芸人の解散が増える一方で輝くマシンガンズ滝沢の「ゴミ清掃員芸人」という生き方
#芸人 #マシンガンズ #檜山豊
このコラムを見ている人の多くはお笑いが好きだったり、お笑いに興味がある人だと思う。そしてそんな人達は多かれ少なかれSNSで芸人やお笑い関係の何かをフォローし情報を入手していると思うのだが、僕もその一人であり、僕自身が元芸人ということもあって逆に芸人さんにフォローされることもあり、メジャーなニュースから若手芸人のライブシーンのこじんまりしたニュースまで、多種多様なお笑い情報が日々提供されている。そんな多種多様なお笑い情報の中で最近多いのは「解散報告」だ。
「え? そこまで多いの?」とお思いの方もいるかもしれないが、ネットニュースになるような解散は思っているよりもメジャーな芸人のみに与えられたものであり、まだまだライブシーンでしか活動していない芸人たちの解散はとんでもなく多い。僕の体感だが、少なくとも月に1組はTwitterなどで解散報告をしているのではないだろうか。
本来ならとても稀な「解散」という悲しい報告が、いつの間にか珍しいものではなく、知らない若手が解散するなんて日常茶飯事になってしまい、画面のスクロールを止めることもなく、瞬時に画面上から消えていき、惜しまれることもなく、あっという間に忘れ去られてしまうのだ。
もちろん昔に比べて芸人の数も増えており、その分解散する数も増えているということなのだろうが、こんなに多くの芸人が解散し、再結成し、また解散し、そして違うコンビとユニットを組み、また解散するというループを繰り返しているのを見ると、「コンビ」イコール「運命共同体」という図式は成り立たなくなってきたのかもしれない。
僕が芸人をしていた10年以上前は、今ほど簡単に解散を口にすることが出来ず、よっぽどの事情でない限り、どうやって問題を解決し解散しないようにするかということを優先的に考え、解散しないようにするのが当たり前だった。そのせいか、僕ら世代の芸人は今も何らかの形で芸人を続けていたり、ある程度ネットニュースになったりする。このネットニュースになるというのが、辞める芸人にとって自分が頑張ってきた証のような気がして、少し嬉しい出来事なのだ。
もちろん若手の芸人ではなく、長年連れ添ったメジャーな芸人がいろいろな事情で解散するパターンもある。ここ数年で最もメジャーな芸人の解散と言えば「雨上がり決死隊」さんではないだろうか。宮迫さんが所属していた吉本興業との契約が解消され、蛍原さんひとりで番組を継続し、その間に宮迫さんがYoutubeチャンネルを開設。宮迫さんの行動が蛍原さんが思い描いていた雨上がり決死隊の再起計画とズレが生じてしまい、結果的に解散する運びとなった。
そんな宮迫さんが、自身の公式Youtubeチャンネルで配信している「宮迫博之のサコるニュース」という番組内で雨上がり決死隊について触れる瞬間があったのだ。
あらゆる質問やリクエストに対して即座に文章で答える人工知能「ChatGPT」の話題になり、ジャーナリストの丸山ゴンザレスさんが宮迫さんに対し「新しい相方になるかもしれませんよ。掛け合いが出来るくらいの性能になるかもしれないし……」と話すと、宮迫さんは「新しい相方なんてとんでもないです。また一緒にってことがあるかもしれないんで」とボケの一環として発言したのだが、これは紛れもなく本心で、宮迫さんはいまだに蛍原さんと一緒に舞台に立ちたいと願っているのを感じることが出来た。
そう思われている蛍原さんもテレビ朝日の長寿番組「徹子の部屋」に解散後、初めて一人で出演した際に「雨上がり決死隊」の話題に触れており、蛍原さんは、32年にわたって活動してきた「雨上がり決死隊」が解散したときは芸人を辞めようとまで考えていたらしく、それを思いとどまらせてくれたのは結婚して19年になる奥さんを始めとする周りの人達の支えがあったからだと当時の心境を告白した。
また一緒にやりたいという宮迫さんと、解散によってできた傷を周りに助けてもらったという蛍原さんはとても対照的で、「雨上がり決死隊」が再結成するにはもう少し時間がかかりそうだ。
雨上がりさんと言えばテレビ朝日で放送されている「アメトーーク!」が頭に浮かぶが、皮肉なことにそのアメトーークによって芸人としての命を長らえた人たちは山ほどいる。本来ならテレビに出演する機会をなかなか与えられないような芸人たちが「○○芸人」として出演させてもらうことにより、芸人として正ルートではないが、別のチャンスを手に入れることが出来て、芸人としてのセカンドルートを歩み始めることが出来るのだ。
この「〇〇芸人」は番組の枠を越え、番組とは関係ない所で職業×芸人、つまりハイブリッド芸人として活躍する芸人が増えてきている。
ここ最近では「マシンガンズ」の滝沢秀一さんが「ゴミ清掃員芸人」として注目されおり、漫才師としてではない芸人セカンドライフを歩いている。滝沢さんは今から11年ほど前に奥様の妊娠をきっかけに、収入の支えにするためゴミ収集会社に就職。お笑い芸人として売れるのか? と疑問を持ち、やりたくもない仕事をしているうちに精神が持たないと思い、どうせなら楽しく仕事をしようと発想の転換をした滝沢さん。そのときに「日本一の清掃員になろう」と決めたそうだ。
そしてゴミ清掃員として現場の様子をSNSで発信したり、ゴミ関連のツイートをしているうちに気が付くとTwitterのフォロワーは16万人になった。愚直に芸人をしていた頃よりも注目を浴びることになったのだ。そして今ではゴミ関連の著書を出版したり、環境庁から「サステナビリティ広報大使」にも任命され、講演会やイベントなど多忙な毎日を過ごしているそうだ。芸人だけでは叶わなかった夢に、発想を変えることで近づくことが出来たのだ。
簡単に解散などせず、芸人としてもがき苦しんだ結果、新境地に辿り着いた滝沢さん。僕ら世代で辞めていない芸人はいつか花開くと証明し、芸人たちの指針になってくれた。すぐに解散を口に出す芸人たちには、ぜひお手本にしてほしい。
芸人だけで食べていくのがカッコイイとされていた時代は終わった。何かに縋り付いてでも芸人を続けているのがカッコイイ。僕はそう思う。
テレビに出ている芸人を警戒し拒絶?面白いのに大衆ウケしない「地下芸人」とは
お笑いライブには何となくの区分けのようなものがあり、地下芸人というジャンルがある。はたして地下芸人とは何か? お笑い芸人と地下芸人は何が違うのか。地下芸人とは、人によ...サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事