映画『ファミリア』が「当事者」キャスティングで伝える、在日ブラジル人の事情と「脱獄」の意志
#ヒナタカ
ヒップホップグループ「GREEN KIDS」が披露する「脱獄」の意志
そして、静岡県磐田市で実際に活動するヒップホップグループ「GREEN KIDS」のFlight-Aことシマダアランも出演。彼は音楽での成功を夢見るものの、半グレとのトラブルに巻き込まれ窮地に陥る青年・ルイを演じている。Bezzyの記事でFlight-Aは「(半グレに絡まれるシーンは)似たようなことを実際に見てきた」「フラッシュバックするような感覚があった」などとも語っていた。
そのFlight-Aは、劇中のモデルとなった保見団地と同様に、住民の半数が日系南米人という静岡県磐田市の東新町団地で育った。プレス資料掲載の取材でFlight-Aは、「子ども時代?クソひでえ思い出しかないですよ。まあジャマ者扱いって感じっすね。悪いことは全部、オレらのせいにされましたから」などと、まるで「侵略者」のような差別と迫害を受けたことも話している。演じている役柄が、Flight-A本人の経験と密接にリンクしていると言っていいだろう。
https://www.cyzo.com/2020/04/post_237153_entry_2.html
そして劇中のライブシーンでは、GREEN KIDSのメンバーが総出演でラップとパフォーマンスを披露。しかも、その楽曲「脱獄」は、この映画『ファミリア』のためにメンバー全員で歌詞を書いており、やはり「この苦しい状況から抜け出して(脱獄して)やる」という強い反骨精神と意志が込められていた。
成島出監督も、「初めてGREEN KIDSの音楽を聴いたとき、その曲の奥にある本気かつ本物の怒りと悲しみがこの映画には必要だ、と思いました」「彼らが育った団地に行ってその空気を吸った瞬間、この映画の大きなもう一つのテーマが見つかったと思ったことを鮮明に覚えています」と、絶賛している。
保見団地という「本物」の舞台、「当事者」のキャスティング、その魂が込められたような楽曲「脱獄」。それぞれが組み合わさったからこそ表現し得た、多層的な問題提起とメッセージは、ぜひ劇場で受け取ってほしい。
『ファミリア』
2023年1月6日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
監督:成島出
役所広司
吉沢亮 / サガエルカス ワケドファジレ
中原丈雄 室井滋 アリまらい果 シマダアラン スミダグスタボ
松重豊 / MIYAVI
佐藤浩市
製作委員会:木下グループ フェローズ ディグ&フェローズ
制作プロダクション:ディグ&フェローズ
配給:キノフィルムズ
映倫:PG12
C) 2022「ファミリア」製作委員会
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