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『RRR』躊躇してしまう上映時間3時間も、タイパコスパが超ナートゥ!

『RRR』躊躇してしまう上映時間3時間も、タイパコスパが超ナートゥ!の画像1
『RRR』公式サイトより

 老いも若きも猫も杓子も、日本中が、いや世界中が高らかに叫び、踊れば良いと思うのだ。「ナートゥ!ナートゥ!」と。

 日本国内では昨年10月21日から封切られるや否や噂が噂を呼び熱狂が熱狂を呼び何と公開から3ヶ月経過してのドルビーシネマ拡大上映が決定と言う、なかなかな怪現象とも呼べるムーブメントを巻き起こしている当作。

 しかしそのメインビジュアルと来たら屈強な褐色男性2人が互いに背を向け宙を舞うという、また随分と芳しきシロモノとなっており、そこから立ち昇るはむせ返る様なマチズモのかほりと……以上。いやはやこれだけでは到底、観る気が湧かんのもとてもよく分かりますがまあ、もうしばしお付き合い下さいナートゥ。

 1920年代当時英国植民地下にあったインドを舞台とした壮大な奪還、脱出、救出劇であり、そこに深く絡んで行く2人の男の努力友情勝利のお話。

 あらすじを強引に3行で纏めるとこんな感じであるが努力も友情も勝利もその3原則に纏わる全ての描写が途轍もないテンションで襲い掛かってくる嵐の様な3時間を経て辿り着く境地がナートゥなんですよいやこれマジで。

 バディムービーでもありロミオとジュリエット的な意匠もありこの際BLとして観て貰っても良いのだ。どんなきっかけでも良い。どう言った道程を経たとて辿り着く先は味わった事のない快楽即ちナートゥなのだから。

 監督はS・S・ラージャマウリ(本名コドゥリ・スリサイラ・スリ・ラージャマウリ)。前作『バーフバリ』が衝撃をもって迎えられてから早7年。王を称え続けて来た同志よ、我等は報われたのだ。

 こちらは3行どころか1行で纏めると、親子2代に渡るスゴ過ぎる古典英雄譚が6時間弱なので是非観て欲しいのであるが一旦、ナートゥしてからでも遅くはないというか、ナートゥからのジャイマヒシュマティもそれはそれで味わった事のない、快楽である事は約束する。

 因みにナートゥとは、英雄の歌であり、故郷のダンスであり、刺激強めのインドのダンスであり、切れ味鋭い野生のダンスであり、『RRR』中盤に登場するインド映画ではお馴染みのミュージカルシーンであり、所謂高貴な身分の舞踏会にひょんな事から招待された超部外者の主人公2人が、西洋のダンスも踊れん無知が!と、会を追い出されそうになる際の返す刀として「サルサでもフラメンコでもない”ナートゥ”をご存知か?」と故郷のダンスで場を引っくり返すという痛快極まりない一幕の事なのであるが、こちらある種の耐久レース、競技的な側面も持っており、中盤以降は左足を軸とした地獄ケンケン転んだら負けよゲームとなって行く。

 粗野でいてとても上品ではないけれども、その力強いステップに心惹かれ加わっていく貴婦人淑女、初めは憎々しくその様を睨む若紳士達も正々堂々ナートゥのルールで主人公達に闘いを挑むという図式が音楽に国境なし、舞踏に国境なしというノンバーバルコミュニケーションを実際に、インドのみならず旅行英会話が余り通じない南米やアフリカ圏を渡航中に何度も経験したおっさんの胸を打つの刺すのだ泣けるのだあああ(因みに当シーンの撮影場所は戦禍直前のウクライナ、キーウだったとの事)。

 そして一番泣けたのはナートゥに誘ったラーマは、若紳士に敬意を払って”MY BROTHER”と、”良ければおいで、兄弟(或いは友よ)”と言っている事(皮肉かも知れんが)。そう考えるとそこに正々堂々と挑んだあの鼻持ちならん若紳士(確か役名はジェイク。なかなかのイケメンでした)も愛おしくなっちまうし騎士道精神を感じたし、というナートゥの魅力であり魔力。少なくともおっさんにとってナートゥは”魔法の言葉”に思えたし聞こえたし、というかそうとしか思えなかった。

 その他アクションに次ぐアクションに次ぐアクションに次ぐアクションも言うてテンションだけではないかと言われればそれまで、ではあるが色々様々諸々のアクション映画あるあるの、その一歩先を斬新な発想と緻密な構成力でもって魅せてくれる上に、それらもまあおしなべて痛快。

『バーフバリ』前後編をボロ泣きしながら一気見した経験も然りだが、こんなにも人と語りたくなり、そしてそれが映画本編同様にほぼ間違いなくとても楽しい時間が過ごせるであろう(『バーフバリ』ん時も映画好きの友人と飲みながら王を称えまくったからなあ)事を考えれば、対価として支払う上映時間3時間はタイパコスパ共に超優良である事を約束したい(因みにバーフバリは前後編で6時間弱でした)。

 そして無事にナートゥ(RRR)出来たそんな貴方は迷わず、ジャイマヒシュマティ(バーフバリ)してマッキー(謀殺された主人公がハエに転生して復讐すると言う同監督作)してマガディーラ(RRR主演の1人ラーマ役のラームチャランが主演の同監督作)してサーホー(バーフバリの王役プラバースが主演のクライムサスペンスバカアクションな別監督作)もしておくべきだと思います。

 で、もし、万が一、このノリに付いていけなかったそんな貴方には『きっと、うまくいく』や『ダンガル きっと、つよくなる』や『バジュランギおじさんと、小さな迷子』や『シークレットスーパースター』などの心温まる(し泣ける)傑作も多数ござあすのでどうか、そちらを経由して頂いた後に『RRR』再挑戦でナートゥ出来たらジャイマヒシュ(ry

 ドルビーシネマ拡大上映は1月20日から1週間限定との事でしておっさんも再ナートゥしたいと思ってますが既にYouTubeで朝昼晩と再ナートゥする毎日ですしそんなナートゥが第80回米ゴールデングローブ賞最優秀主題歌賞を受賞しやがったらしくおいマジで魔法の言葉やないかと思っています。

 では最後に一曲お聴き下さい。推してるインドのメタルバンドBloodywoodで、「Ari Ari」(映画と関係ないけどインドオモロいすよと言いたいだけの紹介)

庄村聡泰(コラムニスト・スタイリスト)

ロックバンド[Alexandros]のドラマーとして2010〜21年に活動。バンド時代の収入ほぼ全てを注ぎ込むほど傾倒した音楽や洋服を中心に、映画やマンガ、アニメやグルメ、世界各地の珍スポットなどのさまざまなカルチャーに精通し、これらの知識と経験を生かしてライフスタイル提案型ファッションブランド「スナック NGL」を始動。また、歌劇な過激団 @furaku_taru の制作総指揮を務めるなどプロデュース活動や、#サトヤスタイリングとしてファッションスタイリングや、#ショウムライターとして音楽や映画をはじめさまざまなメディアでインタビューやコラムを執筆。自ら映画にも出演するなど精力的な活動を広げている。 #サトヤスタイリング #ショウムライター インタビュー

Twitter:@shomurasatoyasu

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庄村聡泰のホームページ

しょうむらさとやす

最終更新:2023/02/01 20:00
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