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『ねほりんぱほりん』「シングル里親」の悩みと、YOUの「みんなで育てる」という提案

『ねほりんぱほりん』「シングル里親」の悩みと、YOUの「みんなで育てる」という提案の画像1
『ねほりんぱほりん』(Eテレ)Twitter(@nhk_nehorin)より

 12月9日放送『ねほりんぱほりん』(Eテレ)のテーマは、「シングル里親」であった。「シングル里親」、あまり聞き馴染みのない響きだ。

 この日、スタジオに登場したシンさん(男性・40代)はシングル里親である。もともと夫婦2人で里親になったものの、今年に入って奥様が急逝。現在は、生後まもない時期から里子として受け入れた3歳の男児を、お1人で育てている。

 実は、「里親」と「養子縁組」は違うらしい。


・特別養子縁組

子どもが育ての親の戸籍に入り、法律上、実の親子関係になる。

・里親
戸籍は別々のままで、親権は実の親にある。そのため、里親と里子では苗字も異なる。

 なぜ、シンさんのご夫婦は里親になったのか?

「もともと妻は子どもができなくて、それを承知で結婚したんです。2人の生活にまったく不満はなかったんですけど、歳をだんだん重ねてくると、周りの友だちに子どもができたり、『子どもができて遊びに行けない』とか。『子育て、大変!』って言いながらも、みんな楽しそうなんですよね。何かもの足りないと思うようになってきて、子どもを育てながらワイワイ生活していくっていうプラスアルファのある生活に惹かれていったんです」(シンさん)

 2人は結婚15年目で里子を受け入れた。

里親制度は「長期の預かり」 実親に返さなければいけないことも

 当初、2人は養子縁組も視野に入れていたそうだ。

「NPOの特別養子縁組を斡旋する団体のいろいろな説明会を回ったんですけれども、そういうところでよく言われるのは『共働きじゃダメです』と。その家庭の中で専業主婦(専業主夫)がいて、ちゃんとその子に向き合える態勢があるかどうか? っていうのは言われました」(シンさん)

 敷居が高い。もう少し柔軟なほうがいい気もするし、現代の社会を考えると制度の内容が昭和な気もする。時代錯誤な「子どもを保育園に入れるのは可哀想」という声と大差ない気もするが……。

「特別養子縁組は子どものための制度であって、親のための制度なんですよね」(シンさん)

 なるほど……。そもそも、親が面倒を見られないので里子に出された子どもたちだ。それだけで、心が荒んでいる子は多い。傷ついている子を愛情で癒せる家庭に託したいのは、当然。親が育てられずに出されたのに、保育園に面倒を見させるわけにはいかない。子どもたちに再びダメージを与えさせてはならない、か。

 シンさん夫婦は特別養子縁組を諦め、共働きのまま里親になることを選んだ。

「里親登録が終わってから半年後くらいに、里親相談所から『もうすぐ、生まれる子がいます。児童相談所としては、その両親には子どもを育てる能力がないと思うので、たぶん長期の預かりになるだろう』と」(シンさん)

 子どもが生まれる前から、里子のオファーが来るのか……。未成年の夫婦による出産など、さまざまなケースがあるのかもしれない。

 微妙なのは、「長期の預かり」という文言である。一応、その子が18歳になるまでの受け入れが予定されているようだが……。

シン 「児童相談所のほうで、『父親さんのほうに子どもを育てる環境ができた』ということになったら『そこまでです』っていうこともあり得ます」(シンさん)

YOU 「返さねばならぬときがあったりするってことだ」

 子を産んだときは環境が整ってないから誰かに育ててもらい、環境が整ったら「返してください」と申し出る。都合がいいというか、実親がいいとこ取りするようなシステムにも思えた。ある程度一緒にいたら里親も里子も離れ難いだろうし、なにより子どもが気の毒では……。“生みの親”より“育ての親”だと思うのだけれど。なにより、いつか返さねばならない子育ては完全なる社会貢献でしかなく、しんどい。

 児童相談所から連絡があった男児は、生後1カ月でシンさんの家庭に受け入れられた。

「(生活は)本当に一気に変わっちゃいましたね。おむつを替えたり、夜にミルクをあげたり、夜泣きしているところを30分~1時間くらい抱っこしながらうろうろするとか。大変なんですけど、友だちが『子育てって大変よ』って楽しそうな顔しながら言ってるのがわかるっていう気分にはなりました」

「自分以外の誰かですよね。その子のために何かをしてあげられるっていうのが、私たち夫婦が求めていたことなのかなというふうには感じました」(シンさん)

 シンさんご夫婦にとっては、生きた証ということか。「自分以外の誰かのために」は、親子関係に限らず人間にとっての大きなテーマである。

里親が里子の銀行口座を作るときに抱く不安

 その一方で、里子ならではの大変さもある。

「いろんな手続き関係で、まずつまずくんですよね。役所に出す書類だとか、病院のワクチンの問診票とか。私が代筆するんで、子どもの名前を書いて、『その横にお父さんの名前を書いてください』って言われて。私の名前を書くと苗字が違うので、『誰ですか?』みたいな顔をされちゃうようなこともありますし(苦笑)。あと続柄を書くときに、『私は何になるんだろう?』と。『この子にとっての私ってなんて書くのかな?』って、最初の頃はすごく迷ったりしました」(シンさん)

 それ以上に大変なのは、お金関係の手続きだ。

「銀行の口座も大変で。例えば、私が『この子の将来のため』と思ってその口座にドンドンお金を入れといたとして、里子の委託解除になっちゃうと、子どもの親権は実親さんにあるので、そのお金は全部、その子の実親さんに行ってしまうので。『子どもの将来の大学のため』と思って貯めといたのも、実親さんが勝手に使っちゃっても問題なくなっちゃうというか」
「なので、子どもの口座じゃなくて、私は私の別の口座を作って、そこに、将来のその子用としてお金は入れてはいるんですけれども、まとまって渡すとなると贈与税がかかる(苦笑)」(シンさん)

 しかも、シンさんはその子のために学資保険どころかその他の保険も加入できないのだ。親が子のためにする一般的なことが、里親にはできない。そもそも実親がやっておくべきことだが、そちらへ戻ったとき、実親がお金を貯めていない不安を考えると、シンさんはやらずにいられない。法律の壁の厚さは、制度的欠陥のようにも思えてくる。システムを変えるなど、なんとかならないものなのか……。

YOU 「だから、『へんてこりんな人がいたりすると嫌だな』っていう。守るためのことなんだろうけど」

山里 「そうそう、悪用する人のための。悪い奴がいるせいだ。悪い奴のせいなんです、全部、いろんなものを複雑にするのは」

 悪い人がいるかもしれないから、仕方ない。これに尽きる。社会の縮図が、里親制度の面倒臭さに表れている。

山里 「したくない説明ってあるじゃないですか。だって、自分の大好きな子どもの話なのに、わざわざ『子どもじゃない』って説明を毎回しなきゃいけないって、すごい苦痛じゃないですか」

シン 「苦痛ですね。やっぱり皆さん、戸籍だとか血のつながりに結構こだわるんですよね。そもそも、夫婦って血もつながってないし、他人じゃないですか。他人なのに、夫婦って結婚したら家族じゃないですか。なんで、子どもはちゃんと血がつながってないと家族って言ってもらえないのかなって思います」

 たしかに、血のつながりだけが家族ではない。

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