『ハケンアニメ!』に込められたエンタメがもっと好きになる丁寧な想い
#宮下かな子
家で料理をしながら掃除をしながら、いつも私は何かしら口ずさんでいる。アニメ『あたしンち』の母に張り合えるくらい。得意とは言えないが、歌うことは好きだ。中でもよく口ずさむ歌はある程度決まっていて、幼少期に観ていたアニメプリキュアのエンディング曲『キラキラしちゃってMy True Love!』という歌は私のおはこ。
“カーテンを開いて 夢の続き探さなくちゃ
眩しすぎる夢の日差しに とろけて消えないように”
この歌詞がカーテンを開ける時に頭に浮かび、口ずさまずにはいられなくなる。
ポジティブな歌詞はもちろん、プリキュアを観ていた当時の朝、早起きした日曜日の空気感、余計なことなんてなーんにも考えてなくて、ただただ明日の希望しかなかったあの頃の自分のキラキラした頭の中がぐーーーっと蘇ってくるような感覚になるのだ。
素敵な歌やアニメに出会う機会は今も沢山あるし、影響を受けることも多いけれど、幼少期に観ていたアニメ、特に日曜日に自分で朝起きてテレビをつけて、妹達と楽しみに観ていたプリキュアは、 やっぱり特別で。内容を詳しく覚えているわけではないけれど、忘れたくない思い出だなと思う。そ んな希望を持っていたくて、わたしはいつも口ずさんでいるのかもしれない。無意識に歌っているだけだから、ただのこじつけかもしれないけど。(笑)
そんなことをふと考えたのは、先日観た吉野耕平監督の映画『ハケンアニメ!』がきっかけ。2022年5月の公開当時も周囲で話題になっていた作品で、年明け前向きになれる作品が観たくてレンタルしてみたのだ。
辻村深月の小説が原作、日本のアニメ業界を舞台に、最も成功したアニメの称号=〝覇権〟を手にすべく奮闘する姿が描かれている。大手アニメ制作会社に所属する新人アニメ監督・斉藤瞳を演じる ヒロイン吉岡里帆さんに、プロデューサー役の柄本佑さん、尾野真千子さん、カリスマ監督・王子千晴として中村倫也さん。
制作メンバーの役者陣は、脚本家の徳井優さん、作画監督の矢柴俊博さんや 宣伝プロデューサー古舘寛治さん、編集の新谷真弓さん、アニメーター小野花梨さんなど、個性豊かな面々の鮮やかなキャラクター性が本当にお見事! 編集部の忙しない雰囲気にも終始胸が高鳴る。
劇中に登場するアニメーションのクオリティの高さも見どころの1つで、断片的にしか登場しないにも関わらず、続きが気になるストーリーや絵の美しさ、豪華声優人も勢揃いしていてかなりの贅沢さなのだ。
普段拝見出来ないアフレコ姿には、とてもワクワクさせられ「声優さんは未完成のラフ画に息を吹き込まなければならないのか!」と驚かされた。制作会議や色付け修正等の制作過程もテンポ良く描かれていて心躍る。普段観ているアニメには、これほど大勢の人がこんなにも時間をかけているんだと、改めて頭が下がる思いがした。
劇中の台詞にもあったが、エンターテイメントは、良い作品がヒットするとは限らない。良い作品じゃなくてもヒットすることもある。予算や環境によって出来ることも限られ、自分が思い描くものが100%作れるとは限らない。その中で、如何に、誰かの胸に届ける作品を作れるか……それは本当に本当に大変な作業なのだ。
「刺され、誰かの胸に」
家々が立ち並ぶ街を、屋上から見下ろしながら、そう切に願う瞳の姿はとても印象に残った。そう、街並み全ての灯りを瞬時に灯すよりも、その中の1つでもいいから、確実に、ずっとずっと灯し続けることを考えて、私ももの作りをしたいな。その丁寧な想いは、絶対にみてくれる方に伝わると思う。私もそう信じて、つくることと向き合っていきたい。
エンタメの力を信じたくなる。力強い作品でした!
私も、誰かの『キラキラしちゃってMy True Love!』つくるぞ~!!!
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