日銀「生活意識調査」が示す希望的観測と反する現実
#日本銀行
日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」で、1年後(23年12月)の物価は9.7%上昇との予想結果が出た。1年後の物価が9%以上の上昇となるとの予想は初めてだ。
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2301.pdf
日銀は四半期に1度、全国の満20歳以上の個人4000人に対して同調査を実施している。23年1月11日に公表された22年12月調査結果では、景況感や暮らし向き、物価に対する大きな変化が出ている。
まず、景況感については1年前と現在を比較して、「良くなった」から「悪くなった」を差し引いた景況感DIは-61.8に悪化した。新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した20年9月調査で-75.6まで悪化し、その後は21年12月調査で-45.8まで改善していたが、再び悪化傾向をたどっている。
1年後(23年12月)を予想した景況感DIでは-37.1まで改善するとの予想になっている。しかし、例えば21年12月調査で1年後(22年12月)の予想では5.0に改善するとの予想だったが、実際の22年12月調査の景況感DIは-61.8となった。1年前に予想した1年後の予想と実際の1年後のアンケート調査結果では大きな乖離があり、景況感は多分に希望的観測が入っているようだ。(表1)
現在の暮らし向きを1年前と比較し、「ゆとりが出てきた」から「ゆとりがなくなってきた」を差し引いた暮らし向きDIでは、21年9月の-29.5から5調査連続で悪化し、22年12月は-49.3となった。物価上昇が本格化した22年に入ってから悪化度合いが強まっている。(表2)
物価に対する実感では、現在の物価に対する実感を1年前と比較した場合、「かなり上がった」は21年3月に5.2%だったのが、22年12月には52.7%と10倍以上に増加した。「かなり上がった」と「すこし上がった」を足した「物価が上がった」と感じている割合は、21年3月の49.1%から22年12月には94.3%に増加しており、ほとんどの人が物価の上昇を実感している。
景況感と同様に1年後を予想した物価の実感では、23年12月は「かなり上がる」が32.5%、「すこし上がる」が52.5%で両者を合わせた「物価が上がる」との見方は85.0%と、23年には物価上昇は徐々におさまると予想している。
ただ、景況感と同様に、1年前に予想した1年後の予想と実際の1年後のアンケート調査結果では、例えば21年12月の1年後(22年12月)の予想で「かなり上がる」は13.4%だったのに対して、実際の22年12月の調査結果では52.7%だったように、こちらも多分に希望的観測となっているようだ。(表3)
実際に物価は何%程度変化したと思うかと「物価の変化率」を1年前と比較して調査したところ、22年12月の平均値は12.1%の上昇だった。21年3月では3.4%だったので、約4倍も物価が上昇していると感じていることになり、22年11月の生鮮食品を除く消費者物価指数の総合指数は前年同月比3.7%の上昇なので、物価の上昇度合いについて相当に大きく物価が上昇していると感じていることがわかる。
こちらも同様に1年後を予想した物価の変化率では、23年12月は9.7%の上昇となっており、23年には徐々に物価の上昇はおさまると予想している。しかし、1年前に予想した1年後の予想と実際の1年後のアンケート調査結果では、例えば21年12月の1年後(22年12月)の予想は5.5%の上昇だったのに対して、実際の調査結果では12.1%だったように、先行きの物価上昇率についても希望的観測となっているようだ。(表4)
ただ、23年には物価上昇は徐々におさまるとの見方は強いものの、1年後の物価上昇率は9.7%と大幅な上昇と予想しており、すでに先行きの物価は上昇が続くとの見方に変化していることは確かなようだ。
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