『ぽかぽか』人間心理を逆手に取ったコーナー「お母さん大好き党」の秀逸さ
#ぽかぽか #アレのどこが面白いの?~企画倉庫管理人のエンタメ自由研究~
放送作家の深田憲作です。
「企画倉庫」というサイトを運営している私が「あの企画はどこが面白いのか?」を分析し、「面白さの正体」を突き止めるための勉強の場としてこの連載をやらせてもらっています。
今回のテーマは「フジテレビのお昼の番組『ぽかぽか』について」です。
『ぽかぽか』は今年の1月からフジテレビで放送を開始したお昼の帯番組。ハライチと神田愛花さんがMCを務め、内容はワイドショー的な情報番組ではなくバラエティ番組。昨年末まで同じ枠で放送していた『ポップUP!』は情報制作局が制作していましたが、この番組はバラエティ班が制作しているようです。
テレビ番組全般がそうですが、特に帯番組は「いつもこの時間はこの番組を見る」という視聴習慣が強くあるため、番組開始当初は数字の結果や評価がついてくるまでに時間がかかってしまいます。TBSで朝の帯番組として放送されている『ラヴィット!』も、番組開始当初は酷評されることも多かったのですが、ジリジリと評判を上げてきて、今では人気番組の仲間入りをしています。『ぽかぽか』が1~2年かけてどのような結果を出していくのか、テレビ界全体が注視しているところだと思います。
そのため、今の段階で番組自体の評価について述べることはできないのですが、私が個人的に面白いと思う企画がありましたので記事にしてみました。
それが、木曜日に放送されている『あつまれ!お母さん大好き党』というコーナー。内容を簡単に説明すると、母親のことが大好きな芸能人が登場して、どれくらい好きかをトーク。それを聞いた『お母さん大好き党』の党首であるハライチ岩井さんが判定して、入党させるかどうかを決めるというもの。
「お母さんが好き」と公言する男性を見ると面白く感じてしまうことを、私はかねてから不思議に思っていました。「マザコン」という言葉にややネガティブな響きがあるように、日本では母親を好きと言う男性はあまりいいイメージを持たれていません。「マザコン」と聞くと「親離れできていない」「弱々しい」「情けない」といった男性像をみなさん思い浮かべるはずです。これはどの時代に作られたイメージなのでしょうか。ドラマの冬彦さん(「ずっとあなたが好きだった」)の影響が大きかったのか。その前からなのか。
冷静に考えて「お母さんのことが好き」というのは、むしろ子どもとして、1人の人間としていいことなのですが、男性がそれを口に出すことは恥ずかしいことという位置づけになっています。女性が「お父さんが好き」と言うことにはそういうネガティブなイメージはありません。男女を反転させただけなのにこの違いはなんなのでしょうか。文化人類学の先生とかに聞いてみたい案件です。
この「いいことのはずなのに公言すると面白い」という不思議な構造は「お母さんが好き」を置いて、他に浮かぶものがありません。近しいところで言うと「熟女が好き」と男性が口に出すことも、なぜか面白く感じるのですが、熟女を好きなこと自体はいいこととは言えません。どちらかと言うと、少数派の趣味嗜好が面白く感じさせているような気がします。
「なぜ男が母親を好きと公言することが面白いか?」の理由は解明できないのですが、とにかく面白いのは事実です。母親を好きと言うのはいいことなわけですから、出演者は「私は何もおかしなことは言ってませんけど?」というスタンスで熱を帯びて母親への愛を語ればいい。そして、出演者が熱を帯びれば帯びるほど面白いし、笑わせようとして言っている感もあまり感じないから笑いのハードルも下がっています。だからこそ、このコーナーはずっとニヤニヤしながら見てしまいます。
そして、芸能人に「お母さんがどれだけ好きか?」をトークさせるコーナーを、政治というお堅いパッケージ・世界観でやっていることも秀逸だと思います。スーツを着て母親への愛を熱弁し、一般の方の前で街頭演説している様はなかなかに滑稽。今後、このコーナーがどんな発展をしていくのか楽しみにしています。それでは今日はこの辺で。
『ぽかぽか』ハライチ岩井の不謹慎騒動、生放送+番組MC+ボケという相当な重圧
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