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『インフォーマ』というひとつのプロジェクトと“熱い夏”

©カンテレ

今週、先行配信のNetflixではいよいよ最終回を迎えるドラマ『インフォーマ』。前回第9話(カンテレでは今週放送!)では木原と冴木の過去が浮き彫りになり、さらなる衝撃的な展開が……クライマックスに向け、ボルテージは高まる一方だが、それは撮影がスタートした昨年夏、いやそれ以前から続いてきた「ひとつのプロジェクト」の終焉が近づいていることも意味していた――原作者・沖田臥竜氏による恒例エッセイもラストスパート。『インフォーマ』をめぐる過去、現在、そして、未来を語る。

撮影を避けたかった「夏」

 “熱かった夏”が終わろうとしている。

 原作、監修を務めたドラマ『ムショぼけ』の撮影中のことだった。一昨年の6月。ちょうど後にさまざまなドラマのロケ地として使用されるようになる、尼崎の三和市場でのこと。藤井道人監督には『情熱大陸』の取材が密着していて、そんな撮影の合間、『インフォーマ』の撮影時期をいつにするか2人で話し合っていた。まだ誰も『インフォーマ』というタイトルすら知らないとき。私が『インフォーマ』の叩き台を起こし、それを一話一話、藤井監督がチェックすることで初稿となる原稿を書き終え、同時に藤井監督が企画書を作ったくらいの段階だ。放送先も配信先も何も決まっていなかった。それでも「来年のいつから撮影するか」をざっくり話し合っていた。

 もちろん、どのような座組で制作していくかも決まっておらず、ドラマではなく、まだ映画として制作することを考えていた頃だ。ただ、撮影時期について、暑い夏は避けようということは意見が一致していたのに、結果的には2022年夏に始まったのだった。人生とは、だからおもしろい。そして、“熱い夏”が始まったのだった。

 作品に『インフォーマ』という名前をつけて、2年が過ぎていった。情報を題材にした物語を作ろうとなったとき、今の反響を予想できたかというと、「わからなかった」というのが正直な答えだ。ただ、地元・尼崎で『ムショぼけ』を撮り、その尼崎での反響を受けて、私なりに「これはいける」という手応えはあった。『インフォーマ』のロケハンを、まず私が尼崎でひとりでやり始めたとき、商店街を汗だくで歩きながら写真を撮っていると、「ムショぼけの沖田さんですか ⁈」と声をかけられることがあった。

 私は、ぼけてはいないけれども、確かに『ムショぼけ』を書いた沖田であることは間違いないので、内心クスリと笑いながら、曖昧な表情を浮かべて、「えっへへへ…」とその場を立ち去った。他にも「ムショぼけ見てますよ!」と言われるたびに、私はなんとも言えない、薄ら笑いを浮かべていたと思う。

 世の中からの反響を呼ばなければ、それは自己満足でしかない。多くの人がビジネスとして作品にかかわる以上、商業的な評価が必要だからだ。だが、私個人はあまりそこに偏って、とらわれないようにしている。それよりも身近な人たちからの喜ぶ声、「すごいやん!」「頑張ってるね!」「おもしろかったよ!」という声が直接届くのが何よりも嬉しいのだ。

 なぜならば、そうした人々は、私の苦しいときや辛いときを知っているからだ。作品を作り、それを世に出すことで、そういう声が届けられたとき、報われるのである。

 同時にその声があれば、世の中に出ても勝負できるという確信を持てるのだ。身近な人たちから評価されずして、全国も世界もない。評価とはまず身近な人たちから得るものであって、まずは自分の周囲に喜びや感動を与えなければ、自分の立っている場所が見えなくなってくる。

©カンテレ

 私は今、情報などを扱う会社も経営しているし、ずっと監修で入っている連続ドラマの制作も進行中であり、世界史に関する本も一年がかりで作っている。他にも『インフォーマ』のマンガ化の仕事にも携わっているし、新しく届いている案件もあったりする。連載もあるし、休みというか寝る暇なんてないくらい東奔西走している。さらに、月にわずかであったとしても、文筆や情報・メディア関係と異なる仕事を、作家になる前からずっと続けている。

 たまに「なんでそんなのをしてるの?」と聞かれることがあるが、おそらく継続させることへのこだわりと、初心を忘れたくないという気持ちがあるからではないかと思う。

 1日1日を考えたとき、疲れ果ててボロボロになっても、休もうとはなかなかならない。そこまでやってもまだ足りないと思うのだ。そうした日々の積み重ねが、自らチャンスを作り出したり、そこで結果を出したりすることに繋がるのではないだろうか。

『インフォーマ』は小説、ドラマ、マンガと展開される。それらをまとめて、一つのコンテンツとさえ言えるだろうし、まだまだ仕掛けていきたいと思っている。『ムショぼけ』だって、これで終わらせるつもりはない。もちろん容易なことではない。だけど往生際悪く、チャレンジしていくはずだ。

 最終回が近づいてきた。それに連れ、『インフォーマ』の立ち上げからのことを走馬灯のようによく思い出す。一抹の寂しさはもちろんあるが、あのときみんなで作り上げたものが、今、こうして形となり、観てくれている人、読んでくれる人の何かになっていると思うと、終わりは始まりでしかないと考えている。

 作り手のものだけでなく、みんなの『インフォーマ』になっていく瞬間に感じる喜びこそが、「もう書くん嫌じゃ!」とか「こんなことを地道にやっても意味ないんちゃうんか!」という気持ちを凌駕していってくれる。

(文=沖田臥竜/作家)

小説『インフォーマ』
沖田臥竜/サイゾー文芸/税込1320円
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週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉パンデミック、暴力団抗争、永田町の権力闘争、未解決殺人事件…実在の事件や出来事を織り交ぜ生まれた「リアル・フィクション」の決定版!


ドラマ『インフォーマ』
毎週木曜深夜0時25分~0時55分放送中(関西ローカル)
見逃し配信:カンテレドーガ・TVer
Netflixでは地上波に先駆けて先行配信中


ドラマ『インフォーマ』予告映像

桐谷健太演じる主人公で、裏社会・政治・芸能など、あらゆる情報に精通するカリスマ的情報屋“インフォーマ”木原慶次郎と、佐野玲於(GENERATIONS)演じる週刊誌「タイムズ」記者・三島寛治が、警察・ヤクザ・裏社会の住人たちを巻き込み謎の連続殺人事件を追うクライムサスペンス。事件の背後に存在する謎の集団のリーダーで、木原の因縁の相手となる男を、事務所移籍後初のドラマ出演となる森田剛が演じる。

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/03/16 00:07
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