「THE SECOND」は本当に地獄を味わってきたベテラン芸人にチャンスはあるのか?
#M-1グランプリ #THE SECOND #檜山豊
漫才はお笑い業界でも特殊な専門分野
結成16年以上の漫才師が参加するということは20年目でも30年目でも40年目の大ベテランでも参加できるということ。そうなると審査員の方が出場者より芸歴など漫才に携わっている時間が少なく、かなり審査しづらい状況になる可能性が大いにあり得る。
この問題を解決するには、この大会のロールモデルともいえる大会を見てみる必要がある。
その大会とは、元ツインカムの島根さだよしさんが発起人となり、芸歴の為に世に出るチャンス、大会出場資格を制限された”笑いの地肩が強い”芸歴15年以上の芸人にスポットを当てた大会「G-1グランプリ」だ。
ジカタのGを取って「ジカタ№1グランプリ(G-1グランプリ)」と命名され2022年に第一回大会を開催。この大会は「THE SECOND」とは違いメンバーのひとりでも15年以上の芸歴があれば即席ユニットでも出場可能、さらにネタは漫才だけではなくコントでも、ピンでも漫談でもユニットネタでも出することが出来る。2023年に行われる予定の第二回大会は「人生は、変えられるんだ」と、テーマに「崖っぷち№1グランプリ」に改名した。
肝心の審査員なのだが、第一回大会は芸人の渡辺正行さん、ノッチさん、宮迫博之さん、伊勢浩二さん、そして演出家でテレビディレクターの長久弦さんが務めた。
第二回大会では元めちゃイケのプロデューサー明松功さんが総合プロデューサーに就任し、放送作家の鈴木おさむさん、YouTube番組「街録CH」の主宰・三谷三四郎さんが審査員をする予定である。
一回目は芸人も審査員として入っているが、二回目は今のところ放送作家さんやディレクターさんという裏方さんが審査をすることになっている。
たしかにこの人選はとても良い。同じ職種ではなく、同じような業界に携わっているが違う職種が審査したほうが角が立たず、冷静な審査が出来るかもしれない。しかしこれはG-1グランプリというネタの種類を問わない大会なので、成立した可能性がある。もし「THE SECOND」のように漫才に特化した大会だとどうなのだろう。
正直、漫才というのはとても難しく、漫才を書ける作家さんというのはほとんどおらず、作家さん全体の割合から見てもかなり少ない。漫才はお笑い業界において特殊な専門分野と言っても過言ではない。しかもその漫才に特化した芸人だけを審査するとなるとどれだけ売れていようが、どれだけ有名だろうが、作家さんには難しい可能性がある。
となればお笑いに携わっていない一般の人が審査をするのはどうだろうか?漫才の根幹である老若男女問わず楽しめる芸ということを踏まえて、年齢や性別をばらけさせ、その人たちに審査させるのだ。そうすれば偏りもなく、公平な審査が出来るのではないだろうか。
どこかで見たことがある審査方法……これはかつてNHKで放送されていた「爆笑オンエアバトル」の審査方法ではないか。何とも言えない結論になってしまった。
となると審査員を考えるのではなく、今ある参加条件とは別に追加で条件を足した方が良いのではないか。
今のままではぶっちゃけ、フェス感覚で話題作りの為に参加する「ある程度テレビ露出のあるベテラン芸人」は少なくないだろう。そうなると本当にチャンスを手に入れたい「露出度の少ないベテラン芸人」の枠が狭まってしまう。なので今の参加条件プラス「現在キー局、テレビ局共にレギュラー、準レギュラーが無い」や「YouTubeのチャンネル登録者数〇〇人未満」などを追加するのはどうだろうか。
そうすれば、本当に地獄を味わってきたベテラン芸人がチャンスを手に入れる可能性が高まる。
お笑い界の今後を考えたときに、”若手芸人”の新しい風はもちろん必要だが、”ベテラン芸人”のずっと存在していたが知られていなかった風も必要なのだ。
2つの風がぶつかれば相殺する場合もあれば、合体してより大きな風になる場合もある。新しくひらかれる「THE SECOND~漫才トーナメント」(仮)は後者の風だと信じ、お笑い界がさらに盛り上がることを期待している。
どうなるか予想できない未知なる大会。未知は常に面白い。
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