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元芸人が今年もM-1グランプリ全ネタ解説!

山田邦子の批判受ける「おもしろいです」批評の理由とM-1全ネタレビュー

ヨネダ2000はやっぱり「すごい!」

7組目 ダイヤモンド「変な言い方すんなよ」

 コンビ結成5年目で決勝進出は凄い。準々決勝の壁を越えられなかった2人がいっきに決勝まで来られたということは相当な努力をしたのだろう。

 ネタが始まるとやはり結成5年目ならではの緊張感に包まれており、見ている側まで緊張してしまい、笑いが起こりづらい状態になっていた。

 さらにはこの漫才の形式は、漫才に見えるのだがツッコミセリフ、ボケのタイミングや動きが固定されており、漫才ならではのアドリブ感が少なく、緊張感に包まれた会場をほぐすようなツッコミや客イジリのようなボケをすることが出来なかった。笑いが起こるまでに若干、苦痛な時間が強いられてしまったのではないだろうか。笑いが起き始めてからは波に乗っていたので、後半盛り上がっていったのだが、やはり前半のツケを回収するまでには至らなかった。

 さらにセリフやテンションが固定されているとお客さんとの温度差が生まれてしまうので、どうしても埋まらない溝が出来てしまう。ネタの内容も頭を使って楽しむもので、本能で笑うタイプのボケでは無かったのもいまひとつ盛り上がり辛かった要因かもしれない。

 そして最も僕が気になったのは、今回の漫才でボケをしていた野澤さんの喋り方だ。若干くぐもった声で、舌ったらずな喋り方に聞こえ、このような捲し立てるようなネタには合っていなかった。もし野澤さんをボケにするのなら、捲し立て方を変える必要があったかもしれない。もうすこし客観的に自分たちのネタを分析することが必要そうだ。

8組目 ヨネダ2000「イギリスで餅つこうぜ」

「女芸人№1決定戦 THE W」でも好成績をおさめた、実力派女性コンビ。結成2年目、今大会最年少でこの快挙は、才能の塊といって間違いない。「THE W」ではコントを中心に披露していたので漫才を見られるのが楽しみだ。

 そしてネタを見た感想は……「凄い!」だった。

 好き嫌いが別れるのは間違いないネタなのだが、ボケの数ではなくボケの種類がどのコンビよりも多く、エンターテイメントとしては他のコンビよりも優れていた気がする。

 特に前半がボケのジャンルが多く、笑わせ方の豊富さが尋常ではない。たぶん彼女たちはボケの種類を増やそうと意識しているのではなく、面白いものを集めた結果として種類が豊富だったのではないだろうか。これだけ種類が違う笑わせ方をさらっとこなしてしまうのはやはり、彼女たちの才能だ。

 もちろん結成2年目のたどたどしさもある。しかしそのたどたどしさですら武器にして違和感がある笑いを生みだしているのも客観視できているからだろう。

 今回のネタに関しては後半部分がヨネダ2000らしさが出ており良かったとも言えるのだが、逆にらしすぎて見慣れてしまった感もあり若干、笑いが落ち着いてしまった気もする。

 自分たちの”らしさ”に自信があると思うが、その”らしさ”から脱却し、今と違う”らしさ”を見せて欲しいと思う。

9組目 キュウ「世の中には全然違うものがたくさんある」

「M-1グランプリ」決勝戦、初出場。その独特な表現の漫才で少し前からメキメキと頭角を現し、とうとう決勝まで登り詰めた。臨場感やリアリティを徹底的に排除したキュウの漫才が、このM-1という舞台でどのように評価されるのか、とても楽しみである。

 ただ、出番がトリ前ということもあり、お客さん自体も少し疲労がたまっているようで、キュウ独特の静かな立ち上がりがあまりハマらず盛り上がるまでに時間がかかり、最後まで盛り上がり切らなかったように思えた。

 普通の漫才師なら会場の空気を読み、空気を変えるようなツッコミや一体感を生むボケを追加したり出来るのだが、キュウは最初から最後までネタが決まっており、アドリブが入るような漫才では無いので挽回する手立てがなかった。

 さらにボケの種類が1種類しかなく、セリフを変えようが、パターンを変えようが、そんなところに気づくのは分析しようとしている人間のみで、ただ笑おうと思っているお客さんにとっては同じようなボケをひたすらしているように思えてしまい、後半は少し飽きられていた気がする。パターン化するお笑いはハマれば強いのだが、ハマらなかったときはどうすることも出来ない状況に陥る。

 今回はハマらなかった典型的パターンだった。キャラクターもあり、経験値もあり、技術もあるコンビなだけに、2人の実力が存分に発揮できなかったことはとても残念だ。もしかしたら排除している臨場感やリアリティという元々漫才が持っている面白みを、エッセンスとして加えるときが来たのかもしれない。漫才は結局、基本が一番笑えてしまうから。

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