骨董品の世界を舞台にした地獄めぐり 映画『餓鬼が笑う』クリエイターズ対談
#映画 #インタビュー
故宮博物院クラスのお宝が登場する闇市
――20年間にわたって古美術商をしてきた大江戸さん、自主映画を撮る一方で人気監督の元で助監督を務めてきた平波監督が出会ったのが、山本政志監督の怪作『脳天パラダイス』(20年)。
平波 みんなでどんちゃん騒ぎする映画でしたが、撮影の舞台裏も似たような状況でした(笑)。エグゼクティブプロデューサーの大江戸さんが最終日の前夜に合宿所に来られたんで、その夜はロケ地の青梅にあったスナックで大江戸さんや他のスタッフと朝まで飲んだんです。それから最終日の撮影でしたね。
大江戸 平波くんはいちばん飲んでたし、歌いっぷりもよかった。『脳天パラダイス』でいちばんよかったのは、平波監督と出会えたことだな。それで半年後に、平波監督に『餓鬼が笑う』の脚本の初稿を渡して、読んでもらった。
平波 初稿時のタイトルは『弱い光』でしたね。
大江戸 微弱な光こそが、お前自身なんだという意味で付けたタイトルだった。
平波 そのまま映画化したら、5億~10億円くらい予算が必要な内容でしたよ(笑)。主人公がディスコで踊るシーンがあったり、地獄めぐりのシーンには「731部隊」みたいなのも登場してました。でも、幻想的なシーンも含めて、すごく面白かった。
大江戸 僕の頭の中にあったイメージを、そのまま書いたような初稿だったんです。僕の実体験も交えた世界を、平波監督は僕のイメージそのままに映画にしてくれた。
――骨董屋になろうとする大が初めて参加する闇の競り市は、怪しいバイヤーたちが山奥に集まり、リアリティーたっぷりです。
平波 大江戸さんでなければ書けなかったシーンですね。大江戸さんが声を掛けて、実際に古物商をしている方たちに出演してもらったんです。彼らの醸し出す空気感がすごかった。そこに二ノ宮隆太郎監督をはじめとするプロの俳優たちにも混じってもらい、リアリティーのある場面になるようこだわりました。
大江戸 競りに出される中国の壺は、台湾の故宮博物院に飾られている所蔵品と同時代に作られたもの。中国人のエキストラにもけっこう出てもらっていますが、あの壺を見るために来てくれた。中国の古美術商が見てもインパクトのあるものだった。値段は言いませんが、フェラーリ10台分くらいするものです。
平波 億レベルする壺だったんですね(笑)。撮影中は僕も、競りを主催する会主役の俳優(大宮将司)も「壊したらどうしよう」とすごく緊張しました。あのシーンは、壺は撮影直前まで隠しておいて、本番でのリアクションをリアルに映しています。みんなが驚いている様子は、素のものなんです。
大江戸 まさに餓鬼たちが群がってきた(笑)。
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