MACKA-CHIN×矢内絵奈『muon』が奏でた宇田川ラブストーリー
#HIPHOP
僕がラップを乗せれば、ヒップホップというアートにもっていける自信はある
――マッカさんは2007年にヒップホップを軸としながらもジャングルやジャズ、アンビエント、テクノに挑んだアルバム『LAST』をリリースした際、「こういう作品って好き? 何やってんのこいつ? ってアルバムだと思わない?」とインタビューで言っていました。
MACKA-CHIN ……変わってないね、俺! 自分こそヒップホップ愛を表現している揺るぎない人だと思ってるんですよ。今でこそ「ラップとヒップホップは違う」といった議論もあるけど、4つ打ちでもなんでも僕がラップを乗せれば、ヒップホップというアートにもっていける自信はある。それがヒップホップの面白さでもあるからね。
――そういう純真無垢な思考が、矢内さんが提供した真っ白な雪山に表れていると思います。
MACKA-CHIN ヒップホップはジャンルじゃなくカルチャー、アートであるべきだと思っているんですよ。今じゃひとりで簡単にミックスもマスタリングもできるけど、「何そのジャケット! やる気あんの?」って感じる作品が多々あるじゃないですか。そこもあなたの表現場所のひとつですよ、と。
そういった意味ではツイッターやインスタのようなSNSも立派な作品発表の場所だし、矢内さんのようなプロの写真家と作品を作ることも当たり前であるべきだし、だからこそ僕はサラッとこなしちゃいたい。言ってしまえば『muon』は「矢内絵奈の写真集にMACKA-CHINの音楽が付いている」くらい。
矢内絵奈 これは私個人の意見ですが、マッカさんが作り上げたい作品の世界観と、私の雪山の写真が共鳴したような感覚はあります。これまでの作品も聴いてきていますし、今作を含めマッカさんのストイックさが音楽を通じて伝わってくる。それはきっとマッカさんの世界観が一貫しているからだと思います。そしてなにより、私の写真を感じ取って『muon』が出来上がったことに感動しています。「一緒に」と言うとおこがましいですが、ご一緒できて本当うれしいです。
MACKA-CHIN そんなこと言われたらフル勃起ですよ。
矢内絵奈 私、ひとりっ子だったので孤独みたいなものを感じることがすごく多かったんですね。人との距離を俯瞰して見ていたり、誰とも会いたくない孤独な感覚が好きであっても、「結局ひとりでは何もできない」ということもすごく感じる。その孤独感を癒せたらいいなぁと求めていた場所が写真だったんです。
MACKA-CHIN 僕もひとりっ子!
矢内絵奈 自分自身らしくいられる風景を求めて探しに行く、その場所を見つけたときにすごく癒される。山はサバイバルな感覚が多く試される場所で、夜の山を過ごした方はわかると思うんですが、夜になると人間が動物的になるというか、陰と陽が反転するような独特の空気をまとうんですよね。夜になるまでは日常的な場所だったのに、夜になった途端に非日常な空間になる。でも、夜が明けると日常に戻り、どこか安心感を得る。その不思議な感覚を繰り返しながら撮影を続けている形です。
MACKA-CHIN 素晴らしい! まだ続きが作れると感じちゃうもんね、こんなこと話されたら。音楽で人生を学んできたけど、改めて大事なものは声に出して言い続けたいと思ったもん。その表現が音楽であり、ヒップホップカルチャーでもある。矢内さんの写真を、自分の作品集のひとつとして残せるのは、本当にありがたいです。
MACKA-CHIN『muon』
(P-VINE)2750円
[プロフィール]
MACKA-CHIN(まっかちん)
1974年、東京都生まれ。ヒップホップグループ〈NITRO MICROPHONE UNDERGROUND〉のMCとして広く知られ、ソロ・アーティストとしてもジャンルレスに幅広く活動。
Twitter〈https://twitter.com/MACKACHIN〉
Instagram〈https://www.instagram.com/opec_hit〉
矢内絵奈(やない・えな)
1977年、北海道生まれ。音楽や旅などから得たインスピレーションをもとに撮影した風景写真を中心に発表している写真家。宇田川町の有名レコードショップで勤務した経歴も持つ。
HP〈https://www.enayanai.com〉
Instagram〈https://www.instagram.com/enayanai〉
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