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全世界配信『インフォーマ』は「小さな出会い」から生まれた…作者が語る「誕生前夜」

新たに公開された『インフォーマ』のキービジュアル(©カンテレ)

小社から発売された小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)のドラマ化が発表され、先日は衝撃映像に満ちた予告編も公開された。豪華キャストや気鋭のスタッフなどによる作品は、関西テレビの深夜ドラマ枠に収まらず、Netflixでの全世界配信も決まっており、注目度は高まるばかりだ。さらに今後もプロモーションは続いていくが、その戦略にも参画しているのが、原作・監修を務める沖田臥竜氏である。『インフォーマ』を書き、映像化を決め、積極的にPRも仕掛けるという、作家の枠にとどまらない動きをし続ける沖田氏だが、同作の誕生のきっかけは「小さな出会い」にあるという。世界に飛躍するであろう作品はどのように生まれたのか? 沖田氏自身による特別エッセイ第3弾。

緩みを生まないために

 プロモーションを考えるとき、解禁された情報があれば、私はとにかくもったいぶらずに、出せる材料を使って一気に畳み込むべきだと考えている。

 人の思考というのは、いついつになになにをリリースすると固めきってしまうと、どうしてもその期間、脳裏に緩みが芽生えてしまう。つまり安心して、動きを止めてしまうのだ。結果、型通りのプロモーションとなるのが常なのである。

 だが、手持ちの材料を出し尽くしていくと、人は必然的に次ことを考えるのだ。何か他に宣伝材料はないかと意識が向くのである。そうして、初めて新たな発想や材料が生まれてくのだ。

 小説もドラマも読めばおもしろい、観れば凄いだけでは、世の中に語り継がれるような作品にはなれない。1人でも多くの人に観てほしい、読んでほしいと思うのならば、その衝動を駆り立て、間口を広げる作業も必要とされるのではないだろうか。それで駄目だとしても、「もう駄目だ…」などとたやすく諦めたりせず、また頑張ればよいことなのだ。


ドラマ『インフォーマ』予告映像

「沖田臥竜」誕生前夜

 8年前、念願の物書きとして連載が決まったとき、私が自分につけたペンネームは「塚口カポネ」だった。

 「ふざけているんですか⁈ あなた物書きとして、小説で生きていきたいんですよね ? 塚口カポネって、遊びじゃないんですよ!」

 当時の担当編集はそうのたまったが、もちろん本気だった。そこから遡ること10数年前。もし小説家になれれば、カポネさんでいこうと考えていた。なんだったら、塚口カポネというペンネームが脳裏に浮かび上がってきた際、自分のネーミングセンスにうっとりしてしまったほどだ。

 それをばっさり斬り捨てられてしまい、それだけで飽き足らず、ちゃんとしろ!とまで言われてしまったのだ。そして、次に思いついたのは「沖田臥竜」というペンネームだった。

 ふと思うことがある。沖田臥竜という名を見たり聞いたりするときに、この名前を生み出したあの頃から、あっという間にずいぶんと遠くまでやってきたものだと、稲妻のようなスピードで感じることがある。

 その感覚は、『インフォーマ』も『ムショぼけ』に対しても同じだった。なぜならば、私が生み出してきたからだ。ただ、『ムショぼけ』も、現在、各媒体でプロモーションが行われている『インフォーマ』も、人との出会いがあったからこそ生まれた作品だった。

 もしも3年前、ドラマ『ムショぼけ』『インフォーマ』でともに助監督を務めた福田和弘ことフクが私にTwitterでDMを送ってこなければ、どちらの作品も生まれていなかったのだ。

 それは小さな出会いだった。映画『ヤクザと家族 The Family』の製作の参考にするための取材を一度だけ、謝礼2万円でやらせてもらえないか?という依頼をフクが送ってきたのがスタートだった。そもそも、制作サイドと利害関係などはなかった。下心すらなかった。もちろん2万円での取材協力のみだ。純粋に話を聞き、私がわかることはすべて伝えたのだ。1時間だけのつもりが、気がつくと6時間を超えていた。銭金ではなかった。

「私にわかることは、いつでも聞いてくださいね」

 と言って、別れ際にフクらとLINEを交換し、別れたあとすぐ、『ヤクザと家族』を製作する上で役に立つだろうなと思える書類を、もったいぶることなくすべて送り届けた。人との出会いに、打算的なことばかり考えてはつまらない。周りから「なんで(他人の案件に)そんなに力を入れるの?」と言われることがあるが、頼ってこられると全力になる。それはいつもと同じことだった。

 ただ違ったのは、この時は、たった一度のはずだった『ヤクザと家族』への取材協力が、その日のうちに、監修依頼へと繋がったのだ。まさかそのときは、自分も同作のオープニングに出演し、「ご列席、ご一統さまに一言申し上げます、ただいまよりー!」と声を張り上げてることになるなんて夢にも思っていなかった。

待っていても何も始まらない

共にインフォーマを作り上げた人々(撮影現場より)

 フクとの出会いがきっかけで、チーフ助監督のゲンさんこと逢坂元氏、プロデューサーのジョニーこと角田道明氏。そして、今や日本が誇る若き天才、藤井道人監督と知り合うことになのだ。この出会いがなければ、『ムショぼけ』も『インフォーマ』も誕生していない。

 だが、出会いがすべてだったかといえばそうではない。どんなものでもそうだが、出会いとはきっかけに過ぎない。相手に魅力的だと思われれば、関係性は続くだろうし、人間関係が構築されることになる。対して、ろくに何も知らないヤツほど、知ったような口を聞き、高飛車な態度を取るのが世の常だが、申し訳ない、私はそんなヤツと出会うと内心では「バカだ」としか思えない。

  『インフォーマ』でいえば、初めは藤井監督と2人で話し合い、私がまず脚本の叩き台を作り、藤井監督が企画書を作った。その企画書をカンテレに持って行ったのは私だった。それは今から2年前こと。私はすでに脚本の叩き台を寝ずに書いていた。

 小説家を志してから、ずっと書いてきた人生だった。待っていても何も始まらないことを私は経験で知っていた。とにかく、ことを起こしてみるのだ。

 私の作品の映像化には、いつも藤井監督がいて、ジョニーがいて、ゲンさんがいて、フクがいた。そこに今回の『インフォーマ』では、カンテレの名プロデューサー、豊福陽子さんが加わったのだ。豊福さんは『インフォーマ』という作品を真正面から受け止め、私たちと同じ熱量で全力になってくれている。

 『インフォーマ』は今、大きな羽を広げて、私の手もとから飛び立っていこうとしている。その翼にはたくさんの人たちの想いも詰め込まれている。

 「ええか、インフォーマ。遠慮なんかいらん。振り返らずに思いっきり羽ばたいてこい」

 小さな出会いがきっかけで生まれた作品だ。観てくれる人、読んでくれる人の記憶に残ればよいなと思っている。伝説になればよいなと思っている。私はそれを遠くから見守っていたい。

(文=沖田臥竜/作家)

小説『インフォーマ』
沖田臥竜/サイゾー文芸
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週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉

ドラマ『インフォーマ』
https://www.ktv.jp/informa/

出演:桐谷健太 佐野玲於(GENERATIONS) 、森田 剛 ほか
原作・監修:沖田臥竜
総監督:藤井道人
 2023年1月19日に放送スタート。カンテレローカルドラマ枠「EDGE」で毎週木曜24時25分~ほか、Netflixで全世界配信。

 

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/01/02 09:30
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