岐阜県で新種の恐竜卵殻化石発見、高山市「歴史の空白埋める」産地か
#地方創生
筑波大学、岐阜県博物館、千葉県立中央博物館の研究チームは11月22日、岐阜県高山市で新種の恐竜卵殻化石を発見したと発表した。
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/biology-environment/20221124190000.html
発表によると、福井県や岐阜県など北陸地域に広く分布する中生代の地層「手取層群」は、多数の恐竜化石を産することで有名。骨化石に加え、近年では恐竜の卵殻化石も報告されている。
卵殻化石は炭酸カルシウム質の硬い卵の殻の一部が保存された化石のことで、「手取層群」は中生代中期ジュラ紀から前期白亜紀(訳1億6700万年~1億1000万年前)に堆積してできた地層の集まりだ。
この卵殻化石は、当時の生態系を復元する上で重要で、どのような動物がその地域で巣づくりしていたかを解明することができる。小型の動物は骨がもろく、骨格が化石として残りにくいため、硬い卵殻化石の発見がその動物の存在を示す確かな証拠として用いられる。
国内では近年、兵庫県や福井県などから相次いで卵殻化石が見つかっており、これまで報告されていなかった種類の恐竜の存在が明らかになっている。
手取層群の中でも岐阜県高山市荘川地域に分布する前期白亜紀の地層「大黒谷層」(約1億2900万年~1億3300万年前)では、恐竜類をはじめとする多様な脊椎動物の骨化石に加え、計9点の卵殻化石が見つかっていた。
研究チームはこれら卵殻化石について、21年6月の日本古生物学会でカメ類と獣脚類恐竜の化石であり、いずれもが国内最古の卵殻化石であることを発表していた。獣脚類はティラノサウルスやアロサウルスなど肉食恐竜を多く含む、主に2足歩行する恐竜グループだ。
今回、高山市荘川町で見つかった卵殻化石計9点を固定・分類し、カメ類の卵殻化石1種類と小型の獣脚類恐竜であるトロオドン科の卵殻化石1種類が含まれていることを突き止めた。
残7点のうち5点は、卵化石の分類体系に基づき、北米での胚化石の発見によりトロオドン科獣脚類または、そのごく近縁グループの卵であることがわかっているプリズマトウーリトゥス卵科に分類した。
しかし、これらの標本はプリズマトウーリトゥス卵科には珍しい網目状の隆起模様が卵殻表面に見られるのが特徴的で、トロオドン科の他の卵殻化石には見られないため、新卵属・新卵種と判定された。そして、「ラモプリズマトウーリトゥス・オオクライ」と命名された。
殻の厚みから推定される卵は小さく、100g程度と考えられ、ニワトリの卵(約60g)よりもやや大きい程度で、小型のトロオドン科(体重12~17kg程度)が産んだものと考えられる。
また、残り2点の標本については、卵殻本体は確認できず、分類は不明となった。
中生代の日本の恐竜卵殻化石は、これまでに岐阜県、石川県、福井県、兵庫県、山口県で見つかっている。これらのうち鳥類を含む獣脚類恐竜の卵殻解析は福井健と兵庫県に続き3例目となる。トロオドン科の可能性のある卵殻の報告は兵庫県に続き2例目で、手取層群からはこれまでトロオドン科の骨化石は見つかっていなかった。
手取層群大黒谷層は約1億2900万年~1億3300万年前と、現在知られている国内の卵殻化石産地の中で最も古く、荘川地域の標本は日本最古の卵殻化石となる。
この年代のトロオドン科に近縁な恐竜の化石は卵殻化石を含め、世界的にも発見例に乏しく、アジア圏では中国北東部からの2種のみ。今回の発見は約1億3000万年前の小型獣脚類化石として、アジア最東端の発見となった。
研究グループでは、「荘川地域の大黒谷層は世界的にも恐竜化石の発見例が乏しい時代のもので、その空白を埋める化石産地として継続的な研究を行っていく予定」としている。
今回の研究結果は11月24日、Historical Biology誌に掲載された。
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