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宮下かな子と観るキネマのスタアたち51

『First Love 初恋』年月をかけて撮影されたNetflixドラマならではの美しさ

 

『First Love 初恋』年月をかけて撮影されたNetflixドラマならではの美しさの画像1
宮下かな子(写真/Kyogo Hidaka)

 最近、マッチングアプリを出会いのきっかけにする友人が増えた。

 少し前は危険じゃないかと心配だったが、今や出会いの1つとして当たり前になってきている世の中。都内にはこんなに沢山の人で溢れているというのに、出会いはなかなかないものだなぁと思う。

 アプリで出会って結婚したという話も稀に聞くが、大抵腹を抱えて笑ってしまうような面白話が多くて、私はそんな話を聞くのが大好物だ。

 ちなみに最近面白かったのは、ことごとくアプリの出会いに失敗している友人の話。マッチした男性から提案されたお店が、なんとフクロウカフェ!懲りたその子はアプリでの出会いを諦め退会したとのこと。はじめましての男性と、好きでもないフクロウを見る友人を想像してケラケラ笑ってしまった。

 私は登録したことがないので詳しくわからないけれど、自分の情報や好きなタイプを入力し、その情報に合う異性が機械的に候補に出てきて、そこでマッチする仕組みを疑問に思う。自分の趣味趣向と異なる人とパートナーになることで、視野が広がったり、お互いを補ったりできるものなのに、自分の理想を入力して探すことって、範囲を狭めてるんじゃないのかなと。そうは言っても理想の異性と出会うのはなかなか難しそうだけど。

 歳を重ねていくうちに、理想像が大きく膨らみ、その理想を叶えるための条件がでてくる。

 だけどきっと学生の頃なんかは、みんな条件なんて考えていなくて、もっと感覚で、本能的に人を好きになっていたんじゃないかな。特に、初恋なんかは。だからこそきっと人それぞれ、初恋の思い出は特別で、ずっと心にとどまる記憶なんじゃないかなと思う。

「初恋の人はどんな人?」という質問がよくあるけれど、その答えはきっと、その人のまっさらな心を覗ける質問なんだなぁ、と今ふと気付きました。

 今回はその初恋をテーマにした、Netflixオリジナルドラマ『First Love 初恋』のお話。ご覧になった方も多いのではないでしょうか?

 情報解禁された頃から楽しみにしていたドラマで、私は1日かけて一気見。こんなに濃密で丁寧に撮られた邦画ドラマを、配信でたっぷり堪能できるなんて本当にありがたい。学生の頃恋人同士だった晴道と也英が大人になって再会するのだが、2人の間にはいくつもの壁が立ちはだかっていて、話数を重ねるごとにその秘密が明かされていく構成が見事。

 思わず一気見してしまうストーリー構成に加え、際立つのは映像美。

 年月をかけて撮影されたこの作品には、巡る季節と共に変化する自然の色、草花、日差し、雲、風の強さ。そしてその環境による、人間の身体の反応が偽りなく映し出されている。特に、ツンとした冬の匂い。寒さで赤らむ頬、白い吐息、浮き出る血管。可能な限り、偽りが削ぎ落とされた映像の中の世界は、澄んでいてとても美しい。

 その背景の空気感を壊さぬよう、台詞を多くは語らず、溶け込んだ自然体の役者さん達のお芝居は、巧みで本当に素晴らしかった。

 Netflixオリジナルドラマは、もう〝映画〟でも〝ドラマ〟でもなく、〝Netflixドラマ〟としての独自の存在だなぁと思う。時間をかけて丁寧に構築して撮影する〝映画〟の良さと、話数が多いぶん、登場人物達の背景をより深く描ける〝ドラマ〟の良さ、両方のいいとこ取りをしたのが〝Netflixドラマ〟だなぁと。

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