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足立正生監督インタビュー

足立正生監督が描く「宗教2世」の苦悩 追い詰められし者の決起『REVOLUTION+1』

足立正生監督が描く「宗教2世」の苦悩 追い詰められし者の決起『REVOLUTION+1』の画像1
写真/石田寛

 制作が発表されるやいなや、センセーショナルな話題となったのが足立正生監督の新作映画『REVOLUTION+1』だ。2022年7月8日に起きた安倍晋三元首相射殺事件を題材に、宗教2世の苦しみを生々しく描いた問題作であり、安倍元首相の国葬に合わせて、2022年9月26日と27日に緊急上映版が都内で限定上映されたことでも世間を騒がせた。

 足立監督は1960年代~70年代に「若松プロ」で脚本提供作『犯された白衣』(67)や監督作『女学生ゲリラ』(69)などシュールなピンク映画を次々と手掛け、ドキュメンタリー映画『赤軍―P.F.L.P・世界戦争宣言』(71)を撮ったことが契機となり、パレスチナでゲリラ活動に身を投じた。元ゲリラという異色のプロフィールを持つ足立監督は、83歳になる今、何を描こうとしたのか? 3月11日(土)より始まる東京での一般公開を控え、足立監督に1時間にわたって語ってもらった。

日本に幽閉された状態の足立監督

足立正生監督が描く「宗教2世」の苦悩 追い詰められし者の決起『REVOLUTION+1』の画像2
写真/石田寛

――2022年12月末から『REVOLUTION+1』完成版の地方上映が始まり、足立監督は横浜、名古屋、大阪、福岡の上映館を精力的に回ってきました。

 いやいや、これからが本番ですよ。本当はね、舞台あいさつはあまりしたくないんだよ。配給会社に頼まれて、やってるけどさ(苦笑)。上映前のあいさつだと、あまりしゃべれないでしょ。

――足立監督は、作品を観た観客たちとガチなトークセッションをしたいわけですね。

 そうなんですよ。お客さんがね、この映画を観て、どう感じたのか聞きたいわけですよ。地方での先行上映は劇場パンフレットがまだできていなかったから、上映後にポスターにサインなどしてたんだけど、実際に宗教2世の人たちが観にきてくれて「正面から取り上げてくださって、ありがとうございます」と言われました。「あなたも、自分が言いたいことは言うようにしなさいよ」と返すと、「はい。でも、言うことがまとまらないんです」とね。他にも「もっと宗教2世の問題に突っ込んでほしかった」という声もありました。それには「すみません」と謝るしかありません。地方上映を3、4軒ほど回っただけでも、彼らが真剣に映画を観てくれ、オープンにしゃべってくれることが分かった。悩みを抱えている人は身近にいるんだ、山上徹也ひとりの問題にあらずと、ひしひしと感じています。

――2月のベルリンでの批評家週間映画祭にも正式出品されました。ベルリンでの反響はどのように聞いていますか?

 2月21日に上映され、まだ詳しい報告は聞いていませんが、上映が終わった瞬間に「ブラボー!」という歓声があがり、客席全体じゃないけどバラバラとスタンディングオベーションになったそうです。みんなじゃなくて、バラバラだったというところがすごくいいなと思いましたね(笑)。

――リモートでの質疑応答などはなかった?

 考えてはいたんです。でも、去年はミュンヘン五輪の50周年でもあって、ミュンヘン五輪をパレスチナゲリラが襲撃してから50年でもあったわけです。パレスチナゲリラに関わったヤツは、みんな反ユダヤ主義者だというレッテルを貼るキャンペーンがドイツ国内で吹き荒れていたんです。映画祭の評議会メンバーが『REVOLUTION+1』を観て、反ユダヤではないということで上映はできたんですけどね。ドイツでも炎上騒ぎになったんですが、ちゃんと上映され、バラバラとスタンディングオベーションが起きてよかった。ドイツでも、分かる人にはちゃんと分かってもらえたようです。

――足立監督としては、ベルリン映画祭に出席したかったはず。

 旅券をください(笑)。外務省にはこれまで17回申し込んだんですが、すべて断られています。最終判断するのは内閣府。僕の出張中(パレスチナ渡航)は安倍のお父さんが外相で、福田のお父さんが政権に就いていた頃には日本赤軍はハイジャック事件を起こしているからね。それは因果関係がはっきりしてる。この年齢にして、「過去の活動を反省していない。逃亡中の犯人と頻繁に連絡をとっている。したがって、日本国の財産と平和を著しく傷つける可能性がある。以上の理由から、パスポートは発給できない」と当時外相だった岸田のハンコが押された書面を渡されました。僕は日本に幽閉されている状態なんです。海外の映画祭からは他にもオファーが来ているので、主演のタモト清嵐かプロデューサーに代わりに行ってもらおうかなとは考えています。

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