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『シン・仮面ライダー』良い子にとっては地雷

『シン・仮面ライダー』良い子にとっては地雷の画像1
庵野秀明監督作品『シン・仮面ライダー』公式サイトより

 言わずともとうに知れておる事実即ち周知の事実であるのだが、仮面ライダー本郷猛は改造人間であり、ショウムライター庄村聡泰はダメ人間である。

 言いたかっただけです(笑)。

 現在全国公開中、庵野秀明監督作品『シン・仮面ライダー』である。映画の内容は勿論バイク乗りの話でありそのバイクの名は勿論サイクロン号であったが、観客である我々はバイク乗りというよりは波乗りにならなければならない作品であった。

 その波とやらの主なる構成要素は何か?

 勿論、庵野監督の脳汁である。

 そう、本作品は(何となく予想はしていたが)庵野監督の脳汁迸る事甚だしいにも程が有り余りまくる内容であったので、単純に好きか嫌いかの判断はその波に乗れたか否かといった所に帰結するとおっさんは思っている。

 冒頭から程なくして始まる最初の戦闘シーンより先ずは挨拶代わりの先制パンチだ。おっさん含め多くの観客が不思議がっていた事であろう映倫(映画倫理機構)区分PG12指定(12歳未満は成人保護者の助言や指導が適当と見なされる作品。PGとはParental Guidanceの略で要するに良い子の皆は親のガイド付きで観ようね的な意味)の理由が明かされる。

 ライダーのパンチがショッカー戦闘員の顔面を貫通するわ腹ブチ抜くわ横たわる戦闘員を踏みつけりゃ頭カチ割れるわしかも血糊はどばどばその瞬間だけわざわざ接写なのだ。

 もしおっさんが未見ならば上記4行のネタバレのみでチケットを即購入するであろう。まあ何せこちとらこんなんとかこんなんとかが大好物なものでして。

 

 

 余談であるが友人が別日に観に行った際に現行ライダーである『仮面ライダーギーツ』のファンであろう良い子が同じ仮面ライダーだからと地雷を踏んでしまい、のっけから凍り付いていたとの報告を聞いた次第だ。

 とはいえ血生臭い戦闘描写はここまで。あとはもうひたすらにケレンケレンケレンの連続。仮面ライダーならぬケレン(味)ライダーと言った場面が矢継ぎ早に展開されて行く。

 大仰なセリフ回し、長ったらしい用語解説、唐突に放り込まれるよう分からん英語、執拗なるカット割りに執拗なるカメラ目線、秘密結社ショッカー(SHOCKER)を「Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling(持続可能な幸福を目指す愛の秘密結社)」の略称とし、上記をノンストップで浜辺美波演ずる緑川ルリ子に喋らせるシーンなんてもうサイコーでしたし、だからギーツのファンの良い子にとってはやっぱり地雷でしかないのである。

 オーグメント(Augment=拡張、増強)から来ていると思われる本作に於ける怪人の呼び名は”オーグ”でありクモオーグの自意識過剰なナルシストっ振りと、ライダースの全面にいっぱい付いてるジップから手が生えてくる見せ方に感心したり、コウモリオーグのチープな動きに実デビ(実写版デビルマン)を垣間見て目頭が熱くなったり(俺は実デビ大好きです本当にスゲエし本当にヒデエから皆に観て欲しい)、ハチオーグとの戦闘シーンはキルビル思い出さないのが無理なお話だったし、そして長澤まさみはエクスタシーだったのでギーツのファンの良い子にとってはやっぱり地(ry

 そんなSHOCKER側のオーグの皆さんの敗因は基本、ライダーのスペックを舐めていたが故の結果であり緑川ルリ子の父である緑川弘(演ずるのはおっさんが世界一好きな映画として名を上げる『鉄男』を撮った塚本晋也。ぶっちゃけ公開初日に観に行った理由の大半は、塚本監督が出ているからであり『シン・ゴジラ』にてゴジラ生態解明を担った科学者間邦夫を演じたのも塚本監督で即ち、おっさんは塚本晋也のファンであり庵野監督が撮る塚本監督のファンであるというねじれ構造)の最高傑作であると同時に、そのパートナーであるルリ子の用意周到な事もSHOCKERの皆さんはようく知っている筈(というか緑川弘もルリ子も元々SHOCKER構成員なのでようく知っていない訳がないのだ)なのでは……と思う愛しのポンコツ軍団っ振り。

 何せ最大のネタバレになってしまうのだが、森山未來演ずる黒幕で緑川ルリ子の兄で作中最強のチョウオーグである緑川イチローも何というかそらオーグとしてのプラーナ(作中で言う生命エネルギー的な物の総称)含有量は凄かったけどヒトとしてのスタミナ切れで敗北を喫した様にしか見えず、まあイチロー兄さん基本玉座に座ってただけだから普段運動してないんだろうな……。なんて幕切れなのである。兄さん愛しいっす。兄さん推せるっす。

 ツッコミ所ばかりをあげつらう形となってしまったがこの辺りの描写全てに昭和発祥の特撮ヒーロー物即ち「仮面ライダー」という対象を含む幾多数多の諸作品、かつて庵野監督がキュレーションを務めた特撮博物館で取り扱った作品群全てへの愛と敬意という名の脳汁迸る事甚だしいにも程が有り余りまくっていたので、おっさんは終始興奮していたし、爆笑しながら観ていた。

 やっぱりヒーローは何だかんだ最強であって、悪に勝ち続けるその理由なぞよく考えりゃ考える程あってない様な物くらいが丁度良く、だからこそ”正義は勝つ”、即ち”正義だから勝つ”と言うこれこそよく考えりゃめちゃくちゃな強さの理由がヒーロー物の定説として成り立ってしまうのだ。

 実はそんな単純明快な勧善懲悪映画だとして本作を観るとキャッチコピーである”変わるモノ。変わらないモノ。そして、変えたくないモノ。”の変えたくないモノとはきっと”正義は勝つ”であり、池松壮亮演ずる本郷猛の長所であり短所でもある”優しさ”が勝つお話なのではないかとおっさんは思うのである。

 それではお聴き下さい。

 藤井風で、

「優しさ」

庄村聡泰(コラムニスト・スタイリスト)

ロックバンド[Alexandros]のドラマーとして2010〜21年に活動。バンド時代の収入ほぼ全てを注ぎ込むほど傾倒した音楽や洋服を中心に、映画やマンガ、アニメやグルメ、世界各地の珍スポットなどのさまざまなカルチャーに精通し、これらの知識と経験を生かしてライフスタイル提案型ファッションブランド「スナック NGL」を始動。また、歌劇な過激団 @furaku_taru の制作総指揮を務めるなどプロデュース活動や、#サトヤスタイリングとしてファッションスタイリングや、#ショウムライターとして音楽や映画をはじめさまざまなメディアでインタビューやコラムを執筆。自ら映画にも出演するなど精力的な活動を広げている。 #サトヤスタイリング #ショウムライター インタビュー

Twitter:@shomurasatoyasu

Instagram:@shomurasatoyasu

庄村聡泰のホームページ

しょうむらさとやす

最終更新:2023/03/31 13:00
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