山田邦子の批判受ける「おもしろいです」批評の理由とM-1全ネタレビュー
#M-1グランプリ #檜山豊 #タブーなきM-1 2022批評 #特集
【総評】審査員批判と優勝者批判、どちらも漫才という輪廻の通過点
今回の大会へ対して視聴者の方達はどのような感想を持っているのか検索したところ、山田邦子さんへの批判続出しているという記事が目に入ってきた。
ほかの審査員に比べ点数が極端な部分があり、ネタへの感想もきちんと審査が出来ていないというところが批判の対象になっているらしいが、もし同じように感じている人がいるのなら、すこし話を聞いてほしい。
僕が芸人をしていた頃、山田邦子さんと共演する機会があった。その際に邦子さんは、自身は芸人ではないテレビ屋だと仰っていたのだ。誰かに芸事を教わったわけでもなく、寄席などでネタをしたこともないので、自分のことを芸人と呼ぶのは芸人さんに対して失礼でおこがましいと言っており、テレビを主戦場としている私はテレビ屋だと。
つまり邦子さんは全芸人に対してリスペクトしているのだ。なので今回「おもしろいです」という感想が多くなってしまったのは、そういった部分が反映されてしまったのかもしれない。
さらに点数が他の審査員とあまりにも違うのは慣れもあると思うし、自分の中での盛り上げ方のひとつという可能性もある。本当のところはわからないが、邦子さんなりに芸人に対して尊敬の念を抱きながら、大会を盛り上げようとした結果だったのではないだろうか。
そこで「良くわかっていないなら審査員なんてしなければ良い」という人もいるかもしれないが、誰でも最初はわからないことが多い。漫才師の成長だけを願うのではなく、同時に審査員の成長も見守ってみるのはいかがだろうか。
話をもどそう。
今大会で、ウエストランドの優勝を願った芸人は多くいたと思うが、一方で本当に優勝すると思った視聴者は少ないのでないだろうか。面白くても優勝できない芸人というのは多く存在していて、ウエストランドもそういった類の芸人だった。しかし今回優勝できたウエストランドを見て、とあるマンガで見たセリフが思い浮かんだ。
「天下人は天が決める!命懸けて信長公を追いかけて、そして信長公が亡くなった。その時周りを見渡せば、俺より力の有る者がいなかった。ただそれだけのことじゃ」
「花の慶次~雲のかなたに~」(集英社)に登場する天下人・豊臣秀吉のセリフだ。
ウエストランドも必死で面白さを追いかけて、何度も傷つき、その度に何度も立ち上がり、自分たちを鍛えて、そして気が付いたら、自分たちが一番になっていたのではないだろうか。
正直、ウエストランドくらいの知名度があれば、大会で優勝しただけでは何も変わらない。必死に漫才を極めようとした14年間だったと思うが、これからは更なる進化をしなければならなくなる。どの職業でも言えるのだが、芸人という職業も例に漏れず永遠に完成しない職業のひとつだと思う。これからまた違う努力が必要となるが、それを必死に追いかけたとき、また一味違うウエストランドの漫才が見れるはずだ。
結成14年目ということもあり今後、「M-1グランプリ」に参加するというのは考えにくい。つまりファイナリスト候補が1組減ったということになる。その穴を埋めるべくまた新たなファイナリスト候補が登場するはず。輪廻転生を繰り返し、進化し続ける漫才は永遠に楽しむことができる最高のエンターテイメントのひとつだ。
これからもこの大会が続き、最高の漫才が見れることを願っている。
※敬称略
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