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『インフォーマ』に登場した尼崎のパワースポット

『インフォーマ』第9話
『インフォーマ』第9話より ©カンテレ

Netflxでは、今夜いよいよ最終回が配信されるドラマ『インフォーマ』。オールロケで撮影された同作には、さまざまな印象的な場所が登場するが、第一話で登場した尼崎にある「あの場所」は知る人ぞ知るパワースポットであり、ドラマ登場をきっかけに「聖地巡礼」として訪れるファンも増えているという――尼崎出身の『インフォーマ』原作者、沖田臥竜氏による、同作を味わうための恒例エッセイ。今回は、「何もない」地元への特別な想いを語る。

インフォーマを観て、ウチに来てくれたよ!

 私の地元、兵庫県尼崎は本当に何もない。治安も特段、悪くなければ、かといって都会というわけでもなく、いうならば新旧が入り混じったような街だ。もう一度言うが、残念なくらい治安が悪くない。お笑い界の頂点に君臨する尼崎出身のダウンタウンが、少しガラが悪いようなことをウリにしていた節があったが、すまない。まあまあ治安が良いほうである。

 だが、対して何もない。あるのは拘置所と競馬場と競艇場くらいではないだろうか。そんなことはないと言われるかも知れないが、隣町の西宮には甲子園球場があるし、伊丹には空港だってある。宝塚には言うまでもなく宝塚歌劇団があるし、今では閉鎖してしまったが、その昔、カップルでそこのメリーゴーランドに乗ると必ず破局するといわれていた宝塚ファミリーランドがあった。

 ただ、何もない尼崎市にも実はパワースポットが存在するのだ。それがインフォーマの第一話のロケ地になった焼肉屋「光(みつ)」である。

 「光」の店内で、木原慶次郎が三島寛治に向けてホルマンを投げつけたシーンがあったが、ちょうどあの場所には関係者が参拝できる神棚のようなものがあって、そこには数々のプロ野球選手が訪れ、手を合わせることで、名誉ある記録を達成してきたのである。その他にも「光」を経営しているご夫婦のお母さんに握手してもらったり、ハグしてもらたっりすると、運気が上がると言われているのだ。

「光」は、尼崎でも塚口というところにあって、塚口こそが私が小中学を過ごした場所である。今でもそんな塚口には、30~40年の付き合いの同級生や後輩が何人もいて、私が塚口を訪れると、昔と変わらず温かく迎えてくれる居心地の良い場所だ。私は悪ガキなどというカテゴリくらいでは決して収まらない少年だったのだが、そんな私の故郷に、ドラマ『インフォーマ』を観てくれた視聴者の人たちが、インフォーマのロケ地巡りで、遠方からやってきてくれたりしているのだ。

「この前もインフォーマを観て、ウチに来てくれたよ! インフォーマ凄い評判ええで!」

 私が「光」を訪れると、経営しているご夫婦からそう言っていただいたり、居合わせたお客さんに写真を求められたりするのだが、それは当たり前だが、私ひとりの力でそうなったわけではない。私の出身地ということで、みんなが尼崎をロケ地として使ってくれたからだ。ただ、度を超えた悪ガキがそんなことを言ってもらえるのである。もちろん嬉しいに決まっているのだ。

焼き肉「光」で撮影された第1話のシーン

 私はいつも頂点を見ている。一生かけても、尼崎出身の頂点・ダウンタウンを超えることはないだろう。だけど、バカだった私でも、物書きになるために20年決して諦めずに続けてきたのだから、尼崎という土地に限っていえば、一瞬でもダウンタウンにだって負けられないという意地みたいなものはある。地元愛なんてさらさらないし、地域に恩返ししたいとかいう思いはない。だが、私の生まれ育った場所は、紛れもなく尼崎で、そこで私は青春時代を過ごしてきたのも紛れもない事実だ。だから私は、尼崎にこだわる思いを強く持っている。

 そんな場所で作品を作るために、『インフォーマ』だけでなく、『ムショぼけ』にしても、スタッフや俳優部の人たちが撮影のために来てくれたのだ。凱旋というには言い過ぎかもしれないが、人ができないことをやっているという自負はやはりあって、尼崎では私は負けられないのだ。それはたとえ、ダウンタウンであったとしてもだ。

『インフォーマ』は今週、カンテレでは第9話、Netflixでは最終回を迎える。あくまで終わりは始まりでしかない。また、いつか生まれ育った街を舞台に、作品を作りに戻って来れたらなと考えている。

 そして、Netflixでの最終回配信が終われば、いよいよ世界配信が始まる。

 どうしようもないクソガキだった。どうしようもないクソガキが、『インフォーマ』と共に世界へと飛び立つのだ。

 やってやろうではないか。どうせやるならば、頂点を目指してやろうではないか。そんな野望を胸に秘めながら、私はまたペンを走らせて、またいろいろな仕掛けを考えている。

(文=沖田臥竜/作家)


小説『インフォーマ』

沖田臥竜/サイゾー文芸/税込1320円
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週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉パンデミック、暴力団抗争、永田町の権力闘争、未解決殺人事件…実在の事件や出来事を織り交ぜ生まれた「リアル・フィクション」の決定版!


ドラマ『インフォーマ』
毎週木曜深夜0時25分~0時55分放送中(関西ローカル)
見逃し配信:カンテレドーガ・TVer
Netflixでは地上波に先駆けて先行配信中


ドラマ『インフォーマ』予告映像

桐谷健太演じる主人公で、裏社会・政治・芸能など、あらゆる情報に精通するカリスマ的情報屋“インフォーマ”木原慶次郎と、佐野玲於(GENERATIONS)演じる週刊誌「タイムズ」記者・三島寛治が、警察・ヤクザ・裏社会の住人たちを巻き込み謎の連続殺人事件を追うクライムサスペンス。事件の背後に存在する謎の集団のリーダーで、木原の因縁の相手となる男を、事務所移籍後初のドラマ出演となる森田剛が演じる。

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/03/16 10:49
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