骨董品の世界を舞台にした地獄めぐり 映画『餓鬼が笑う』クリエイターズ対談
#映画 #インタビュー
ガラクタ同然と思っていたものが数十万円や数百万円で売買されることもあれば、大金を払って手に入れたお宝が偽物であることもありえる。素人の目には、うさん臭くてヤバい人たちが潜むように感じられるのが骨董品業界だ。そんな骨董品の奥深き世界に魅了された餓鬼たちの姿を描いた映画『餓鬼が笑う』が、12月24日(土)より劇場公開される。
大金が飛び交う闇の競り市の様子がリアリティーたっぷりに再現されているだけでなく、怪しげな骨董品の世界に足を踏み入れた若者の体験が「地獄めぐり」として幻想的に描かれている。『ミッドナイトスワン』(20年)でトランスジェンダーを演じた田中俊介、『劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(18年)での熱演で注目された山谷花純という期待の若手俳優が共演。田中泯、萩原聖人、片岡礼子、川瀬陽太らが脇を固めるという渋い配役だ。
古美術商であり、本作で脚本家デビューを果たした大江戸康氏と、今泉力哉監督や白石晃士監督の作品などで助監督を務めてきた平波亘監督に、骨董品業界の裏話と映画制作の内情について語ってもらった。
――不用品が大金に化けることもあれば、借金を背負うはめにも陥ってしまう。『餓鬼が笑う』を観ていると、骨董品業界と映画業界は似ているなと感じました。
平波 すごく似ていると思います。映画界も奇人変人ばかりです(笑)。
大江戸 骨董品業界と映画業界は形態も似ている。製作委員会方式でやるメジャーな映画もあれば、個人レベルでやるインディーズ系の映画もある。骨董品業界も集団で売買するケース、個人でやるケースがあるんです。
――古美術の世界を舞台にしたコンゲームもの『嘘八百』(18年)は、製作委員会方式で作られていますね。
大江戸 自信がないと、みんなで作るんじゃないですか(笑)。製作委員会方式って、リスクヘッジなわけですから。その点、『餓鬼が笑う』は平波監督が「撮りたい」と思った世界を自由に撮ってもらった作品です。
平波 今日の大江戸さんは毒舌ぶりが冴えてますね(笑)。
――本作の原案者でもある大江戸氏が、骨董品の世界に入ったきっかけは?
大江戸 勤めていた会社を辞めて、東京に出てきたんです。ノスタルジックなものを仕事にできないかと考え、それで元手なしでも始められる古物を扱うことにしたんです。『餓鬼が笑う』の主人公・大(田中俊介)と同じように、路上で古物を売りながら夜学に通いました。30歳の頃です。ノスタルジーを売り物にするという点でも、骨董屋と映画は似ています。
平波 僕も25歳まで地元で働いていて、それから漠然と「映画が作りたい」と思って上京しました。古物に手を出すのも、映画界に足を踏み入れるのも、やはり似ているかもしれません。
大江戸 一度その世界に足を踏み入れると、もう抜けられなくなってしまう。カタギではなくなってしまう(笑)。
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