狩野英孝の「野生の勘」とテレビの「成立」
#テレビ日記 #飲用てれび
狩野英孝「ゲームは終わったと思って安心しましたね。そこを狙ってたんですよ!」
『水曜日のダウンタウン』のアイマスク着脱チャレンジには、ちょっとした心理戦の要素もあった。21日の『有吉クイズ』(テレビ朝日系)でも、そんな心理戦を含んだゲームが放送されていた。
企画のタイトルは「3名様で予約しました」。4人の芸能人のうち絶品グルメが食べられるのは3人だけ。脱落する1人をゲームで決める企画だ。集められたのは田村淳(ロンドンブーツ1号2号)、石原良純、狩野英孝、齊藤京子(日向坂46)である。
高級フカヒレ料理をかけて行われたのは、グラスを使ったゲームだ。水の入った4つのグラスのうち1つに、親役のロンブー・淳が塩を入れ、メンバーの前にそれぞれ置く。3人は淳の言動から塩水を予想し、グラスを動かすことができる。が、淳はグラスにタッチできない。最終的に塩水を飲んだ1人がフカヒレを食べられない、というルールである。
いつもは淳に騙される側の狩野は、今回の企画に前のめりな様子で次のように語った。
「やっと、淳さんをギャフンと言わせられるチャンスが来たなと思って、相当いま気合が入っております」
ゲームがはじまると、石原、齊藤、狩野は淳の心理を予想しはじめる。淳はあえて自分の前に塩水を置いたのではないか。人間の心理として危ないものは自分から一番遠いところに置きたいのではないか。自分の前に置くのは王道パターンすぎるので避けるのではないか――。そんな予想を淳は演技で翻弄する。これまで番組でさまざまな人を騙してきた淳の思考を読むという構図が、心理戦をより入り組ませていく。そんななか、直感で塩水の位置を当てていく齊藤が鋭い。良純は安定の良純である。
最終的に、自分の前に塩水が来てしまった淳。このままではフカヒレが食べられない。しかし、淳が「いいよね、これで?」と余裕の念押しをすると、狩野が混乱しはじめる。グラスの位置を確定させ、これからみんなで一斉に水を飲もうかというところ、淳は誰よりも早く口元にグラスを運ぶ。それを見た狩野は、待ってましたとばかりに言う。
「最後の最後に、しっぽ出しましたね。ゲームは終わったと思って安心しましたね。そこを狙ってたんですよ!」
淳と自分のグラスを入れ替えてしまう狩野。これで塩水は狩野のもとに。淳を見破ったつもりで、自ら墓穴を掘った狩野だった。
にしても、狩野の立ち回りがさすがだ。ゲームの表面的なルールのさらに底にある、出演者で協力してテレビの企画を“成立”させるというルール。その上での見事な盛り上げ。淳が騙す人になって狩野をコントロールしているというより、狩野が騙される人になって淳をコントロールしているようにすら見える動きは見応えがあった。
よくよく振り返ってみると、「そこを狙ってたんですよ!」なんて決めゼリフも含め、ほかの芸人がやると嘘くさくなるような動きだ。けれど狩野の場合、その嘘くささがむしろ愛嬌としての面白になってしまう。それがどこまで計算されたものなのかはわからない。というか、わからないほうがいい。曖昧なままがいい。アレはそう、彼特有の“野生の勘”である。
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