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世界初! 順天堂大・東大ら研究チームが“自殺と体内リチウム濃度”の関連性を発見

世界初! 順天堂大・東大ら研究チームが自殺と体内リチウム濃度の関連性を発見の画像1

 日本の15~39歳の死因でもっとも多いのは自殺だ。順天堂大学らの研究チーム11月11日、世界で初めて体内の微量なリチウムが自殺と関連することを証明した。リチウムの活用が、自殺を予防する可能性が示唆された。
https://www.juntendo.ac.jp/news/20221111-01.html

 自殺を防ぐ薬のひとつとして炭酸リチウムがある。炭酸リチウムは49年に躁うつ病の治療に導入され、気分障害患者を対象とした自殺に対する予防効果が示されている。また、疫学研究では普段の生活の中で食物などから、体内に取り込まれる微量リチウムの自殺予防効果が示唆されている。

 リチウムは風化によって土壌に移行し、植物に吸収されて食物連鎖に入る。人間の腸管から吸収され、主に腎臓から排出される。近年のメタ解析の結果、飲料水中のリチウム濃度の高さと地域の自殺率が逆相関することが示された。

 しかし、これまでに個人レベルのデータを用いて微量リチウムと自殺行動との関連について、決定的な結論に達した研究はなかった。複数の自殺症例を用いて自殺者と非自殺死亡者の体内リチウム濃度を調べた研究はなく、体内の微量リチウム濃度が自殺死と関連するかは不明だった。

 研究グループは、自殺者と非自殺者の体内微量リチウム濃度を比較することを目的に18年3月から21年6月まで東京都監察医務院で検案、または解剖された29人の体内のリチウム濃度を解析した。

 死後変化の影響が少ない眼房水を採取後速やかに保管し、順天堂大で誘導結合プラズマ質量分析法を用いてリチウム濃度を測定した。一部の症例では、16時間の間隔をおいて2回のサンプル収集を行ない、死後変化を検証した。

 眼房水は眼球の毛様体から分泌され、虹彩の裏面と水晶体の表面を洗い、瞳孔から虹彩の前面に出て、虹彩の表面と角膜の裏面を洗う役割を果たしている。過去の研究において、眼房水の死後変化は遅いことが報告されている。

 12名の自殺者と16名の非自殺死亡者の血清中リチウム濃度と眼房水中リチウム濃度は相関していた。さらに、16時間おいて採取した検体同士を比較したところ、眼房水中リチウム濃度には死後、変化は認められなかった。

 そして、自殺者のほうが非自殺死亡者よりも眼房水中リチウム濃度が低いことが示された。死後時間を考慮に入れた解析においても、自殺と眼房水中リチウム濃度の有意な関係が示された。

 これまで、自殺者の体内リチウム濃度が非自殺死亡者より低いのかは不明だった。死後変化の少ない眼房水の採取・解析に成功し、複数の自殺者の体内リチウム濃度を非自殺死亡者と比べた研究は初めて。

 これにより、眼房水中リチウム濃度が死後変化をしないことを確認し、複数の自殺者と非自殺死亡者の眼房水中リチウム濃度の比較から、体内微量リチウム濃度の違いが自殺と関連することが示されたことは、世界で初めてとなる。

 炭酸リチウムは中毒や副作用のために過小利用される傾向にあるが、微量であればリチウムによる副作用等の問題も少ないことが期待できるため、研究グループでは「今後は自殺者の体内リチウム濃度が低くなるメカニズムの解明が求められ、将来、微量リチウムの自殺予防効果が検証されることが期待される」としている。

 これまで、生活状況の変化やストレス、心理的な要因など、さまざまな要因が複雑な相互作用によって引き起こされる自殺に対して、微量リチウムの活用に予防効果が認められれば、将来的に自殺者が大幅に減少する可能性も秘めている。今後の研究の進展に期待したい。

 研究結果は、11月7日に学術誌「Translational Psychiatry」のオンライン版に掲載された。

 

 

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2022/12/12 07:00
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