さまぁ~ず三村とヒロミの例だけじゃない…お笑い芸人「共演NG」の裏事情
#ヒロミ #さまぁ~ず #檜山豊
先月こんなニュースがあった。NHK放送局の男性アナウンサーが、20代女性アナウンサーのマンションの敷地内に侵入したとして、邸宅侵入の疑いで警視庁に逮捕された。
なぜ、こんなお笑いとは関係ないニュースから今回のコラムをスタートさせたのかというと、この逮捕されたアナウンサーと、とある芸人が共演したことがあるという記事を読んだからだ。そのとある芸人とは「M-1グランプリ」の審査員も務める、ナイツの「塙宣之」さんだ。
TBSラジオで放送されている「土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送」へ出演した際に、このアナウンサーと共演したことがあると語った。名古屋のNHKの相撲の番組で一緒になったことがあるらしく、ものすごく真面目なアナウンサーだったと。全然ボケを拾ってくれなくてやり辛かったと吐露した。
このアナウンサーの場合、“真面目”過ぎてお笑い芸人としてやり辛かったという話なので、そこまで問題があったというわけではないが、芸能界ではちょっとしたきっかけで共演しづらくなり、共演NGとなることがある。
今は和解しているので笑い話なっているが、さまぁ~ずの三村さんとヒロミさんなどは有名だ。15年ほど前に名古屋でのロケ番組で共演した際にヒロミさんが三村さんに対して「リアクションが面白くない」「なんでお前が来たの?」などと言われ、三村さんが傷ついてしまい、共演NGにしたと「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系)に三村さんが出演した際に告白し話題になった。
あとは「平成ノブシコブシ」の吉村さんと「ウーマンラッシュアワー」の村本さんも有名なところだ。いろいろ細かい要因はあるのだが、概要を言うと、後輩の村本さんが吉村さんの給料を暴露するというボケを連発していた時期があったり、番組内で村本さんが吉村さんに対して余計なことや嘘ばかりついていたことで、吉村さんの怒りが爆発してしまい、村本さんの首を掴んでしまったそうだ。
芸人としての面白さや芸風の相違がぶつかり合う原因になってしまったのだろう。ちなみに村本さんに関しては吉村さんだけではなく「南海キャンディーズ」の山里さんにも一方的に絶交されており、芸風である毒舌キャラがキャラではなく本当の性格なのではと噂されていた。
ちなみにコントユニット「シティボーイズ」の大竹まことさんが日本テレビで放送されていた「タモリのいたずら大全集」というバラエティ番組において、山瀬まみさんにちょっかいを出し過ぎて泣かせてしまい、その後山瀬さんサイドから共演NGを出されたそうだが、そのシーンをリアルタイムで見ていた僕は大竹さんに対し「なんて嫌な人なんだ」と思ったことを今でも覚えている。
このように共演NGになる原因は大きなものから些細なものまで様々あり、NGにされている側が気づいていないというパターンもあるぐらいだ。しかし、NGを出す側が共通しているのは、その人に対して嫌悪感や恐怖感を抱いているという点だ。
僕も芸人をしていた頃にある方に恐怖感を抱いたことがあった。全国放送の公開収録番組のレギュラーをやらせてもらっていた時代に、その出来事は起きた。毎週違うゲストが出演する番組で、ゲストのほとんどがメジャーなお笑い芸人や演歌歌手など地方のお客さんでもわかる芸能人だった。
僕はその番組では「ツッコミ」という役割をさせてもらっていた為、どれだけ先輩芸人でも、大御所演歌歌手でも、状況によっては強めにつっこむことがあったので、ゲストの方に挨拶するときに「ツッコミなので失礼な発言をしてしまうことがあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします」と前置きをするよう心掛けていた。ほとんどの方は「はいはい。よろしくね」と、了承してくださるのだが、とある演歌歌手は違う反応を見せた。
どちらかと言えば強面で、実際に怖いとも噂されている方だったので、いつもより丁寧に挨拶をしたはずだったのだが、その演歌歌手の方は上記の「失礼な発言をしてしまうことがあるかもしれませんが、よろしくお願いします」という言葉に対して引っ掛かりを見せ、僕にこう言った。
「失礼だと思うならするなよ」と。
僕は一瞬で理解することが出来ず、思わず「え?」と言ってしまった。するとその方は強面をより強面にし、「失礼だと思うならするんじゃねぇよ」と先ほどより滑舌よく、聞き取りやすく怖い事を言った。
確かにそうだ。失礼だと思うならしない方が良い。当然だ。いや待て待て。番組中にボケがあった場合、ツッコミを入れないなんてあり得ないし、そういう時にツッコミを入れるのが僕が番組に任されている仕事なのだ。そもそもこの発言はトータル的に言葉のあやで、失礼なんて思っているわけがない。
いろいろな感情が頭を巡ったが、僕は「わ、わかりました」と、恐怖に震え慄きながらその場を後にした。
楽屋に帰ってから、本番までずっとその言葉が頭から離れず、一体どうすべきなのかをひたすら考えていた。そして出た結論は「失礼じゃないと思えばつっこんで良いってことか」だった。後で怒られてもいいから、とりあえず全力でやろうという考えに達し、本番を迎えた。
心のどこかで、なるべくツッコミを入れないで済んだらいいなぁと思っていたのだが、その演歌歌手の方はこれでもかというくらいボケてきたのだ。こうなったらやるしかない。いつもより強めで、時には「黙れ」などと失礼極まりないほどのツッコミを入れまくり、とりあえず会場は笑いに包まれた。
絶対怒られると覚悟しながら、その演歌歌手へ「お疲れ様でした」と挨拶すると、僕を見て一言「面白かったよ」と言ってくださったのだ。その瞬間、全身の力が抜けてしまい、これ以上ないほどの安堵感に包まれた。
「失礼だと思うならするなよ」という言葉は、「失礼なんていうな。自分の仕事に誇りを持て」という思いが詰まった発言だったのか、はたまたお客さんにウケたからオッケーだったのか、その方の真意は今もわからないままだが、僕が芸人時代に経験した一番の恐怖感だったのは間違いない。
もしウケなかったと想像したらぞっとする。そして、ウケなかったら僕サイドからこの演歌歌手の方に共演NGを出していたはずだ。その他にもタイミングが違ったら共演NGにしていた人は何人かいるが、何とかNGを出さずに平和に芸人時代を過ごすことが出来た。
芸能人は誹謗中傷に対して「有名税」とか「多少は我慢しろ」と言われがちな職業だが、その分共演者に対しては些細なことで我慢できなくなる、とても繊細で可愛らしい愛すべきワガママたちの集まり。そりゃ目が離せなくなるわけだ。
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