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『戦力外通告』プロ野球ファンお楽しみの人気コンテンツが深夜帯に追いやられる理由

『戦力外通告』プロ野球ファンお楽しみの人気コンテンツが深夜帯に追いやられる理由の画像1
『プロ野球戦力外通告・クビを宣告された男達』(TBS系)

 人気スポーツのプロ野球は、シーズンオフでもテレビ番組が目白押し。トーク番組や珍プレー好プレー、優れた身体能力を活かしたスポーツバラエティなどさまざまな番組が放送されるが、なかでも一風変わったテイストで野球ファンに人気なのが、TBS系で2000年代初めから放送されている『プロ野球戦力外通告・クビを宣告された男達』(以下『戦力外通告』)だ。今年も12月27日の23時~0時30分に放送され、話題を呼んだばかりだ。

 普段テレビで取り上げられるのは、その年に活躍した選手や往年の名選手ばかりだが、この番組は戦力外通告、つまり“クビ”になった選手を追いかけるもの。実力本位のシビアなスポーツ界の現実を見せつける番組として、開始から20年近くを経ても変わらぬ人気を得ている。

「『戦力外通告』は、TBSで90年代末から放送されていたスポーツドキュメンタリー番組が元になったもの。00年代に入って『バース・デイ』という番組名になり、東山紀之が司会で今も続いていますが、そこから派生して生まれました。当初は夕方や深夜枠での放送でしたが、10年台にはゴールデンに昇格し、13年から19年までは『日本レコード大賞』に続く時間帯で放送されていましたが、ここ数年は再び23時台へと“降格”しています」(テレビ情報誌記者)

 テレビ業界では、22時台と23時台の差は明確だ。23時以降は「深夜」という枠になり、同じレギュラー番組を持ったとしても“格”は大きく変わる。23時台だと見逃してしまう人も少なくないだろう。『戦力外通告』は放送前の1~2週間、番宣CMがバンバン流れていたのに、なぜ深夜枠なのか?

「一言でいうと、悪趣味だからでしょう。番組は、戦力外通告を言い渡された選手たちの姿を丁寧に追っており、過去には番組がきっかけでチームが決まった選手もいますが、やはり取材対象となるのは、“路頭に迷いそうな人”ばかり。取材を断られることは多く、クビになった選手にカメラを向けるスタッフを白い目で見る選手もいます。テレビの影響力はいまだ大きいので、『自分は(取材されても)構わないけど、子どもがイジメられるからNG』といって断られることもあるそうです。

 戦力外通告を言い渡された選手の中には、結婚式を控えていたり、奥さんが妊娠していたりするケースも少なくない。そういった状況は番組内でクローズアップされやすく、ともすれば球団や球界全体が酷薄なイメージを受けかねません。プロ野球選手を目指す少年が、シビアな現実を見て引いてしまうこともあるでしょうし、球界にとってはメリットがありません」(フリーのスポーツライター)

 プロスポーツは“見られてナンボ”の世界だが、こういう形で注目されることは願っていないはずだ。さらにテレビ局側にも事情はある。

「身も蓋もない言い方になりますが、日本人は“他人の不幸”が大好き。例えばJリーグの報道でも、優勝争いより降格争いのほうが大きな扱いになることもあるぐらいで、悲劇は数字(視聴率)を稼ぐ絶好のスパイスです。しかし『戦力外通告』はクビになった人が対象ですから、あまりにも直接的すぎる。ともすれば炎上しかねないので、いくら好視聴率が期待できても、スポンサーは手を上げにくいはずです」(キー局関係者)

 プロ野球ファンは、番組自体が戦力外通告を受けないように祈るしかないか。

石井洋男(スポーツライター)

1974年生まれ、東京都出身。10年近いサラリーマン生活を経て、ライターに転身。野球、サッカー、ラグビー、相撲、陸上、水泳、ボクシング、自転車ロードレース、競馬・競輪・ボートレースなど、幅広くスポーツを愛する。趣味は登山、将棋、麻雀。

いしいひろお

最終更新:2022/12/28 09:00
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