうぶつ王国サイドも「動物がいない池」に落ちるかもしれないという事前打ち合わせはあったのだが、動物がいる池に落ちるということは聞いておらず、日本テレビに抗議をしたとのこと。
動物を危険な目に遭わせるような行為があったにもかかわらず、スタジオやロケの現場が笑いに包まれていたことで不快に思う人が多く、炎上騒ぎとなってしまったのだ。もちろん放送されたその日のうちに「スッキリ」サイドは番組の公式サイトで謝罪文を投稿。これにて炎上騒ぎも鎮火するかのように思えたのだが……。
ここまでのニュースに関しては別のコラムで書いているので、お時間がある方はぜひ。
さて今回の炎上騒ぎはこれで収まることはなかった。次に飛び出してきた炎上は、直接の原因であるオードリーの春日さんの謝罪がないという点、そして池への落下を煽ってしまった加藤さんの「スッキリ」内での謝罪が視聴者の方にとって印象が良くなかったという点の2点だ。
まず春日さんなのだが、生放送の翌25日に深夜の生放送ラジオ「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)に出演した。今回の件について謝る意思があるのなら、このラジオこそ謝るタイミングだったと思うのだが、放送中今回の騒動について一切触れず、謝罪も無かった。そんな春日さんへ対する非難の声と共に「当分テレビで見たくない」など春日さんを拒絶する声も上がっている。
続いて加藤さんは27日に放送された「スッキリ」の番組内で謝罪をした。番組は冒頭から、加藤さん、アナウンサーの森さん、岩田さんがスタジオに神妙な面持ちで立ち、コメンテーターを紹介するや否や、森さんが「まず番組冒頭でお詫びです」と切り出し24日の放送について、動物への安全面や衛生面への配慮が不足した危険な放送になり、責任は番組にあると謝罪。続けて岩田さんが「改めて那須どうぶつ王国や視聴者へ深くお詫び申し上げます」と謝罪した。
加藤さんは「僕からも一言いいですか?」と断り、以下のように経緯を説明した。
「事前の打ち合わせにおいて、こういうロケなので池に落ちても良いですか?と動物園側に確認したところ、動物に危害を加えなければ落ちても良いと言われていた」
「池に動物が入っていなければ落ちても良いですよというニュアンスでスタッフも動物園側も納得をしていた」
「僕も当日の打ち合わせでしっかりとした打ち合わせを怠っており、池に落ちて良いんだという部分だけで進んでしまった。」
「その為に実際に春日君に対してもフリという形で春日君が池に落ちなきゃいけない状況にMCの僕が追い込んでしまった部分はあると思います」
「こういうロケを快諾してくれた那須どうぶつ王国の人たちの気持ちを汲めずに不快な思いと迷惑をかけてしまった」
「動物に危害が加わらなければ入っても良いと言っていたのに、そこで危ない形になってしまった。それは視聴者の皆さんが見ていて危ないと思ったり不快に思ったことが実際にあったと思います。そこに関しても僕も謝罪しないといけないし、僕自身が番組MCとして配慮が足りなかったんだなと思います。それに関しては番組をご覧になった皆さん、不快に思われた方々、本当に申し訳ありませんでした」
上記はかいつまんで書いているので、もっといろんな面に謝罪をしていたのだが、動物への配慮や春日さんへの無茶振り、そして迷惑をかけてしまった人への謝罪もあったものの、池に落ちたという部分、つまり春日さんの行動自体は悪くないという雰囲気が伝わった。
これは僕だけがそう感じたわけでは無く、視聴者にも同じように感じたらしく、ネット上では
「嫌々謝罪しているのが見え見えな態度だった」
「頭も下げず態度悪すぎ」
「打ち合わせがどうこうじゃなくて、そもそもやってはいけない行為をして笑いを取るやり方がダメなんだよ」
などの声が上がった。
さて元芸人として、加藤さんや春日さんに浴びせられている声に若干反論したいのだが、まず「嫌々謝罪しているのが見え見え」というものだが、加藤さんは嫌々謝罪しているわけでも不貞腐れているわけでもなく、愁いていたのではないだろうか。
加藤さんの17年に渡りメインMCを務めてきた番組への思いは計り知れない。番組の共演者やスタッフさんはもはや身内と言っても過言ではない。それほど大切にしてきた番組がまもなく終わるというタイミングに自身のせいでこんな炎上騒ぎを起こしてしまった。自分に対する情けなさや腹立たしさで申し訳ない気持ちになったのではないだろうか。そんな自分への怒りが不貞腐れているように見えたのかもしれない。もしネットで言われているように本気で嫌々謝罪をしていたとしたら、加藤浩次という芸人はここまで世間から愛されていないと思う。
そして「そもそもやってはいけない行為で笑いを取る……」という声だが、今回の加藤さんと春日さんのやったことはそもそもやってはいけない行為ではなく、昨今やってはいけないとなった行為なのだ。数年前のテレビ番組を思い出してほしい。蛇や蛙が大量に入った水槽に芸人が入れられるというような企画を見たことはないだろうか。水槽に入れられてもがき苦しむ芸人の滑稽な様を見て笑うというものなのだが、もがき苦しんでいる芸人の足元には間違いなく蛇や蛙がおり、少なくとも踏まれたり押しつぶされたりしていたはずだ。
しかし、その部分に注目し、蛇や蛙が可哀相という声は、面白いという声よりも圧倒的に少なかった。この数年で世間の動物に対する見方が変わってきている。少し前まではテレビ番組で「犬」のことを「犬」と呼ぶことができたのだが、今は「ワンちゃん」と呼ばなければいけない。もちろんTPOにもよるのだが、基本的には「ワンちゃん」と呼ばなければクレームが入りかねないのだ。
このように世間が急速に変わることにより、笑わせ方も変わる。「そもそもやってはいけない行為」が「そもそも」ではない可能性があるということなのだ。もちろん「そもそも」かどうかは問題ではなく「今やってはいけない行為」なのであれば、それに対応し、行動するのが今の芸人の責務であるのは間違いない。
ちなみに今回の騒動に関して芸人から加藤さんや春日さんを気の毒に思う声が多数上がっており、カンニングの竹山さんは自身がMCを務める「Abema Rrime」に出演した際「あれがダメ、これがダメとかいうけど、基本的にはダメなことをやってるから、皆がわらってるわけだから。でも時代がそうなったら、これからはやらないってそれだけですよ」と。
宮迫さんのYoutubeチャンネルで配信されている「宮迫博之のサコるニュース」の28日の生配信にてゲストの千原せいじさんと共にこの騒動を取り上げ、お二人とも池に落ちるのは伝統芸だということで炎上している春日さんに対して「可哀相」と同調している。さらに宮迫さんは「謝罪がなかったとか言われてるじゃないですか。春日が謝るべきはペンギンさんやからね」と主張。するとせいじさんは「一般視聴者に謝る必要なんて一切無い」と付け加えた。
「落ちるときって打ち合わせされていることが多いんですか?」との質問に、宮迫さんは「打ち合わせして落ちると面白くないんです。芸人としては。落ちるわけの無い場所で落ちるというのが、面白い事やから。伝統芸ではあるんですけど、そこは制作サイドが「ここでその動きは本当に止めてください」ってあらかじめ言わないといけなかったのかもしれない。だから春日君可哀相だなって」
それぞれの言い回しや感じ方は違うが、皆さん春日さんに同情しているように思えた。
今回のような騒動があったとき、昔のテレビでは芸人が謝罪するようなことは無かった。視聴者からのクレームにはテレビ局が対応し、ロケ先への謝罪は放送外で行われるものだった。これは過去の芸人は面白さや明るさ以外を求められておらず、神妙な面持ちで謝罪をするなんてマイナスプロモーションにしかならなかった。しかし、今の芸人には面白さや明るさ以外にも謙虚さや真面目さが求められる。これが新しい形の芸人の姿といったところだろう。
このような書き方をするとお笑い界にとってマイナスな状況になっているように感じる人もいるかもしれないが決してそうではない。僕たちのような一般人の声がテレビサイドに届くというのはとても良いことであり、すこし大げさかもしれないが、我々視聴者も一丸となってテレビを面白くできる時代になったということなのだ。テレビ離れが進む現代、もう一度テレビを面白くするには、僕たちの力が必要だ。さあみんなでテレビを面白くしよう。
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