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『関ジャム』新海誠の作品が、RADWIMPSのMV的な映像になる理由

『関ジャム』新海誠の作品が、RADWIMPSのMV的な映像になる理由の画像1
『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)Twitter(@kanjam_tvasahi)より

 12月18日放送『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)は、前回放送された「新海誠作品の映画音楽特集」の延長戦であった。

『すずめの戸締まり』主題歌を歌うシンガー・十明はTikTokからスカウト

 現在公開中の映画『すずめの戸締まり』の主題歌「すずめ feat.十明」は、RADWIMPS・野田洋次郎による作詞・作曲だが、ボーカルを務めているのは女性シンガーの十明である。なぜ、この曲では女性ボーカリストが起用されたのだろう?

「脚本を読んだ応答として、洋次郎さんから“ルールル”というAメロがきて、相当初期に『ボーカルは女性なんじゃないか?』というやり取りはした覚えがあります」(新海)

 もしかしたら、前作『天気の子』の主題歌「グランドエスケープ feat. 三浦透子」での成功体験が、2人の中に潜在的にあったのかもしれない。ところで、彼女は何者?

「ものすごく時間をかけて友だちやレコード会社やいろんな人に声をかけて、オーディションもして。SNSもひたすらスタッフと手分けして。そこからTikTokで、自宅のクローゼットに入ってポツポツと歌を歌ってた十明って子がいて」(野田)

 スゴいところから発掘してきたものだ。十明が弾き語り動画を投稿していたら、「オーディションに来てくれませんか」とTikTok経由でスカウトされたのだから夢がある。最終オーディションでの彼女は、こんな様子だったそうだ。

新海 「オーディションの最後のときに僕もお邪魔して、十明さんがほとんど泣き出しそうになりながら、『こんなプロの機材なんて初めてです』みたいな」

野田 「レコーディングもしたことないですし、マイクの前で歌ったこともない。iPhoneでずっと撮ってた子なんで、初めて来て、声も震えて、『何が起きてるんだろう』みたいな感じだったんですけど。でも、もう持ってる声が」

 極度の緊張状態だった十明だが、野田は彼女の起用を確信していた。最近までレコーディングをしたことさえなかったのに、今年11月には『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)出演にまで手が届いた十明。さながら、令和のシンデレラストーリーである。

野田 「(十明の)TikTokにうちのスタッフがDMを送って」

高橋 「新しい詐欺の始まりやと思われますよ!」

 たしかに、詐欺かスパムだと間違われそうだ。DMが届いた瞬間の心境を、十明本人に聞いてみたい。

新海誠の映画が“RADWIMPSのMV”みたいになる理由

 前回の放送でも触れられたが、新海が1年がかりで作成するビデオコンテは驚異的である。一般的な画コンテとは異なり、セリフや音楽を新海自らが入れ、ほぼ実尺で作る映像のことだ。キャラクターの声をあてるのも、暫定的に入れる劇伴(既存曲)のチョイスも、すべて新海が1人で行っている。

 ビデオコンテでは細かいコマ数も決められているが、野田から送られてくる音楽によってコマ数が変わることもあるらしい。

「ビデオコンテで固めたんだけど、洋次郎さんが曲を更新されて、『ブリッジにもう1個新しいメロディーができました』みたいになると、『こんなにいいメロがあるんだったら、コンテを直さなきゃ』と思って」(野田)

 こういうケースが、『君の名は。』と『天気の子』の2作であったらしい。例えば、『天気の子』で少年が廃ビルの階段を登り、屋上の神社に向かうシーンがそうだ。「愛にできることはまだあるかい」のサビを聴かせるため、完成版ではビデオコンテより階段の段数が建て増しされ、階段を駆け上がる時間が伸ばされたのだ。

「公開まで半年とか3~4カ月ってときに、『ここで20秒伸ばします』ということを(新海が)宣言されるんですよね。そうすると、20秒のために……もう、僕は恐ろしくて聞けないですけど、また制作費が何億増えるんだろう? と。でも、『これは絶対、入れたいんです』って」(野田)

『君の名は。』以降の新海作品は、悪い言い方をするとRADWIMPSのMV的要素があると思う。この作り方なら、その方向へ寄るのは道理……という気がした。

 新海とRADWIMPSのコラボは、新海がRADWIMPSのファンであったことから始まった。今回の『関ジャム』の放送直前、新海は以下のツイートを発信している。

<関ジャム、今夜続きが放送です。前回の放送では、自分のオーダーのめちゃくちゃさと洋次郎さんの尋常ではない熱量を外側から目の当たりにして、やばい・なおさらに好きだ、、、となりました笑。制作中は必死で夢中で気づけないのです。>

 

 新海映画は、次作以降もこの2人が組んで制作されていくのだろう。

 

 さて、次回(来年)の『関ジャム』では、恒例の「1年間を振り返る名曲ランキング」が放送される。正直、あまり年末という感じが筆者はしないのだが、もうそんな季節なのか……。

 気になる選者だが、作詞家・いしわたり淳治&音楽プロデューサー・蔦谷好位置のレギュラー陣の他に、今回はシンガーソングライターの佐藤千亜妃が加わるらしい。

 2021年ランキングは、いしわたりと蔦谷、プラス、音楽プロデューサーのYaffleという座組だった。正直、3人が選ぶ曲のジャンルは同じ方向へ偏っていたという印象がある。だから、女性である佐藤の参加は大賛成なのだ。

 この企画を見ると、「今年の自分のベスト10はなんだったろう?」と思わず視聴者の側も考えてしまうが、今年は話題になった曲が少なかった気がする。パッと思い浮かぶのは、Official髭男dism、Ado、米津玄師、YOASOBIあたりか?

 これはあくまで筆者の願いだが、2021年のランキングのような「自分はこんな曲を知っている!」的なマウントの取り合いではなく、視聴者の関心につながるような心に響くランキングを教えてもらいたい……と、期待している。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/12/25 20:00
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