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『インフォーマ』で歴史を変えにきた強者たち

©カンテレ

さまざまな人物の個性や人生が交差していくドラマ『インフォーマ』も最終回に向け、熱量が上がり続けていく。特に主人公・木原と敵役・冴木の関係性がどのようにヒートアップし、どのように収斂していくのかは今後の注目ポイントだろう。最後まで息は抜けない。
そんな『インフォーマ』が生まれるきっかけになった空間があるという。原作者で監修・沖田臥竜氏がいつも物語を考えているというその場所では今後、どんな作品が誕生していくのか――。

10年経っても思い出すことができる2022年の夏

 新幹線に乗っている時、乗車している人々をじっと見るでもなく、なんとなく眺めながら、それぞれの営みを想像することがある。世代や年恰好、服装などを見て、新幹線に乗っている目的を、旅行であったり、仕事であったりと想像するのだ。彼らとは辿り着く駅は同じでも、それから先にはそれぞれの生活がある。ただ一緒の新幹線の号車に乗っただけで、お互いが今後の人生においてコミットすることはない。

 それは、その時、その場所にしか存在しない一種の特別な空間なのかもしれない。私はこの空間でいつも物語を考えている。

 その物語のひとつ、『インフォーマ』をどれだけの人が認識してくれただろうか。多分、10年経っても思い出すことができる2022年の夏だった。主役を演じ終えたあと「覚醒」という言葉を使った桐谷健太さん。「サノラー」という存在をまじまじと教えてくれた佐野玲於さん。その空間で、漠然と脳裏に浮かべた物語が形になった瞬間の喜びは、何ものにも変え難く、「頑張ってよかったな…」と自分自身でひとり噛み締めるのだ。ただそれは一瞬で、すぐに次に向かって走り始めなければならない。

 『インフォーマ』がずっと続く物語になれば、私はもっと自分自身に「頑張ったな!」と言えるだろうか。私のことだ。多分ベタ褒めしていることだろう。

 私は、もともと自分の不出来な人生を挽回するために筆を握った。それが月日の流れとともに、そんなことはどうでも良くなって、自分が作品を作ることで、とにかく好きな人間、つまり自分の生活にコミットする大切な人たちの喜ぶ顔が見たいと考えるようになった。

巨漢のキムを跳ね飛ばすシーンで使われた車。衝撃と本気度が伝わってくる。

 少しタブーをぶち込んでやると、昨年のクリスマスイブに突如公開したYouTubeドラマは、そこから生まれたのだった。

 「先生は、人の喜ぶ顔が好きだと言われてましたよね⁈」

 それはそうだろう。人が怒っている顔よりも、喜んだり、楽しんだりしてる顔を見るほうが誰でも好きに決まっている。俳優の木下ほうかにそう言われ、未完だが、彼の主演で私が脚本や監督を務めて制作したのが、Yahoo!ニュースでも取り上げられたYouTubeドラマ『死に体 Dead body』だった。

 人間は、立場によってその内面が形成される部分が強いが、無論、私はそういった枠組みがない。本人の事情なんてもちろん知らない。社会的に悪いことをしたのならば、例えば芸能界から干されるのも当たり前の話だろう。そこは庇い立てするつもりはさらさらない。だが、困っている人間がいるのに、その人に手を差し伸べるか否かを、世間的な反応に囚われて決めるような人間にはなりたくはないと思っている。いや、なってはならないと考えているといったほうが正しいだろう。

 私が今あるのは、辛いとき、苦しいときに支えてくれた人たちがいたからで、これを私が忘れるのは、金を唸るほど持ったときだな…とは、ウソである。決して忘れてはならないのだ。

 果たしてだ。人に親切にすることに、たいそうな理由がいるだろうか。私はいらないと考えていて、結果的に、それが私の人脈を拡大させていっているのではないだろうか。本当、文芸を書いてみろ、儲かんねえぞ。だったらだ。大して儲からないなら、コソコソしてせこく生きるよりも、自分の周囲だけでよい、ひとりだってかまいやしない。

「あのときの沖田さん、かっこ良かったっすよ…」

 と言われたほうが良いのではないだろうか。

 便利になった分、窮屈になるのは世の中の常で、それでも頑なに自分を通す人間に人は魅了される。それが『インフォーマ』の主人公の木原慶次郎で、その生き様に惹きつけられているのが、三島寛治たちである。ただ、冴木亮平にも冴木の今に至るまでの人生が確かにあって、それは岡林もキムも同じだ。それぞれの営みがある。

 私はいつも新幹線で、たまたま一瞬、乗り合わせた人々の表情をみながら、その人、その人に勝手な空想をはめ込み、いつも物語を作り続けているのである。

(文=沖田臥竜/作家)

小説『インフォーマ』
沖田臥竜/サイゾー文芸/税込1320円
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週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉パンデミック、暴力団抗争、永田町の権力闘争、未解決殺人事件…実在の事件や出来事を織り交ぜ生まれた「リアル・フィクション」の決定版!


ドラマ『インフォーマ』
毎週木曜深夜0時25分~0時55分放送中(関西ローカル)
見逃し配信:カンテレドーガ・TVer
Netflixでは地上波に先駆けて先行配信中


ドラマ『インフォーマ』予告映像

桐谷健太演じる主人公で、裏社会・政治・芸能など、あらゆる情報に精通するカリスマ的情報屋“インフォーマ”木原慶次郎と、佐野玲於(GENERATIONS)演じる週刊誌「タイムズ」記者・三島寛治が、警察・ヤクザ・裏社会の住人たちを巻き込み謎の連続殺人事件を追うクライムサスペンス。事件の背後に存在する謎の集団のリーダーで、木原の因縁の相手となる男を、事務所移籍後初のドラマ出演となる森田剛が演じる。

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/03/09 16:40
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