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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『インフォーマ』桐谷健太「覚醒」のとき

『インフォーマ』新時代の幕開け、そして桐谷健太「覚醒」のとき

Netflixでの人気作品ランキングでは、いよいよTOP5入りした『インフォーマ』。こうした反響が起きる未来をイメージしながら、苦しいときも作品づくりに向き合ってきたというのが、『インフォーマ』の原作、監修を務めた沖田臥竜氏だ。
そんな沖田氏が『インフォーマ』やそのほかの作品を書くときに、他の作家には負けないと考えてきたという、2つのこだわりとは? さらに、近日中に主演の桐谷健太さんと沖田氏の対談が公開されることに。『インフォーマ』の制作会見で「覚醒の作品となった」と語った桐谷さんと、沖田氏は何を語るのか。乞うご期待――。

「書くスピード」と「登場人物名」へのこだわり

 騒ぐな、騒ぐな。Netflixで「インフォーマ」が第5位だと。騒ぐことではあるまい。我らは『インフォーマ』で天下を獲りにきているのだぞ。5位くらいで、なんのなんのまだまだまだまだ…。

 というのはウソで、ホッとしている。これもみなさまが時代に追いついてきてくれ…いやいや、みなさまのお陰であることと深く感謝していますである。

 さて、後半戦である。感触的に『インフォーマ』が業界内でも話題になっているのは知っている。

 だが、こんなものではない。「インフォーマ」というタイトルが浮かんだとき、これくらいの反響は予測していた。当たり前ではないか。それくらいの気概を持って書かなければ、作品をつくる意味がない。そうした未来への想像が、折れそうな気持ちを凌駕するのだ。もちろん理想通りいくかどうかはわからないし、何度、思い返しても『ムショぼけ』が、どうしてこんなもので終わったのかわからない。

 ただ私は、小説を書くとき絶対に、他の作家には負けられないと考えていることが2つある。

 ひとつは書くスピードである。確かに私より売れている小説家はゴマンといる。だが、書くスピードで考えたとき、客観的に見ても、どれだけ売れている小説家よりも、いや書き手業界全体を見渡して見ても、私は多分、誰にも負けていない。厚かましくてすまんすまんであるが、この人のスピードには追いつけないと思ってしまう書き手は存在しないのだ。

 もうひとつは、登場人物の名前だ。ここにはこだわりがあって、読者の心に残りかつ愛される名前を考える。小説家が当たり前に考えなければならないことなのだが、文章に埋もれてしまうような名前はいけないし、かといって、特別な名前というのも、読むたびにそこに引っかかってしまい、慣れるまで読み手にストレスを感じさせてしまうため、タブーとされている。

 ただ、人ひとりが考えられる名前というのはたかだか知れていて、ゼロから捻り出そうとするとどうしても偏ってしまうのだ。なので、私は実在する名前と、思いついた名前とひっつけてみて、字埋れしないかなど、さまざまな角度から考えていく。それさえ整えておけば、書いていく上で感情移入がしやすくなってくるのだ。

 『インフォーマ』に登場する木原慶次郎、三島寛治、冴木亮平は、完全、私のオリジナルだが、この3人の名前が脳裏で浮かび、作品とコミットした際、手ごたえがあった。3人を軸に勝負できると感じたのだ。

 戦いは書く前から始まっている。仮に『インフォーマ』の続編をやることになっても、もうサブタイトルは頭で決まっていて、これがあれば、私は戦うことができるのだ。これができていない作品には、いくら売れていても感情移入などできない。

 そして、河村恭介の弟、河村愛之介。最後に考えた登場人物だが、河村愛之介を恭介の弟にしようと思いついたとき、私の中で大きな歯車が回った。

団地から生まれた「あらたな組織の形」

 ずっと、団地を眺めていた。『インフォーマ』のタイトルが決まり、藤井道人監督からも「インフォーマでいきましょう!」となってから、夜ずっと団地を眺めていた。

 自分は団地で育ってきたわけではないが、もし子ども時代、同じ団地で育ち一緒に遊んでいた悪ガキたちが、そのまま大人になったとすれば、その結束は、ヤクザの疑似家族すらも凌駕するのではないか。六車という団地があって、六車団地には悪ガキのスーパースターがいて、彼を中心として団地の子どもたちが大人になり、ひとつの組織となれば、従来の概念をぶち破り、なおかつリアリティがあるのではないか。そんな組織を『インフォーマ』のひとつの軸にしよう。そこにまでたどり着くまで、私は当時、吸っていた紙タバコ「セブンスター」をむせるくらい吸い続けながらずっと考えていた。そして、そこからは早かった。

 脚本の叩き台を私が書き、藤井監督が編集者の役割りをやってくれ、1話1話書いていき、10話整えてからドラマ、小説と派生させていったので、私自身にドラマと小説の違いはあまりない。脚本にも1話1話目を通して、監督、脚本家のやりたいことに気づき、それに磨きをかけるのが監修の仕事でもあるし、小説に至っては、いつもの座組で、編集者のかた、校閲のかた、と仕上げていった。ただ、小説とドラマの違いをあえてあげるならば、小説のほうが、私が夜、むせかえるほどタバコを吹かしながら見ていた団地という存在に、もう少しスポットを当てている。

 その当時、聞いていたのは、あいみょんの「桜が降る夜は」だった。延々とリピートさせながら、ただ団地を眺めていた。あまり知られていないというか、私が独自で編み出してきたことなのだが、物語を作るが上で、覚えなくてもよい、私みたいに音痴でもよい……とにかく最近の歌を常に耳に触れさせておかなければならないのだ。それらの歌詞が、現代の生きた言葉を覚えるのに最適なのである。

 そのため、歌番組をテレビでやっていれば、できるだけ観るようにしているのだが、年末にもある特番をやっていた。次々にゲストが出てきて、今年一番聴いた歌について語るのだが、気になった曲を私はAppleMusicにダウンロードさせていた。

 そのときだった。えらく輝いて見えるゲストがテレビに映し出された。オーラと風格が出ていて、私はテレビに吸い寄せられた。

「…なんか…桐谷健太さんに似てるよな…」

 と思いながら、観ていると桐谷健太さんだった。『インフォーマ』の撮影を行った2022年の夏。熱く燃えた夏を乗り越えて、桐谷さんは確かに覚醒していたのだった。

(文=沖田臥竜/作家)

小説『インフォーマ』
沖田臥竜/サイゾー文芸/税込1320円
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週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉パンデミック、暴力団抗争、永田町の権力闘争、未解決殺人事件…実在の事件や出来事を織り交ぜ生まれた「リアル・フィクション」の決定版!


ドラマ『インフォーマ』
毎週木曜深夜0時25分~0時55分放送中(関西ローカル)
見逃し配信:カンテレドーガ・TVer
Netflixでは地上波に先駆けて先行配信中


ドラマ『インフォーマ』予告映像

桐谷健太演じる主人公で、裏社会・政治・芸能など、あらゆる情報に精通するカリスマ的情報屋“インフォーマ”木原慶次郎と、佐野玲於(GENERATIONS)演じる週刊誌「タイムズ」記者・三島寛治が、警察・ヤクザ・裏社会の住人たちを巻き込み謎の連続殺人事件を追うクライムサスペンス。事件の背後に存在する謎の集団のリーダーで、木原の因縁の相手となる男を、事務所移籍後初のドラマ出演となる森田剛が演じる。

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/02/15 07:10
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