『すずめの戸締り』大ヒットの裏で 川村元気Pが盛大にコケたあの作品
#しばりやトーマス
川村元気が豪華クリエーターをかき集めたのに評価微妙『バブル』
最後の一本は『バブル』。『進撃の巨人』シリーズの荒木哲郎が監督、『魔法少女まどか☆マギカ』の虚淵玄が脚本、キャラクターデザインは『DEATH NOTE』の小畑健、音楽は『プロメア』の澤野弘之、アニメーション制作は『甲鉄城のカバネリ』のWIT STUDIO、プロデュースは『君の名は。』の川村元気という日本のトップクリエイターが集結した作品。バブル経済のころを思い出す(いつの話だ)豪華布陣……そして、泡のように弾けて消えた作品だ。
世界中に泡が降る「降泡現象」が起き、世界中が混乱する中、日本の首都では東京タワー爆発事件をきっかけに、東京はドーム状の泡に包まれ、水没。都市機能を失った東京は立ち入り禁止区域となった。一連の騒動で孤児となった少年少女らは廃墟と化した東京に移り住み、パルクールに興じるようになる。やがてチームがつくられ、限られた資源を巡ってチーム同士が争う「東京バトルクール」というスポーツに発展していく。
「ブルーブレイズ」というチームでエースの実力者、ヒビキはタワー爆発事故に巻き込まれた際の障害で、音に過敏なので常にイヤーマフをしている。タワーから謎の音が聞こえることに気づいたヒビキは、展望台付近にたたずむ人影を見つけ、近づこうとするが、失敗し重力の渦「アリ地獄」に見込まれそうになる。ヒビキを助けたのは、泡の中から誕生した少女・ウタだった。言葉はまともに話せないが、不思議な歌声を持つ彼女に惹かれたヒビキはチームの仲間入りをさせる。ヒビキとウタのコンビで連戦連勝を重ねるチーム。だがヒビキが触れたウタの左腕は泡となって消えてしまう……。
「水没した東京を舞台に重力無視のパルクールアクションが展開する」というコンセプトから発展した本作は一人称視点と三人称視点が次々入れ替わるカメラワークが秀逸で、異常な重力の影響で現実には実現不可能なエクストリームアクションが繰り広げられる、前代未聞のアクションが売り。
さらに登場人物がアップになると突然、美麗なデザインに切り替わる。突然に。これはアニメーション制作のWIT STUDIOが『甲鉄城のカバネリ』などで手掛けた、通常の絵に「化粧」を施すメイクアップという技術。
こういったビジュアル面では他の作品にない手間暇、苦労が掛けられており、見た目のインパクトは凄まじい。
一方、ストーリー面には難が多い。なぜ世界中に泡が落ちるのか、なぜ東京は『首都消失』のようなドームに包まれるのか、少年たちはなぜ立ち入り禁止区域に入りパルクールをするのか(そもそも「立ち入り禁止」になってないよ!)、パルクールを見守っている大人が数人いるが、少年たちが危険な行為をしているのをなぜ止めないのか、そして東京以外の世界はどうなっているのか……。
といった物語上の疑問にはほとんど回答が用意されていない。『魔法少女まどか☆マギカ』『仮面ライダー鎧武』など、伏線が緻密に張り巡らされた物語に定評のある虚淵玄が「本当に書いたの?」と疑いたくなる雑な脚本。
実際は荒木監督の側に「崩壊した近未来の世界を舞台にした人魚姫の物語」という企画があって、それに対して虚淵が「シャボン玉の地球外生命体」というアイデアを出したという。虚淵が参加した時には方向性が大体決まっていたそうで、口出しする部分がほとんどなかったってこと? それじゃあ虚淵の持ち味が生かされないよ!
川村元気プロデューサーが豪華メンツをかき集めて「君の名は。みたいなやつでひとつヨロシク!」てな感じだったのかも。映像はとにかく凄いのですけどね……。
錚々たるメンバーによってつくられた夢が文字通り、泡のように弾けて消えた様を見せつけられました。まさにバブル!
以上3作品は各種サブスクで配信中ですので、スラダンやすずめの合間にご自宅でお楽しみください。
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