『ベイビーわるきゅーれ2』“目の前の貴様を葬る”って気持ちだけで戦わせたかった
#映画 #ショウムライター
“スターのアクション”で、まひろは「ドシっと安定」
阪元:個人的には「続編で2人が帰ってきた!」みたいな気持ちはほんまに全然なくて。「1」の撮影が1週間だったので、撮影8日目ぐらいのテンションでヌルッと「2」の撮影が始まったのも良かったです。少なくとも監督は代表作の続編だからって変に力が入りすぎないほうがいいような気がしますね。
庄村:現場の空気感もそんな感じだったんですか? 2人の自宅の内装と衣装もパワーアップしていて、「女子のピチのポロシャツ尊いな」と思いましたが。
阪元:「1」のときから、スタッフみんな「もっとやれたなー」みたいなことはけっこう言っていて。前作のスタッフがほぼ全員「2」にも参加してくれて、「1」ではまだやりきってないと思っていただけに「2」に対する周りの熱量は高かったかもしれません。そこは集団制作の魅力で本当に助けられました。
――前作との比較だとアクションはどう組み立てていきましたか? 例えばまひろ役が本格的な演技初挑戦となった、スタントパフォーマーの伊澤彩織さんは、『ジョン・ウィック:チャプター4』にも参加されたとか……。
阪元:「1」は究極のリアリティ路線で女性が大の男たちに勝つアクションを突き詰めたんですが、どちらかというと今回はアクションスターのアクション、「伊澤彩織のアクションをスクリーンで再び」みたいな感覚ですね。伊澤さんは「バスター・キートンやジャッキー・チェンみたいな、モノを使った気持ちいいリズムのアクションをやりたい」と、ずっと言っていて。
庄村:まさに銀行でのアクションシーンですね。
阪元:近年はリアル路線のアクション作品が主流ですが、個人的にもプロフェッショナル化が進んで玄人にしか楽しめない格闘技みたいなアクションばかりになるのはイヤで。もう少し誰が見ても気軽に楽しめるアクションが増えたらなと思っています。まあ、モノを使ったアクションが一番難しいらしいんですけどね。
庄村:コロナ禍のご自身をまひろというキャラに投影させたというお話でしたが、ちさとのキャラはどうできあがっていったんでしょうか?
阪元:なかなか非現実的で、演じるのが難しいキャラなんですよね。僕は殺し屋って死線をくぐり抜けすぎて根っこの部分が冷め切った冷血な存在と考えているんですが、「1」では彼女のそうした一面をそこまで伝えきれなかった気がしていて。「2」で髙石さんは「悪い人に見えないか心配」と言って悩んでいましたけど。まあ殺し屋なので。「少年漫画の主人公みたくならないように」とは言っていました。
庄村:一見、感情がわかりやすくてコミュ力も高そうだけどその実、腹の底が一切さらえないキャラです。『ベビわる』観ていて、ちさと役の髙石さんの表情筋、どうなっているのかと。
阪元:今回の作品で一番めちゃくちゃしているのはちさとですね。明るくてかわいいけど、殺し屋の非情さを併せ持つ、そのバランスが難しいところです。「1」から一番変わったのはまひろで、ドシっと安定していましたね。やっぱり彼女の物語は「1」で一旦終わっているのかなと思います。
庄村:頑なにバンドTを着ているまひろの設定は、どこからきたんですか。
阪元:「1」の打ち合わせのときに、スタイリストの入山浩章さんにキャラのイメージを伝えていたら、「リュックにラバーバンドを大量につけている、みたいな子?」と提案されて。なので、もともとバンド好きみたいな設定があったわけではないんですが、バンドTを着ている登場人物って日本映画ではあまりいないし、反響が大きかったです。「2」に向けて入山さんはまひろのプレイリストまでつくっていました。
庄村:追っている音楽の界隈が、よく伝わるラインナップでした。「忘れらんねえよ」のTシャツに関しては、「これ気に入っていたのにな」ってセリフも「1」で出てきましたね。
阪元:あのセリフは確かアドリブですね。伊澤さんって、けっこうおもしろいアドリブを動物的に入れてくれるんですよ。
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