『わたしの幸せな結婚』プラトニックラブストーリーなのに…目黒蓮の“高純度エロス”異能が発動!
#今田美桜 #目黒蓮 #オトナの「J春映画」レビュー
若手ジャニーズタレントと恋に落ちる、メインターゲット=中高生の恋愛映画ーー俗にいう「キラキラ青春映画」を侮るなかれ。オトナのあなたにこそ、ぜひ観てほしいのです。この連載では、ジャニーズ青春映画、略して“J春映画”の魅力を全力でお伝えしていきます。
酸いも甘いも噛み分けたオトナだからこそ、俯瞰してピュアな恋愛模様に酔えるというもの。忘れていた胸キュンに癒され、憂いはふっ飛び、きらめく多幸感が全身に満ちていく……そんなめくるめく映画体験をご一緒に!
冷酷無慈悲…なはずなのに素の少年っぽさも見せる目黒蓮
――お客様のなかに、私のためにガチで怒ってくださる方はいらっしゃいませんか?
客席でボロ泣きしながら思わずそう問いたくなったのが、今をときめく目黒蓮さん主演の映画『わたしの幸せな結婚』であります。
舞台は近代日本。そこでは”異能”と呼ばれる特殊能力を受け継ぐ者たちが、帝(てい)とともに代々、国を守ってきました。能力を持たずに生まれたことで両親や異母妹から虐待されてきた斎森美世(今田美桜さん)は、若くして異能部隊を率いる軍人・久堂清霞(目黒さん)との政略結婚を命じられます。容姿端麗なれど、冷酷無慈悲と噂される清霞。
やっかい払い同然に家を出され、もう帰る場所などない美世に、彼は冷たく言い放ちました。
「ここでは私の言うことに絶対従え。出ていけと言ったら出ていけ。死ねと言ったら死ね――」
う、うおおおお言われてみてぇぇぇぇ!
どんなにクールにしてみても、生来の温かさが隠せない”めめ”のあの声で、私もこれを言われてみたい!
清霞と美世が初めてまみえるこのシーンまでは、私もまだ余裕があったのです。
初々しい白湯メイクをした若い“めめファン”たちを尻目に、私は風呂の残り湯メイクくらいな顔でニンマリ笑い、ぐいぐいとスクリーンを見つめていました。
長身、長髪、それに軍服と、くそ麗しいめめの姿に「もったいねえ、もったいねえ」と手を合わせておったのですが……。
場面が変わるたび、極限まで尊厳をすりつぶされた美世の絶望が明らかになり、浮かれた気持ちはすっと居住まいを正しました。
清霞にしても、隊の先頭に立って国を守り、さらには異能家系の当主として血を絶やさぬよう重責を負う身。その重さを想像するほどに息が詰まります。
生きるためにすべてを諦めてきた美世と、心を許さぬことで邪心を持って近づく者を避けてきた清霞。
形は違えど、他人に何かを望まないできたふたりが出会ったことで、おたがいの胸に「なぜ?」という問いかけがポコポコと生まれます。
なぜ美世は息をするように謝るのか、なぜ名家の娘なのにみすぼらしい身なりをしているのか、なぜ毎夜、悪夢にうなされているのか。
清霞はなぜ、自分に贈り物をしてくれたのか、なぜ体調を気遣ってくれたのか、なぜ逢いたくてたまらない人を呼んでくれたのか……。
すべての答えを探り当てたとき、その柔らかな手触りこそ、まぎれもなく相手への愛しさだと知るのでしょう。たくさんの「なぜ」を紐解きながら距離を近づけていくふたりが、しみじみとまぶしく感じられます。
そんな清霞と美世の隔たりを詰めていったもののひとつに”食事”があります。
最初こそ、「毒でも入れたのでは?」と疑って美世の作った朝食に箸もつけなかった清霞ですが、母親代わりの使用人・ゆり江(山本未來さん)のたしなめもあり、再び美世の用意した膳に向かいます。
メニューはご飯に味噌汁、玉子焼き、厚揚げなどなど。この厚揚げは美世が七輪でじっくり焙って調理したものですが、厚切りトーストもかくやといった大きさで、彼女の“旦那様”へのリスペクトが感じられます。
美世の心づくしの食事を口にして、思わず「うまい」と漏らす清霞。
初めて料理をほめられたうれしさに、ほろほろと涙をこぼす美世。
褒めたのになぜ泣くのか、またしても戸惑う清霞。
――このあたりにくると、「目黒蓮さん、えっへっへっ」みたいな湿ったBBA心はすっかり潰え、「坊ちゃま、美世さまを幸せにしてあげて……!」と祈るような気持ちになっていました。
そして、「“異能”を持たない自分は清霞にふさわしくない」と、自分の幸せを殺しても相手の幸せを願う美世の健気さに、「幸せってなんだっけ?」と考えさせられもしたのでした。
愛する人を脅かす者に鉄槌を下すことも、幸せを守るひとつのかたち。
美世をいたぶる毒家族に、ついに堪忍袋の緒が切れた清霞が放つ炎のなんと激しく美しいことか。目黒さんの怜悧な美貌が、完璧な仕事をしています。
その横顔に異能使いの証を浮かび上がらせ、バタバタと敵を倒して未来の妻を救い出す。燃えさかる炎を背に美世を抱く清霞には「きゃあお姫様抱っこぉ!」などと茶々を入れる隙はありません。
そこにはひたすらに強くひたむきな愛が漲り、誰もが「私のために、こんなふうに怒ってくれる人はいるだろうか?」「何があっても譲れないほど愛しい人はいるだろうか?」と、我が胸に問わずにはいられなくなります。たとえば、あなたはどうでしょう?
清霞と美世は無事難を逃れますが、帝都を揺るがす不穏な影がふたりに迫りつつありました。さらに、美世自身にも驚くべき秘密が隠されていて……。
物語終盤、ふたりそれぞれが持っていた傘を片方下ろして、清霞が美世にあることを切り出すのですが、その言葉は熱く厳かで、すべての渇きを癒すように胸に響きました。
美世に向ける少年のように真摯な瞳は、素の目黒さんそのまま。清冽な色気が漂います。終始プラトニックなのに高純度なエロスを叶えられるのは、目黒さんならではの異能なのでしょう。
めめに、清霞と美世に、末長く幸あれと願わずにいられない宝石のような作品でした。
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