アトピー治療に大躍進、かゆみの原因発見でどうなる?
#鷲尾香一
アトピー性皮膚炎の治療が大きく進むかもしれない。富山大学と佐賀大学の研究グループは1月6日、アトピー性皮膚炎は皮膚組織で作られるペリオスチンが知覚神経に作用してかゆみを引き起こすとともに、阻害剤がかゆみを大幅に改善することを、アトピー性皮膚炎モデルマウスを用いて見出したと発表した。
https://www.u-toyama.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2022230106_2-1.pdf
アトピー性皮膚炎は、増悪と軽快を繰り返すかゆみの強い湿疹を主な病変とする疾患で、ス テロイド外用薬、免疫抑制外用薬が長く治療に利用されている。また、最近では分子標的薬が登場し、治療が進歩してきている。だが、アトピー性皮膚炎の強いかゆみに対する原因は未解決でその治療薬が望まれている。
厚生労働省によると、アトピー性皮膚炎の推定患者数は約51万人と見られているが、日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」では、生後4カ月から6歳では12%前後、20~30歳代で9%前後の頻度で認めることが明らかとなっており、実際のアトピー性皮膚炎患者数は数百万人に至ると考えられるとしている。
発表によると、富山大学ではヒトのアトピー性皮膚炎に非常によく似た病態(顔面に皮膚炎と強いかゆみ反応を示す)モデルマウス(FADSマウス)を開発しており、さらに、痛みやかゆみの神経機能を解析する技術を持っていた。
一方、佐賀大学では、皮下線維芽細胞で過剰産生された「ペリオスチン」という物質がアトピー性皮膚炎発症に重要な役割を担っていることを発見している。このペリオスチンは、正常組織や腫瘍間質中の線維芽細胞によって発現される細胞外マトリックスの構成要素。
そこで、両者はアトピー性皮膚炎のかゆみ発症の原因と、その治療薬の発見で共同研究を開始した。
その結果、アトピー性皮膚炎は皮膚組織で作られるペリオスチンが知覚神経に作用してかゆみを引き起こすとともに、その阻害剤がかゆみを大幅に改善することを、FADSマウスを用いて見出した。
具体的には、FADSマウスのペリオスチン遺伝子を生まれつき欠損させると、大幅にかゆみが改善するとともに、ペリオスチン阻害剤(CP4715)をFADSマウスに投与するとかゆみが改善した。
CP4715は明治製菓が創製した糖タンパク(GP) IIbIIIaレセプターと、細胞接着分子であるインテグリンαvβ3の両方に拮抗する作用を有し、ペリオスチン受容体αvβ3にも作用して皮膚炎症とかゆみ反応を抑制する作用を有することから、ペリオスチン阻害剤として利用できる。
すでに、アトピー性皮膚炎に対するCP4715の効果については特許を申請中で、研究グループでは今後、「CP4715 をアトピー性皮膚炎の治療薬として開発を推進する予定」としている。
さらにCP4715について研究グループは、「製薬企業が薬剤として開発を進めた化合物であり、安全性についてはある程度確認済み。その情報を活かして開発期間の短縮が可能と思われる」と評価している。
研究グループが指摘するように、すでに開発されているCP4715がアトピー性皮膚炎の治療薬として十分な効果を発揮するとなれば、短期間での治療薬開発が可能となるかもしれず、アトピー性皮膚炎患者にとっては朗報だ。
研究結果は、1月7日にCell Reportsオンライン版で公開された。
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