トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > アンガ田中「なか」じゃなく「まわり」

アンガールズ田中卓志の自分の「なか」じゃなくて「まわり」を掘れ

アンガールズ・田中「自分の周りに何があるのか、まずしっかり掘る時間が必要」

 4日の『ゴッドタン』(テレビ東京系)。この日放送されていたのは「勝手にお悩み先生」だ。田中卓志(アンガールズ)が先生役となり、本人がまだ自覚していない悩みに勝手に答えていく恒例企画である。

 個人的に印象的だったのは、ハナコの菊田竜大に対する田中のアドバイスだ。菊田といえば、ハナコのコントでの出番の少なさがいじられたりする。しかし、本人はそれをネガティブにとらえてはいない様子で、「楽をしたい」などとあまりお笑いに関心がないそぶりを見せてきた。

 が、そんな菊田について、田中は喝破する。菊田はお笑いに真剣に取り組みたいはずだ、実は彼には自分の理想のお笑いがあるはずだ、と。なぜなら、『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)で菊田がウケていたのを見た田中、「ウケてたね」と指摘すると菊田は喜んだのだという。お笑いを好きではない人間がそこで喜ぶはずがない、と田中は語る。

 そんな田中の指摘に、菊田は観念したように自白する。

「いやぁ、僕、お笑い好きなんですよ」

 菊田いわく、自分はこのキャラクターもあってお笑いへの取り組み方がいまいちわからない。そんな菊田がバラエティでよくやっているのは、お笑い熱がない人間の大喜利のようなもの。「お笑い熱ないやつはこういうこと言うよねの大喜利を、ずっとやってるんです」と彼は語った。

 田中による指摘があったとはいえ(そして無自覚な悩みの相談という企画の設定とはいえ)、これまでのキャラクターの裏側を自ら吐露するような展開。なるほど、お笑いよりも「楽をしたい」といったルールが優先されていたように見えた菊田だが、それもまた、お笑いのルールに基づく言動だったということか。

 もちろん、何が菊田の本心なのかはよくわからないけれど。こんな“暴露”や“自白”もまた、お笑いのルールの上で繰り広げられているわけだから。

 ――と、菊田の本心はともかくとして、では、今後の菊田はお笑いに対する思いを前面に出していけばいいのか? 田中は、その前にやるべきことがあると語る。ハナコと同じように早く売れてしまったアンガールズ。当時の田中は「自分のまわりを掘る前に(世の中に)出ちゃって困ったときがあった」という。自分に何ができるのかを十分に見定める時間がないまま世間にさらされたようだ。

 そんなとき、自分のキャラクターを見極めるきっかけになった番組があったと田中は語る。

「『イロモネア』って番組あったじゃないですか。ギャグとかモノボケとか考えなきゃいけない時間があって。そこで掘ってくうちに、俺、気持ち悪い系がすごいウケるなみたいなことに気づいていくんですよ。で、自信になってって、それがキャラによりなっていったっていうのがあって。菊田には自分のまわりに何があるのか、まずしっかり掘る時間が必要だと思う」

 自分の経験をふまえた実践的なアドバイス。なんだか的確な助言に聞こえる。何を成すにもまずは自分の周りを掘ることが大切という言葉は、芸人の世界に限らず普遍性があるようにも思う。

 それにしても、一般的な表現だと「自分のなかを掘る」と言ってしまいそうだ。が、田中は菊田に「自分のまわりを掘る」ことを進めた。なるほど、田中の「気持ち悪い」といったキャラクターも、番組でさまざまなことを試すなかで、観客や周囲の芸人たちのウケを見ながら作り上げていったもの。それは自分の「なか」から出てきたというよりも、自分の「まわり」との関係で生まれてきた笑いだろう。

 「なか」ではなく「まわり」。あまり意味はないかもしれないけれど、あえての言葉選びという感じもする。どうだろう。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

サイト:記事一覧

Twitter:@inyou_te

いんようてれび

最終更新:2023/02/27 19:49
12
ページ上部へ戻る

配給映画