『ラヴィット!』オードリー春日を見たときの“多幸感”の正体
#テレビ日記
オードリー・春日「国民のみなさま、おめでとうございます。春日の誕生日ですよ」
そんな春日が告知通り、9日の『ラヴィット!』(TBS系)にゲスト出演していた。この日は彼の44歳の誕生日ということで、誕生祭が開催されていた。春日がカメラ目線で堂々と祭りのはじまりを宣言した。
「国民のみなさま、おめでとうございます。春日の誕生日ですよ」
で、その誕生祭が実に春日ショー。とても面白かったので振り返っていきたい。
まず、ゲストとして紹介された春日は開口一番「ラヴィットゥース! 出ました、スーパースターでございます」とあいさつをした。しかし、一瞬静まり返るスタジオ。そのあとで笑いが起こるのだが、川島明(麒麟)は一瞬の静寂も見逃さない。「ちょっとスタジオが緊張してますもんね」とイジり気味にパスする川島。春日は「もっと笑っていいんですよ。リラックス! リラックス! そんなんじゃないだろ君たちは」とスタジオを鼓舞する。そんな春日の堂々とした振る舞いにウケるスタジオ。これでもう、爆笑になってもスベってもOKな春日の空気ができあがった。
で、いよいよ誕生祭がはじまると、春日ムーブの連発である。ピンクのカーペットの上を悠々と時間をかけて歩いたり、衣装をノールックでカッコよく投げ捨てたり。いつもの面白い春日である。「鬼瓦」のギャグをする場面で、「ありがとう」と「鬼瓦」をかけた「あり瓦」といつもと違う春日を見せると、川島が「あ、鬼瓦でお願いします。ちょっと発注と違ったんですけど」とツッコむ。そういうちょっと間違えちゃうみたいなところまで含めて春日ムーブである。
さて、誕生祭のメイン企画は出演者からの誕生日プレゼントだ。それを春日が次々と体験していくのだが、中でも面白かったのはパワースーツを体験する春日だろうか。NON STYLEの井上裕介から、電気の刺激で筋肉を鍛えるパワースーツをもらった春日は、それを着てエアロバイクを漕ぐ。
タブレットでパワースーツの刺激レベルを徐々に上げていく川島。だが、このパワースーツ、電気マッサージ器の罰ゲームのようにおそらく“痛い”のだろうけれど、筋肉を鍛えている人以外には日常で馴染みがないアイテムだからか、バラエティであまり使われているのを見たことがないためか、その“痛さ”がテレビのこちら側には伝わりにくい。
が、春日は徐々にレベルが上がるなかで、「ダーッ!」などと悶絶する。顔を痙攣させながら「コノヤロー!」とバイクを漕ぐ。最大レベルに達すると顔に汗を大いに流し、青筋を立てながら絶叫する。その表情に笑ってしまう。よくわからないものを、自身のリアクションだけで面白くする春日がすごかった。
その後も、汗だくのなか熱々のグラタンや餅を食べたり、同期芸人のギャグを真似したり、子ども用カートでの川島との対決に接戦で負けゴールテープに頭から突っ込んだりなど。テレビタレントとしての春日の底力を存分に感じる約40分間のショーだった。
にしても、春日を見て笑うときのこの多幸感はなんだろう。やはりそれは春日が「当て書きの究極体」だからだと思う。それは作られたキャラクターである。春日が作りものであることを私たちは知っている。だが同時に、それは彼を10代のころから見てきた若林正恭の当て書きである。彼のもともとの人格のようなものが、そこに幾分か反映されていることも私たちは感じている。
作られたキャラと素の間にある春日。その宙吊り状態をずっと安定してキープし続けてきた(ように見える)春日。そんな春日を前にすると、キャラの裏側、本来の素を暴きたいという私たちの欲望、逆にいえば裏切られたくないという疑心暗鬼はきれいさっぱりキャンセルされる。だからこそ、安心して笑っちゃうのだろう。
明日も太陽は昇る。だからこそ、私たちは安心して眠りにつくことができる。明日も春日は春日である。だからこそ、私たちは安心して笑うことができる。
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