『罠の戦争』よりも人気だった80年代のドラマ『代議士の妻たち』の壮絶な中身
#ドラマ #罠の戦争
国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
3月27日、ついにドラマ『罠の戦争』が最終回を迎えてしまいましたね。しばらくは「罠ロス」でしょんぼりしそうですが、最近は新たな楽しみも見つけております。大先輩から「昔のテレビドラマの『代議士の妻たち』(TBS系、1988年)は『罠の戦争』よりも人気だった」と教えていただき、古書店から同タイトルの原作(家田荘子著、文藝春秋1987年)を取り寄せて読んでいるのです。ドラマのビデオがあればもっといいので、ぜひビデオ化をお願いしたいですね。
1980年代の選挙は今の小選挙区制と違って中選挙区制で、同じ党内の候補者とも熾烈な戦いを強いられていた時代でした。法の目をかいくぐった買収が横行し、札束が文字通り飛び交っていたそうですよ。権力欲と嫉妬が渦巻く永田町で夫を支える「妻」にスポットを当てた作品は興味深いですが、やはり妻はあくまでも裏方なんですね。
作品には候補者の妻としてすべきこととして、
① 思うこと全部を言ってはいけない
② 誰に対しても対等ではなく、下からものを言わなくてはいけない
③ 一回飲み込んでから言葉を言わなくてはいけない。要は辛抱して自分を殺すこと(P20)
などと書かれています。
まあこれは今も同じで、選挙中は秘書も含めスタッフ全員が心得ておくべきことです。それまで高級官僚や社長だった方が立候補する場合は、奥様も戸惑うのでしょうね。優雅な生活から一転、ただひたすら頭を下げる日々を送るうちに「電柱や郵便ポストにも頭を下げるようになってしまった方」もいるそうで、お気の毒ですけど、おもしろいですね。
どんなに尽くしたところで「候補者の代わりはないが、夫人の代わりはいくらもある」(P150)なんて言われてしまうこともあったようです。これは心が壊れるレベルですが、今でも秘書に対して同じようなことを言う国会議員がいることは書いておきますね。
同書に登場する「妻たち」に共通しているのは、全員が夫を尊敬して、愛していることです。活字からひしひしと伝わってくるんです。
だいぶ前ですが、神澤の秘書仲間が結婚披露宴で「夫の志は、私の志です。○○(新郎の名前)を国会に押し上げるために、私は支えて参ります」とスピーチしたのを思い出しました。その時は「ここまで惚れられるってすごいなー」と思っただけでしたが、同書を読んで、きっとみんなが同じ気持ちなのだと思いました。
ちなみに、昔は急逝した夫の代わりに出馬するようなことは考えられなかったですね。21世紀になってからは珍しくなくなりました。現在の永岡桂子文科相は2005年に自殺したご主人・洋治氏の後継者として出馬されましたが、この時はかなり話題になりました。
その後も、2012年には故中川昭一元財務大臣の地盤を郁子夫人が引き継ぎ、2017年には政治資金規正法で有罪判決を受けて公民権停止中だった石川知裕元衆議院議員の香織夫人が立候補、当選しています。お二人とも同じ北海道11区(十勝)なのがすごいですよね。
あと、亡くなられた安倍晋三元総理の昭恵夫人も出馬を熱望されていましたが、固辞されたようです。
「代わり」が悪いとはいいませんが、この国をよくしようと考える女性がもっと増えて、政治家や実業家を目指してほしいです。そのためには結婚や出産、育児でのキャリア維持のための制度も必要ですし、何よりも教育ですよね。
誰も「女性だけど」「女性なのに」「女性のくせに」という言葉を使わない、真の平等な社会を目指すために、学校や家庭でもっと考える機会がほしいです。1972年に「勤労婦人福祉法」ができて、86年に男女雇用機会均等法(「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」)と改称されてから半世紀余り。永田町ではまだまだ「女性」は居場所がないです。思えばトイレも「男女別」になったのは最近なんですが、その話はまた。
同じことをしても「女性なのにすごいね」と言われたり、「あの事務所には女性だけど、政策ができる人がいるんだよ」と言われたり、「女だけどスゴイ」って、がっかりします。モチベーションが上がる環境ではありません。また、ボスの落選で失職しても、男性秘書なら「大変だね。早く次の事務所が決まるといいね」といわれますが、既婚女性は「旦那さんに食べさせてもらえばいい」と言われてしまいます。
失職したら保育園も即退園を迫られますし、新年度の申し込み時に失職中だとそもそも申し込めません。急な退園は子どもも混乱しますから、必死に次の事務所を探すことになります。
立法府がこんな状況ですから、少子化が進むのもしょうがないのですが、それでも私たち国会女子は諦めずにがんばっています。これからもどうぞよろしくお願いします。
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