『ハウルの動く城』若い子大好き宮崎駿監督が老人愛に鞍替え!?
#金曜ロードショー #しばりやトーマス #金ロー
日本テレビ系『金曜ロードショー』、2023年のスタートはジブリから! ということで新年初回の放送を飾るのは2004年公開、宮崎駿監督の『ハウルの動く城』。当時の邦画歴代最高のオープニング記録を達成し、最終興行成績は196億円に到達。自身が監督した『千と千尋の神隠し』に次ぐ、スタジオジブリ歴代2位の記録を誇る大ヒット作だ。『金ロー』初放送時の視聴率は32.9%! 主役のハウルは、声優を木村拓哉が演じたこともあって「ジブリの好きなキャラ」ランキングなどで常に上位を占めるほど人気に。トトロや魔女宅とは違う意味で、ジブリの愛され作品になっています。
しかし作品についての評価は「賛否両論」といったところで、キャラクターは愛されながらストーリーはよくわからず、意味不明と言われがち。なぜこうなってしまったのか?
物語のヒロインは帽子屋で働く少女ソフィー。ソフィーは義母の店で針子として働いている。服装も外見も地味で、妹のレティーは町のカフェの看板娘として人気で、客や出入りの業者かも愛されているのに比べてやや劣等感を抱いているようで、自己肯定感が低い。町で兵隊に絡まれたところを通りすがりの若い男に助けられる。その男は「追われてるんだ」といい、ゴム人間に襲われそうになったところ、空を飛んで脱出。彼の名はハウルという魔法使いで、町の人々には「美しい女性の心臓を奪う」と言われている恐ろしい魔法使いだが、ソフィーには優しい人にしか見えなかった。
帽子屋に戻ったソフィーは“荒地の魔女”の訪問を受ける。彼女はハウルを追いかけていた者の正体で、その目的はハウルの心臓。荒地の魔女はソフィーに呪いをかけ、彼女を90歳の老婆の姿に変えてしまった! 帽子屋にいられなくなったソフィーは町を出て、末の妹に会いに行く途中でハウルが住む「動く城」を見かけ、掃除婦として城に居座る。
ここまでの冒頭の展開は完璧だ。
ヒロインの性格や立ち位置がわかり、主人公・ハウルのミステリアスな魅力が描かれ、宮崎駿お得意の「浮遊感」を感じられる魔法の飛行シーン、対立する敵として荒地の魔女の不気味な存在感を際立たせ、タイトルバックでもある『ハウルの動く城』の歪な造形。これから一体どんな物語が起こるのだろうと観客の期待は煽るだけ煽られる、もう一度いうが完璧な開幕だ。
ところが物語はこのあと、どんどん「わからなく」なっていき、動く城に霧のような靄がかかって見えにくくなるように、もやもやが解消されずに進んでゆく。わからなくなっていく理由として考えられるのが、ハウルという主人公の行動原理がはっきりしないことだ。
ハウルは魔法使いとしては高い能力を持ち、師匠であるサリマン先生からも後継者と目されていたが、自ら弱虫と認める性格でサリマンの元から逃げてしまう。この物語では各国は戦争を続けており、魔法使いたちは戦争の道具として駆り出されるのだが、戦争も嫌いなハウルは国からの招集を断り続ける。と、いいながら城から飛び出して戦い、ボロボロになって帰ってくる様子があるのだ。戦争嫌いなのに戦ってるじゃないか!
そのくせ自分の外見にだけは異常にこだわっていて、城の部屋はボロボロで片付けられてもいない。風呂には2時間も入るのに浴槽回りは、汚れに塗れまみれ。あまりの汚らしさにソフィーは掃除を始めるが、おかげで美しい黄金色の髪を維持する魔法が溶けてしまい黒髪に戻ってしまう(その髪、染めてたのか……)。
「だめだ!美しくなくなった!」
「美しくなければ生きている価値なんかない」
と激しく落ち込み、ゲル状の物体に姿を変えてしまう! ハウルの弟子のマルクルはそれを見て「前にも女の子に振られたショックでこんな風になった」と言っており、どれだけ面倒くさい性格なんだよ……。
自分にしか興味がなく、責任から逃げ回り、気まぐれに世の中に関わり、興味もない女の子と空を飛んだりして、周囲に愛想と誤解を振りまく。ハウルは現代における草食系男子のように描かれており、そのくせ顔だけはいいので(あと魔法も使える)、「わたしがいないとダメなんだから!」と女性の母性愛をくすぐる草食系男子として描かれている。
本作は世の女性からの高評価を得ており、ハウルは「理想の男性」として人気を集めている。確かに、暴力とか絶対振るわなさそうだし。けれど宮崎監督はそんな女性からの評判に「こんな男と結婚したら苦労するぞ!」と説教しているらしい。
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