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日刊サイゾー トップ > エンタメ > アイドル > STARTO(旧ジャニーズ)  > SixTONESが『声』で挑む新たな音楽的挑戦

SixTONES『声』、ジャンルの幅をさらに広げ「声」の持つ多彩な表情を生かしたアルバム

SixTONES『声』、ジャンルの幅をさらに広げ「声」の持つ多彩な表情を生かしたアルバムの画像1
SixTONES『声』(初回限定盤A)(ソニーミュージック)

 1月上旬、渋谷駅前。そこには〈世界が「声」で賑やかでありますように。〉と書かれた巨大広告が掲出されていた。

SixTONES『声』、ジャンルの幅をさらに広げ「声」の持つ多彩な表情を生かしたアルバムの画像2

 これはSixTONESの3rdアルバム『声』の発売を記念したものである。彼らは3年連続で1月第1週にアルバムをリリースしているが、今作で自身初めてとなるオリコン週間アルバムランキング2週連続1位を獲得し、4週連続トップ10入りを果たすなど好セールスを記録している。

 ジャニーズのグループは初期作品でフレッシュな魅力を押し出し、グループの成熟とともにその音楽性を発展させていくケースが多い。しかしSixTONESの場合、1stアルバム『ST』の時点で音楽的な軸はある程度固まっていたように思う。これまで彼らはロック、EDM、ヒップホップなどを軸に、ジャニーズの新たな音楽的可能性に挑み続けてきた。シングル「Good Luck!」での前向きなポップチューンぶりがむしろ新鮮に聴こえたのも、これまでのリリースを通じてグループのカラーを確立していたからこそであろう。

 最新作『声』では、SixTONESらしさを踏まえつつ、その音楽性の幅を更に拡張している。楽曲の傾向を見ていくと、やはりライブでの盛り上がりが目に浮かぶようなパーティーチューンの存在感が際立っている。特にリード曲「Boom-Pow-Wow!」は〈ほら騒ぎな 声あげな〉というリリックからもわかるように、まさに観客をアジテートするべく生まれた楽曲である。今作を引っ提げたツアーでは先日より声出しが解禁されたため、この曲の持つ意義もグッと増してきていると言えるだろう。彼らのCDデビューは2020年1月であり、その歩みはほぼコロナ禍の期間と重なっている。制限が緩和されてきた今だからこそ、ファンの声を聞きたいというメンバーの切実な思いがうかがえる。

 パーティーチューンと言えば、MVのみYouTubeで公開されていた「PARTY PEOPLE」もそうだろう。シンプルなトラックからホーンセクションをフィーチャーしたファンキーなサビへの広がりが楽しいサマーチューンで、どこかブルーノ・マーズ「Runaway Baby」に通ずるものを感じる。また彼らが以前からレパートリーとしてきたEDM系ダンスナンバーの1つの到達点とも言えるのが「Outrageous」だ。目の覚めるような攻撃的なビートに加え、サビの手前でループの拍がどんどん細かくなるあたりはJ-POPとしては過剰なほどで、その刺激的なサウンドには驚かされた。EDM~ダブステップ~トラップといった展開の多さも、楽曲を一層盛り立てている。

 対照的にチルな空気を纏っているのが、バンドサウンドで本格的なファンクに挑戦した「人人人」だ。Kroiあたりを意識したであろう歌とラップをシームレスに行き来する展開は非常に現代的で、ファンキーなサウンドに乗せたマイクリレーという意味ではヒップホップバンド・韻シストにも近いかもしれない。何らかの現役のバンドマンが楽曲提供したのではと予想していたが、実際には作詞作曲編曲全てがSixTONES作品でお馴染みの佐伯youthKによるものであり、氏の引き出しの多さにも改めて驚かされた。「人人人」とともにYouTube限定のパフォーマンス企画で披露した「Chillin’ with you」も、タイトル通りまさにチル系のプレイリストに入っていそうな楽曲だ。メロウなトラックに重なる美しいハーモニーが心地良く、田中樹によるラップのフロウもスキルフルな仕上がりで非常に頼もしい。ちなみに作詞で参加したTSUGUMIは姉妹R&Bデュオ・SOULHEADのメンバーで、こちらもSixTONES作品の常連である。

 そんなSOULHEADがメジャーデビューしたのは2002年のことだが、近年の音楽シーンにおいては90年代~00年代前半頃のR&Bサウンドがリバイバル傾向にある。そういった空気を反映しているのが、シングルでもリリースされた「わたし」だ。ピアノとストリングスを主体としたスムースなR&Bでアダルトな魅力を放つ、SixTONESにとっては新境地的な楽曲である。サビのコーラスワークも相まって、個人的にはゴスペラーズ「永遠に」を思い出した。

 さらに初回盤のみ収録のユニット曲には、本編とはひと味違った遊び心が感じられる楽曲が揃っている。森本慎太郎と田中樹による「OPA!」は直球のEDMサウンドが楽しいアッパーチューン。ドロップ部分の重低音に乗って繰り返される”OPA”のフレーズは非常にキャッチーで、必ずや耳に残るだろう。京本大我と高地優吾の「ラ・ラ・ラ・ラブストーリー」は1990年代に流行した渋谷系のオマージュ楽曲である。元ネタはフリッパーズ・ギター「恋とマシンガン」と思われるが、ゴージャスなホーンセクションも相まってどこかミュージカル的な印象も受ける。タイトルも映画『ラ・ラ・ランド』にかかっているのかもしれない。そしてジェシーと松村北斗による「愛という名のベール」に、一聴してKinKi Kidsへのオマージュを感じたのは私だけではないだろう。「愛のかたまり」や「スワンソング」といったキンキお得意の哀愁歌謡の系譜で、流麗なストリングスも楽曲の世界観をドラマチックに盛り上げている。

 総じて言えばロック色はやや後退し、その分これまで以上にジャンルの幅の広がりを感じる作品だ。また1つのジャンルでは括りきれない楽曲も目立っており、クロスオーバー化が進む現代の音楽シーンを象徴しているようにも思える。これまでにない音楽的挑戦はメンバーの新たな表現をも引き出しており、今作は「声」の持つ多彩な表情を生かしたバラエティ豊かな1枚に仕上がっている。

椎名和樹(音楽ライター)

音楽ライター。ロック、J-POP、アイドル、ヴィジュアル系などジャンルレスな知識と豊富なライブ経験を生かして執筆中。研究対象はフェス、ランキング、音楽番組、90年代カルチャーなど。ハンバーガーマニアの顔も。

Twitter:@sheena_kazuki

しいなかずき

最終更新:2023/03/15 21:26
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