自転車事故減少でも法改正 “ヘルメット着用化”には反対の声も
#鷲尾香一
23年4月からこれまでの児童・幼児だけではなく、自転車に乗る人全員がヘルメットの着用が「努力義務」になる。
警察庁は22年12月20日、23年4月から改正道路交通法が施行されると発表した。同法ではこれまでの対象を児童・幼児としていた自転車に乗る際のヘルメット着用の努力義務が全員に拡大される。
警察庁によると、自転車に関連する交通事故は12年の13万2051件から10年間で21年には6万9694件まで6万2357件(47.2%)も減少している。だが、交通事故全体に占める自転車関連の事故が占める割合は、12年の19.9%から21年には22.8%に2.9ポイントも上昇している。(表1)
交通事故全体が減少を続ける中で、自転車関連の事故も減少が続いているものの、その減少が緩やかなものにとどまっているため、自転車関連の事故が交通事故全体の占める割合が上昇している。
特に、新型コロナウイルスの感染拡大により外出の自粛など行動制限の影響で、20年の自転車関連事故は19年よりも1万2800件(15.9%)も減少したが、21年には前年比2021件(3.0%)増加した。
警察では自転車の交通違反に対する取り締まりを強化しており、違反を現認した際に検挙はしないが、注意を喚起するために交付する「指導警告票」の交付件数は、12年には248万5497件から徐々に減少し、21年には131万2438件にまで減少している。
半面、自転車運転での交通違反による検挙件数は、12年の5321件から20年には2万5467件に約5倍も増加している。(表2)
2008年に道路交通法が改正され、第63条の11で、「児童・幼児を保護する責任のある者は、児童・幼児を自転車に乗車させるときはヘルメットをかぶらせるように努めなければならない」と規定された。これにより、13歳未満の児童・幼児には自転車乗車時のヘルメットの着用が努力義務となった。
自転車乗車中の死亡者数は、12年の554人から21年には359人にまで減少してきているものの、それでも300人以上が自転車事故で死亡している。(表3)
警察庁によると、17年から21年の5年間で自転車乗車中に死亡した2145人の人身損傷部位(致命傷の部位)のうち、東部は1237人と全体の58%にのぼり、もっとも多い。
一方で、17年から21年の5年間で自転車乗用中の乗車用ヘルメット非着用時の死傷者に占める死者の割合(致死率)は0.59%と、ヘルメット着用時の0.26%の約2.2倍になっており、頭部損傷が重大な事故につながりやすいことが確認されている。(表4)
警察庁はこうした状況を踏まえ、児童・幼児のみならず、自転車を乗る際のヘルメット着用の対象を全員にまで拡大することにした。
2023年の道路交通法改正では、第63条の11として「自転車に乗車する者に対する乗車用ヘルメットの着用に係る努力義務」を「自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めるとともに、他人を当該自転車に乗車させるときは、当該他人に乗車用ヘルメットをかぶらせるよう努めなければならない」と変更した。
もちろん、自転車に乗る際のヘルメット着用は“努力義務”であり、罰則や罰金の規定はない。それでも、ヘルメットを着用していなければ、間違いなく、警察官から着用するように努力を要請されることになる。
今回の改正に対して、SNSなどでは多くの声があがっている。
「せっかくセットした髪が、ヘルメットを被れば無駄になる」という女性から、「ちょっとした買い物にもヘルメットは必要なのか」「家族4人分のヘルメットを買い揃えなければならなくなる。購入費の負担が大きい」「自転車用ヘルメットの盗難が増加するのではないか」などさまざまな反応が出ている。
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