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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 堂本剛/ENDRECHERIの2022年を振り返る
ファンク研究家が振り返るENDRECHERIの1年

堂本剛の2022年――ENDRECHERIの“唯一無二さ”が世界にもとどろき始めた1年を振り返る

ファンクに留まらない「新しい何か」に突入するENDRECHERI

 では、ここからはデジタルシングル「LOVE VS. LOVE」「1111111」「MYND」について語っていこう。

 まず「LOVE VS. LOVE」は前述のように全編英語詩で歌いあげる、セクシーかつファンキーなバラード。堂本剛の圧倒的な脳内グルーヴを感じさせる1曲だった。

 続く「1111111」では80sファンクやR&Bをミックスさせながら、ファンク定番の作曲法に縛られることなく、自由に解放されたグルーヴの世界を表現していた。

 そして、11月にリリースされたばかりの「MYND」。こちらはファンクを中心にさまざまなサウンドが融合、自由なグルーヴはさらにその精度が高まったと言える。

 これら堂本剛が今年リリースした3曲を改めて振り返ってみると、点と点が繋がって線になったような印象が強くある。

 私が今年最初に「LOVE VS. LOVE」を聴いたとき、すぐに感じた、不思議な感覚。実はその時はうまく言葉にできなかったが、こうして3曲を聴き終えて、ようやく説明できるような気がする。

 私が感じたのは、ENDRECHERIの音楽はもはや「新しいファンク」を超え、「まったく新しい音楽」に進化し始めているのではないだろうか、ということだ。つまり、ファンクをベースにしてはいるが、既存の音楽ジャンルにカテゴライズされない、非常に現代的なアーティストに成長しているのではないか、ということである。ジャンルを意識していないだろうことは、「MYND」発表時の次の発言からもうかがえる。

 

(Q:「MYND」のジャンルは?)
堂本剛「ロックサウンドっぽく聴こえるとは思うんですけど、ヒップホップの要素も入ってますし、FUNKのスパイスも入ってて。ジャンルは何ですかって言われると、“ENDRECHERI”というジャンルで、ジャンルレスというところ」(出典:YouTube ENDRECHERI / インタビュー Part1「MYND」について)

 

 そして、例えば世界的に有名なプレイヤーであるルイス・コールやサンダーキャットが、ファンクのテクニックをフル活用した演奏をしていても、実際にはそれが「新しい何か」にも聴こえるように……ENDRECHERIの曲もまた、もはやそういった新しい次元に突入しているのではないだろうか。

 ルイス・コール、サンダーキャット、ENDERECHERIに共通するのは、古典的なファンクは十分にインプットした上で、アウトプットする際に自分のフィルターを通すことで、ファンクのような「新しい何か」に聴こえる……という点だ。そしてENDRECHERIの場合、このフィルターが、非常に独特な「リズムとグルーヴ」というもので構成されているように感じられる。

 

(Q:ENDRECHERIらしいFUNKな要素は?)
堂本剛「独特なタイム感は確実にあります。僕の好きなギミックっていうか、僕の中に流れている変態的なグルーヴ。これはもう自分の武器だと思うんで」(出典:YouTube ENDRECHERI / インタビュー Part1「MYND」について)

 

 ここで堂本剛も自ら語っているように、ENDRECHERIの曲はいま、かなりマニアックなリズムの組み合わせで成り立っている。よくあるシンプルな繰り返しによるファンクの16ビートではなく、ヴォーカルと楽器による複数の異なるリズムを組み合わせ、それらを常に変化させていく。その個性は、5月の「LOVE VS. LOVE」、8月の「1111111」、そして11月の「MYND」と、どんどんリズムがマニアックになっていったことからもはっきりしてきた。

 もちろん以前の曲にもそういった要素はあったが、2022年の3曲は、特にそれを強く感じさせたのである。これはその「僕の中に流れている変態的なグルーヴ」が、いま一緒に作曲・アレンジを行っているGakushiによって、より明確にアウトプットされるようになってきている、ということなのだろう。

 これはENDRECHERIの音楽がより成熟し、アーティストとして成長している証、とも考えられる。私は過去の記事で、堂本剛の日本語詞のリズムが個性的であることが、彼の音楽を唯一無二にしていると評したが、前言を撤回したい。もう率直に言って、日本語であるかどうかでは彼の独自性は揺らいだりはしない。もはやグルーヴだけで、十分にENDRECHERIの音楽は唯一無二だと思う。そしてそれは言葉の壁を越えた魅力であり、ゆえにENDRECHERIは世界に通用する「本物のアーティスト」だと、私は思う。

 そして……最後になるが、今年は堂本剛プロデュースによるZOZOTOWN限定アイテム、「ENDRECHERI × ZOZO」のリリースもあった。こちらでは私もサロペットを購入させていただき、先日届いたばかりだが、そのデザインや生地の良さには本当に驚かされた。私の着画はTwitterにアップしてあるので、良ければコーデの参考にしていただきたい。「ENDRECHERI×ZOZO」はどのアイテムも2023年の日本でリアルクローズとして扱えるアイテムで、かつ、デザインの根底にはファンクの思想が流れていたと私は考えている。こういった多彩な活動も、彼のアーティストとしての魅力を高めていると言えるだろう。

Dr.ファンクシッテルー(ファンク研究家/ライター/ミュージシャン)

Twitter:@DrFunkshitteru

ファンク研究家/ライター/ミュージシャン。ファンクバンド「KINZTO」を結成し、日々ファンクを広める活動を行っている。
著書『ファンクの歴史』をKindleにて発売、上中下巻にて完結。表紙イラストは『とんかつDJアゲ太郎』の小山ゆうじろう氏。それが縁となり、2021年に「週刊少年ジャンプ」の「巻末解放区!WEEKLY 週ちゃん」にゲスト出演。新旧ファンク10名盤を少年誌で紹介した。
また、ファンクバンドVulfpeckを国内に紹介するnoteマガジン「どこよりも詳しいVulfpeckまとめ」を連載。『サステナブル・ファンク・バンド:どこよりも詳しいVulfpeckファンブック』として電子書籍化した。

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最終更新:2023/03/14 14:19
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